アレキサンダー家・図書館
死なないために努力するんじゃなくて、生き返るために努力しようと決めたのは生まれて二週間がたったころだ。親の会話から俺の名前などを聞いてこの世界が『アリシティ・オブ・ファリア』なんじゃないかと気づいたのがそれくらいだったからだ。さすがゲームの世界、言語が日本語だ!と当時は思っていたのだが、だんだん焦り始め最終的に開き直った。死ぬ運命なら生き返ればいいじゃんと。
そんなこんなで三歳になった今魔法書を読ませてもらえるようになったのだ。確かに死ぬ運命だが、努力するのは自由だし魔法という心躍るものがあるのに習わないという手はない。
もちろん今までだって手をこまねいていたわけではない。転生してまず確認したのが魔力の有無だ。転生物には魔法がつきものという偏見を持っていたことで実に素早く魔力を確認することができた。どうやらハードモードではなかったようだ。それから毎日魔力をこねくり回したり、魔力波を飛ばしていた。神童と呼ばれる体だけあってそのぐらいは簡単にできた。
この世界の魔力量は生まれ持った才能だ。増やすことはできない。魔力を持った同士の子供でないと魔力を持って生まれない。そして魔力を持っているのが貴族である。つまりこの世界は貴族至上主義ともいえる。だが例外がある。それが聖者や聖女と呼ばれる存在だ。平民同士の子どもでありながら魔力を持って生まれてくる。まぁ滅多にいないがな。
貴族至上主義といった通りこの世界の貴族は平民を見下している風潮があるが、そんなことを気にしないのが主人公である。主人公だからこそ気にしないといえるが。気にしない理由は、幼馴染が原因だ。トドロス家は貧しく平民と変わらないような暮らしをしていたため、遊ぶのもなぜか平民だった。普通は上位貴族に媚を売りに行くものじゃないのか?平民と遊んでいたため、見下すようなこともせず普通に接する。そのおかげでモノづくりの天才や幼馴染と結婚できるのだ。
主人公は羨ましい限りだが今は魔法だ。この三年間気味が悪くないように生きてきたが、それはここまでだ!俺は不死鳥の羽を手に入れるために部下が欲しいのだ。本当は自分で探したいのだが手が足りなくなるだろうし、忙しいしで部下が必要なのだ。魔法が使えればいろんなことができるようになるだろう。外に出たり魔法の研究だったりやりたいことは沢山あるのだ。さぁ生き返るために全力を尽くそう。
「これがうちの図書館だ。王家の図書館には負けるがこれだけ本があると壮観だろう」
そう言ったのは私の父でもあるテキロスだ。確かに何千冊とありそれが綺麗に並んでいるのはとても見ごたえがあった。この中から目当ての本を探すとなると苦労するだろう。
「父上!どれが魔法書なんですか?」
「確かここからあそこまでが魔法書だ。この部屋に入るときは私かキャサリンに声をかけてから入りなさい。使用人には決して持ってくるよう頼むなよ」
「何でですか?」
「公爵家の図書館の魔法書ともなると下位貴族には見せられない魔法書もあるのだ」
「分かりました!父上か母上に声をかけてから入りますね」
「よし、いい子だ。今日は好きなだけ読んでいいぞ。ただし夕食までだ」
「はい!父上これを読んでみたいです」
私が手に取ったのは『魔法書~入門編~』といういかにも初心者向けな本だった。魔法書はどれも分厚く三歳児が持てるようなものではなかった。なので父に頼んでとってもらうことにした。
「報告は受けていたがしっかりと文字は読めるようだな。いささか早すぎる気もするが、早いに越したことはないだろう」
そう言いうと父は魔法書をとってくれた。そう、三歳児が漢字を読んでもいささか早いで済むのだ。さすが貴族、英才教育を施しているらしい。らしいというのは俺が英才教育を受けている気がしないからだ。使われている文字が日本語のため生まれたころから読めるし書けるし話せるのだ。例え三歳児に礼儀作法や身分の違いを教えていても英才教育とは思わない。なぜなら五歳になったらお披露目があるのでそれまでには完璧しておかなければならないのだ。少しの間違いは許されるが王様に「一緒に遊ぼうよ!」などといった日には親の顔が真っ青になるだろう。
しかしこの礼儀作法という教科はとてもめんどくさい。挨拶の順番やお辞儀の角度など前世でもそこまで正確さは求められなかったことまで完璧にしなければならないのだ。私は公爵家だから王族に対して失礼を働かなければお目こぼししてもらえるが、伯爵家や子爵など中間に位置する家柄はとても大変なのだ。上の人には挨拶をしなければならないし、下の人からの挨拶も受けなければならない。顔と名前が一致せず男爵家だと思って対応したら侯爵家だったとなったら目も当てられない状態になる。
そんなことはどうでもいいとして、今は魔法書を読むことに集中しよう。今日は勉強が休みで数少ない自由な日なのだから。