将太は飛ぶ、シューティングスター
はい、読者の皆さんこんにちは。高橋将太です。やっと僕がメイン回ですよ。嬉しいなぁ!
え?英雄さんは語りかけてこないのになんで僕はぐいぐい来るのかって?それはですね、この世界において第四の壁を認識しているのが僕くらいしかいないからだと思いますよ?
メタな話はさておいて、僕は今基地から離れ、宮城県は石巻市に来ています。お目当ては某有名漫画家の建物です。僕好きなんですよねーヒーロー。なんなら日曜日は八時半から通しで見てますよ。
閑話休題。実際のところ仙台の街中での戦闘が多いです。なんでかって言うと、なんでなんですかね。僕にも詳しいことは分からないです。でも、なんだか僕の周りに怪人が湧くことが多いですね。ヒーローなんて珍しくもないって言うのに、なんで僕ばっかり襲われるんでしょう。
そうなんです実は地球を守るヒーローって結構いるんです。一説によれば三桁後半くらいまで行くんだとか。なお、それに呼応するかのように敵団体もそれなりにいます。僕らが相手取ってる奴らよりは弱小ですけどもね。
ちなみに、敵味方両サイドの共通点として、「元々日本生まれ」が異様にに多いっていうのもみそなんでしょうね。みーんなスーパーパワーを持って、みーんなやりたい放題するから大変みたいです。英雄さんもその一派ですが、まぁ、能力的には一派の中でも特殊事例みたいだって博士が言ってましたね。
ちなみに海外だとまた別らしく、やたらめったら武器や魔法の扱いに長けた人が戻ってくるパターンが多いみたいですよ?ドバキンがどうたらっていうのがお決まりみたいです。
さて、お話を戻しましょう。何故僕がここにいるかという話でしたね。え?してない?まぁまぁ、皆さんなんだかんだで気になるでしょう?話させてくださいよぉ。
僕がここに来た理由はですね、研究所を追い出されたからです。ああ、追い出されたといっても、一時的にですよ?
博士が「君がいると、ほら、研究がね?あんまりうまくいかないっていうか、こう、インスピレーションが湧かないというかね?君もあるだろう?一人になりたいときとかさ。私は無頼骨を作る時がそれに該当するんだよ。だからね?とりあえず外で五時間くらい時間を潰してきてくれないかな?お小遣いも上げるからさ」なーんていうので、仕方なく出てきてあげたんですよ。往復代で1万円くらいかかるって言ったら涙目になりながら2万円くれたので、よっぽど一人にしてほしいんだなって思いました。
さて、今日の漫画館は最新作のマスクお披露目日ということもあって、大きなお友達がごった返しています。当然ですよね。日本が誇るスーパーヒーローの最新作ですもん。みんな見に来ますよ。
「いやぁ、原点回帰といいますか、流石にここまで整った顔を見るのは中々久しぶりだわぁ・・・」
「ほんと、かっこいいよなぁ、シンプルなのはいいことだわ」
などと大きなお友達が最新作の出来を確認している間、僕は視聴覚室的な場所でご当地ヒーローのコミックス版を読み進めてました。昭和の勧善懲悪的なところが好みなので、僕としてはこっちのがいいですね。相手側にも正義があるとかちょっとよく分かんないです。下郎は地獄に落ちるべきです。その点、このヒーローは自分を曲げることが殆どないので大好きです。どれくらい曲げないかというと、今まで戦ってきた敵が実は父親だったという事実を突きつけられても、何ら迷うことなく切り捨てる大胆さを持っているのです。そうこうしているうちに、そんなご当地ヒーローのショーが始まる10分前となりました。ここからショーの現場までは少し離れているのですが、休日は毎日のように開催しているこのショーをわざわざ場所取りしてまで見ようとする人は数人しかいないので、ゆったりと向かいます。
僕がショーの現場についたのは、丁度開始時刻でした。しかし予想とは裏腹にとんでもない混雑具合です。お友達並びに大きなお友達が小さな会場にすし詰め状態というあまりにも異様な光景。僕が見た中でも最大規模かもしれません。
「さて、キミらに集まってもらったのはほかでもない。我々星光団の戦士となってぅぶるっ!!!」
ヒーローショーかと思ったら違いました。怪しげな団体の宗教勧誘でした。とりあえず蹴っ飛ばしときます。てか、よく見たら武器持ってるじゃないですか。しかも周りにはせいなんたらの戦士的な人もずらりと。そりゃ皆さん大人しくついていくわけですね。ぶっ殺しましょう。
「き、貴様!我が星光団の邪魔立てをするとは・・・名を名乗れ!手うちにしてくれる!」
「分かりやすい悪役ムーブご苦労様です。僕は、そうですね、こんな場所で名乗りを上げるのも可笑しいので、正義の味方とでも言っておきましょうか。変身!」
特撮の聖地で自分の名前を名乗るとか、一ファンとしての両親が咎めましたね。いや、超暗黒狗ってめっちゃ名乗りたいですよ?でもここは天下の某漫画館。出てくるべきヒーローは、設定ゴツモリのダークヒーローじゃなく、清廉潔白たるものでなければいけません。そこだけはこだわっていきたい。僕はそう思いますね。
「っは!悪魔のような黒き外装など、我が星槍をもってすれば一撃で粉砕」
されました。星槍、たった今消し飛びました。とっさのことで面喰いましたが、瞳の端で捕えた光弾を、僕は覚えています。
「客は守っとく、後はそっちで何とかしとけ」
英雄さんです。変身して宙に浮いてます。しかもお友達一同をバリアで守ってます。なんという美味しい役どころ。僕的には何人かに怪人化してもらった方が切羽詰った感出ていいかなぁと思っていたのですが、それはそれ。犠牲が出ないのはいい事です。でも英雄さんに向けられる歓声はちょっと、いえだいぶ気に食わないですね。あっ、雑魚まで持ってかれた。かっこよく戦っちゃってまぁジェラシー!
「さて、貴方にはこれから死んでいただきます」
せめてボス的な人には、僕の憂さ晴らしにつき合ってもらいましょう。
「必殺!」
壇上に立ってたボス的な人へ瞬時に近づき放り投げ
「流星!」
僕自身も跳躍
「パーンチッ!」
そのままぶん殴り、空の果てまで吹っ飛ばしました。
この場合の空の果ては成層圏を超えたあたりを差し、大気圏との摩擦に耐え切れなかったボス的な人は文字通り流星のように燃え尽きたことでしょう。
ちなみに視覚的にはバイバイキン的ななにがしに見えています。お子様も安心。
「いえー!僕の勝ち!」
「博士-、僕の活躍、なんでテレビどころかネットのどこにも上がってないんですかね?」
「まあ、そういうこともあるんじゃないか?私の発明した無頼骨も凄い奴だが、表象とかされないもの」
「それじゃあもう一つ質問なんですけど、なんで英雄さんの動画はバチクソ上がってんですか?」
あの事件から数日たった今、世間は空前の「赤い英雄」ブームを迎えていました。きっかけはバリアの中から取られた視聴者投稿。弱きを助け、悪しきを挫く赤いヒーローレッドアームズ。それが英雄さんの通り名だそうです。
「僕は!ボス的な人を一撃で倒したんですよ!?それをこのざこっぱ相手に大立ち回りを演じた赤いのの方が人気出るってどういうことですか!!」
「そりゃあ、必殺技を撃つにあたって2000メートルも跳躍したからじゃあないのかい?」
これはあれですかね、僕の張り切りすぎ的な?
「・・・ちっくしょぉぉぉぉぉ!!!!銀河英雄ぉ!我が魂魄100万回生まれ変わっても!恨み晴らすからなぁぁぁぁ!!!」