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お題シリーズ

竜への供物

作者: リィズ・ブランディシュカ





 人と竜が共存する世界で、竜は絶体の強者だった。


 だから、力の弱い人は、竜の機嫌をそこねないようにただ息をひそめて隠れ住んでいた。





 小さな村を水浸しにするような天気が連続している。


 雨がずっと降り続いていた。


 ここ最近ずっとだ。


 それは、まるで竜神様の涙のようだった。


 村の中では、最近ある事が噂になっている。


 村の付近で竜の死骸が見つかったらしい。


 大急ぎで処理が進んでいる、と。


 死骸から疫病が発生する可能性があるため、歴史学者や研究者を呼ぶ間もない。


 竜の骸は、燃えつきるまでに三日かかかったらしい。


 最後には、灰になった竜の肉体と、焦げてすすけた骨だけが回収された。





 雨はやまない。

 

 だから人々は、みな同じ噂をしていた。


 竜はめったに人の前に姿を現さない。


 人と竜は互いに不干渉。


 きっちりと生活圏を分けているからだ。


 竜の亡骸ですら、見た事が無い。


 だから、人々は雨と竜の存在を関連付けたのだろう。


 人間がなにか、偉大な竜に恐れ多い事をした。

 

 それで、神様が怒ったに違いない。


 自然と人々は、ご機嫌取りをするように、竜に見合う供物を探し始めた。





 一方、竜はというと。


 人々の、見当はずれの行いに迷惑していた。


 ひっそり隠れ住んでいた人々が、竜の近くをうろつく事が多くなったからだ。


 雨がやまないのは、定期的に訪れる異常気象が原因だ。


 竜の亡骸がその時期そこにあったのはただの偶然で、人が竜に何かをしたわけでもない。


 しかし、竜は人に話しかける事が出来ない。


 人々の考えている事を読み取る事ができても、人が操る言語を使いこなす事はできなかったのだ。


 そして、誤解は誤解のまま広がっていった。


 竜のかんにさわった人が、その竜に殺されて、そしてどんどん膨らんでいく。


 竜達はもはや、誤解を解くことをあきらめ、人々の行いをただ静かに見守るのみになった。



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