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幕間 騎士団本部

 エイルたちの籠もるセプテム城から直線距離にして優に千五百キロ。ソラン帝国帝都近郊にパナケイア聖騎士団の本部「騎士の城クラック・ド・シュヴァリエ」はある。

 いま、騎士団本部は大騒ぎになっていた。騎士団の長距離公用便である青爪鷲が運ぶ手紙から次々と凶報がもたらされたからだ。

 パナケイア聖騎士団も参戦したヘンドリックスの会戦がソラン帝国軍の惨敗で終わったことも衝撃だったが、その後の報せは騎士団本部を震撼させた。

 敗走中の騎士団長ブリジッドの戦死、その遺命による十八歳の新騎士団長就任。避難民をまとめての逃避行、そして避難民保護のためセプテム城で籠城戦に入ること。

 どれもが騎士団史上前例のない出来事であり、留守を預かる騎士団本部の人々もまずは情報の整理で手一杯となる。騎士団が遠征に出ている間、事実上のトップとして運営を任されている大聖女、シルヴィア・ドゥ・メリュエーヌもさすがに頭を抱えた。

 本部に残る主だった者たちを集めて今後の指示を出す。

 シルヴィアは正確に現状を認識していた。千年に渡るパナケイア聖騎士団の歴史上、いまが最大の危機だ。騎士団が消えるかどうかの瀬戸際である。遠く西の大地で(たお)れようとしている騎士団員を助けるためなら、どんな手段でも使わなければならない。

 まず必要なのは情報だった。公用便はもちろんのこと、日頃から付き合いのある冒険者ギルドと商業ギルド、ソラン帝国政府と帝室にも遣いを出す。たとえ軍機と言われようとも退かずにあらゆる情報を集めるのだ。

 それから可能な限りの戦略物資を集めてセプテム城に送る。ただこれには時間がかかるだろう。ソラン帝国はヘンドリックスの敗戦後アルバ街道沿いの城に物資を集積しているため、国内での買付が難しくなっているためだ。戦火のまだ及んでいない東方州や北方州で買い付けて、冒険者ギルドに頼んで輸送してもらうしかない。

 援軍も送れない。現在本部に残っている騎士はわずかに五十名であり、これは本部防衛のための最低要員だった。パナケイア聖騎士団はほとんど本部を空にする覚悟で今回の戦いに参加していたのだ。それだけ魔王軍の侵攻を危険視していたのだが、こうなるといざとなっても戦力の増援は行えない。大陸全土に散らばっている騎士団支部を守る騎士たちも、同じ理由で動かせない。彼らを参集できるのは、騎士団本部が危機に瀕したときだけだ。

 すぐにできる直接的な助けとして、シルヴィアは支援金を送ることにした。送るといっても金貨を山積みにした荷車を出す必要はない。パナケイア聖騎士団の名で手形を発行すれば商業ギルドのネットワークによってすぐに決済も現金化もできる。

 宗教騎士団というものは、伝統的に資金の預かり所を経営する事が多かった。宗教組織としての資金力と騎士による防衛力、ダンジョンや魔王軍との戦いの最前線に常にいることから、各国兵士や冒険者たちの資産保護を担ってきたのだ。パナケイア聖騎士団も例にもれず騎士団創設時から預かり所を創設している。資産の保護だけでなくその運用も行ってきた騎士団は、いまや動産不動産を問わず大陸中に莫大な財産を保有している。パナケイア聖騎士団の発行する手形の信用は、各国の通貨に匹敵するほどだった。


 シルヴィアは騎士団の資金力をフルに発揮することに決める。まずは帝国金貨一万枚に匹敵する額をセプテム城へと送った。商業ギルドとの交渉がつき次第、さらに追加して送る段取りもつける。こうしてエイルたちは、少なくとも資金面に関してはなんの憂いもなく籠城の準備を進められることになった。

聖女……高位の女性神官。自身の教区を持つ。この物語での世界宗教、万神教では男性の司教と同等の地位とされている。


男性:神官→神官長→司教→大司教・枢機卿→教皇

女性:修道女→修道院長→聖女→大聖女→女教皇


 なお、万神教ではこの57年間女教皇は着座しておらず、現在の教皇も男性である。

 万神教は遍く神を広く信仰する多神教であり、パナケイア女神信仰はその一派となる。

 パナケイア女神の信者数は世界3位(1位は主神デウス。2位は戦いの神アテネ)

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