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現状を知る、ブレイクニュース

「ここが僕たちの研究所です!」

 と、自信満々の将太にに英雄が連れてかれた先は、よくある大きめなマンションだった。

 これはあれか、地下に広大な施設があるとかそういうやつかと、一人納得する英雄を尻目に、将太はエレベーターに乗り込み、九階のボタンを押した。

 あれぇ?と英雄は訝しんだ。訝しみつつも黙ってついていく。だってあれだけの戦闘技能を有するスーツだぞ?大規模な設備でやっとこさ一つ作るくらいじゃないと可笑しくないか?魔術工房だって最新鋭のとこはバカでかかったぞ?などと、英雄の頭の中で疑問が雨後の筍のように浮かんでくる。

「ただいま帰りましたー!」

 将太が扉を開くと、ごく普通な間取りで廊下があり、その先にリビングがあり、何処の県のものともわからない謎タペストリーが玄関に飾ってあり、なんだろう、騙されたかな?と英雄が少しだけ警戒レベルを引き上げると不意に廊下右横の扉が開いた。

「おかえりー。そして君が件のイレギュラーだね。歓迎しよう。私こそがこの研究所の所長、Dr.マキだ」

 よろしくと差し出される手。その見た目とは裏腹に明瞭且つ知性に溢れた言動と、年相応なピンク統一コーディネートを併せ持った幼い少女は、まず間違いなくあの通信の主であり、そしてヤバい指示を出したヤバい奴だ。英雄はそう確信し

「銀河英雄だ。こちらこそよろしく」

 握手をしなかった。理由は簡単、手に何が仕込まれてるか分かったもんじゃないからだ。

「ふふ、すっかり警戒されてしまったようだね」

 残念だなぁと手を引っ込めるマキ。でも手首あたりに電気が走りそうな電線があったのを英雄は見逃さなかった。なんだコイツ怖い奴だなぁと、英雄はもう少しだけ警戒レベルを上げた。

「しかし意外だ、この姿だし、もっとなめてかかられると思ったのになぁ」

「まぁ、その手の輩は見慣れてるからな」

 魔王を倒した後に出てきた魔神も、なんかそんな感じの奴だった。見た目こそ幼子なれど、その実態は齢数万年の化け物で、他人に寄生することを繰り返しながらずっと生きながらえて来たとか。まぁ最終的に塵も残さず殺したんですがね?

「その話にもすごく興味をそそられるのだが、まぁ立ち話もなんだ。上がりたまえ」

 くるりと振り返り、リビングへと歩を進める。将太も部屋に上がったので罠の類はなさそうだと英雄も続いた。


「さて、単刀直入に言おう。私たちの仲間になってほしい」

「いいだろう」

 リビングに付くなりマキはそう切り出し、英雄はそれに乗っかった。将太はイメージトレーニングがなんたらと、ヘッドホンをつけテレビでヒーローもののアニメを見てる。

「いいの!?」

 まさかこのスピードで加入が決まるとはマキも思ってなかったらしく、目を白黒させている。

「ま、条件はいくつかあるがな」

 流石の英雄も、無策でこの提案を飲んだわけではない

「一つ目は住民票の取得、二つ目はどこかに住んでいた記録が欲しい。それだけだ」

 目の前の人間がどんな奴なのかは分からないが、多分それ位はできるんじゃあないかなと踏んでいた。つまりは直感だよりのフワフワ作戦。傍から見れば無策にも等しい超行き当たりばったりな策であるが、事実この直感だけで英雄は魔王討伐にまで至っている。

「むむ、私を侮らないこころもちといい、例の不思議な力といい、何やら訳ありのようだね・・・分かった。手配しよう。ついでに保険証も付けようじゃないか」

 なんだか嫌に気前がいいなと英雄が微妙な顔をしていると

「ふふ、なぁに、これでも私、社長なのでね。この手の改ざんはお得意なのさ」

 マキが種を明かし、ついでに名刺もくれた。そこには”世界を変えるベンチャー企業SIVEセイヴ 取締役代表:Dr.マキ”との記入が

「ふふふ、驚いて声も出まい!そう!私こそが世界シェアの介護用外骨格製造会社社長のDr.マキなのだー!」

 のだー、のだーと自主的にエコーを入れるマキ。とりあえず貰った名刺をどこからともなく取り出した財布にしまい、どこかへしまっておく。

「だからあんな鎧を作れたのか」

「鎧という言い方は案外的を射ているが、あの強化外骨格、正式名称『極環境下生命維持外骨格無頼骨』は、そんなちゃちなものじゃあない。身体能力を飛躍的に向上させ、極低温や超高熱にも耐える!更にライフルで狙撃されても生存することの出来る耐衝撃性!これは正に次世代を生き残るためのツールと言っても過言ではないのさ!」

 得意な話になったとたん、マキは饒舌に話し始めた。

「で?そんなものが必要になるほど、現代人の暮らしはヤバいのか?」

 そんな風には見えなかったが、と英雄が続けると、マキは今までの快活な顔を曇らせた

「ああ、将太くんに聞いた通り、この世界はいろんな勢力に狙われている。大小含めれば星のような数がいるが、大まかに分ければ主だったものは3つ。異世界から侵攻してきた、この世界を自分たちの都合のよいものに変えようとする魔界帝国ザグルズ、地球を丸ごと競売にかけるにあたり、人類を不要と判断し消そうとする極悪宇宙連合ゼルズ、そして先ほど君たちが戦った、多くが謎に包まれた秘密結社デスロムだ。全勢力は、互いに互いを脅威と認め、表立って活動することは少ない。だが、人間を攫い、分析し、手先に変えようとしているのだ。その情報をいち早く察知したSAVEは、彼らに対抗すべく日夜活躍しているということなのさ」

 英雄的には途中眠くて仕方なかったが、つまりは地球が色々なのに狙われてマズいので、地球を守るメンバーを探してたよ。ということらしい。

「戦力らしい戦力は、そこにいる将太君しかいなかった。だが今日、新たな戦力としてキミを見つけたんだ!これは本当に僥倖ぎょうこうだ!専用の無頼骨はすでに用意した!是非とも奴らを打って欲しい!」

 熱く語るマキを尻目に、

「なんでったって、あんな危険な作業を将太がこなしてんだ?お前さんはともかく、将太は見た目通りの子どもじゃないか」

 英雄は至極当然ともいうべき疑問をぶつけた。マキは先ほどまでの態度と打って変わり、すごく難しい顔をしながらしばらく黙っていたが、やがて重々しく語りだした。

「実を言うと、だね。あの子は人間じゃあないんだ。将太は元々ただの人間だったんだけど、ザグルズに誘拐され魔光兵に・・・」

 成程、あのパワーは鎧によるものではなく将太本人の力なのか・・・それはまた、語りづらいことを語らせてしまったなと、若干英雄は申し訳ない気持ちになったが

「しかもそれだけじゃあない。魔光兵として活動中、デスロムに捕えられ、更に再改造。魔光兵でありながら改造獣にもなり、そのままの勢いでゼルスがまたまた再改造。ゼルスモンスターの力も加わり全ての勢力が手を付けられなくなったところで我々SEVEが脳改造をほどこし、将太君が誕生したんだ」

 あまりにもぶっ飛んだ内容に、申し訳なさはぶっ飛んだ。あまりにも改造されすぎでは?てか、元は人間なのに躊躇なく脳改造って割と悪役がやるタイプの所業じゃね?などと英雄が釈然としない面もちで聞いていると、壁についていたランプがジーコジーコと音を立て、赤色にぴかぴか光った。

「噂をすれば影が差すだ。ここはひとつ、将太君と一緒に怪人退治へ赴いてくれないか?」

 マキは話を切り上げて、不敵に笑って見せた。

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