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勇者のその後、ボーナスタイム。

「いやお見事でしたよ英雄(ひでお)さん!まさか魔神王デモゾルモンすら討って見せるとは、流石の機転と胆力です!」

 スーツ姿の七三分け天使が、ボロボロの勇者、銀河英雄(ぎんが ひでお)に声をかける。

「ああ・・・これで、アイツも今後数千万から数億年単位で世界に手出しはできんだろ・・・まぁ、俺もマルファニアに入ることは叶わなくなったわけだが」

 英雄は肩を竦めながらそう答える。彼らが今いるのは世界と世界の狭間にある異質な空間。ベルベット何某や精神と時の何某的なアレだ。凄くかいつまんで話すと、現在いつもの異世界系の話のエピローグ的な場面で、魔王を倒したら出てきた魔神を倒したら出てきた魔神王を倒したら召喚された世界にも入れなくなったよ的な感じである。

「そうですね、あちらで築いた友人に地位に財産、ぜーんぶパーですもんね」

「お前って天使の癖してえげつないほど言葉にトゲあるよな?」

「今ならサービスで英雄さんの国葬が見れますがみます?ほら、王女ぼろ泣きですよ」

「やっぱお前悪魔の類だろ」

 軽口を叩き合いながら、二人は笑いあう。別に仲がいいとかそういうわけではない。英雄はえげつないタスクがやっとこさ処理された満足感で、天使はこれから自分が受けるボーナスと出世のことを考えて笑いが止まらないのだ。

「ああそうそう、戦い疲れた英雄さんに朗報です。マルファニアには戻れませんが、出禁はあの世界だけなんで、元の世界にお戻しすることは可能です。あの日本とかいうこじんまりした島国に、しかも元居た時代に帰れちゃいます。ヤッタネ!今ならサービスで向こうの財産を全部日本円に換金してプレゼント!なぁにボーナスくらい出さなきゃ罰が当たるってもんですよ!さぁさぁ早く行ってくださいなハハハ・・・何ですかその嫌そうな顔」

 雇用期間が終了した派遣社員を送り出そうとする上司のようなしぐさの(実際にそんな感じの状況)天使に、けっこう嫌な気分になった英雄だが

「・・・ま、いいや。じゃあとっとと送ってくれ。久々に羽を伸ばすとするよ」

 素直に帰ることにした。未練は少しあるが、それ以上に日本が魅力的に見えたのである。

 考えても見てほしい。魔法こそあれど、移動は全て馬車か徒歩、知識を披露すれば異端と罵られ、電子機器が無く、遠方への通信手段は手紙の世界を。

 英雄のいた世界は、まさにこんな世界なのである。確かにいい世界ではあった。空気はきれい、食べ物はうまい、可愛い女の子もめっちゃいた。英雄は顔もめっちゃカッコよかったから正直バッチバチにモテた。しかし英雄の職業は勇者で、便宜上は神の使徒。なんとなく不貞を許されない雰囲気があったのと、魔王を打ち倒したら世界の四割を牛耳る大国であるニルヴァ王国の姫様と結婚が決まっていたので、全く持ってそんな感じにならなかったのである。

 でも仲間内ではどんどんカップルが出来てくし、夜中時間差でトイレに行って帰ってこない魔法使いと戦士は居るし、魔王を倒したら魔神が、魔神を倒せば魔神王がと、まるでマトリョシカのように追加で敵が出てきたので結婚がどんどん延期されたし、割と、というか、滅茶苦茶しんどかったのである。

 可愛い子は確かに目の保養になるが、手に入らなければそれは二次元にも劣るとは誰の名言であろうか。

 少年ともいえる年齢で召喚された男は、青年になるまで不貞を貫く羽目になったのである。

 でもそんな世界ともおさらば。魔王や魔神を討伐した金は使えずにとってある。なんなら王国の一等地に家も持ってた。旅の途中で言われただけで、王国に戻らずノンストップで魔神王まで倒したから行ったことないけど、すごくいいとこだと姫様が手紙で言ってたからマジでいいとこなんだと思う。それが全て日本円に換算されるとあらば、多分向こう千年くらい豪遊して暮らせる金額になっているはずだ。それを使って暮らすんだ。できれば女を囲うんだと、英雄はもうウッキウキで日本へと向かった。


 まぁ、そんなことにはならないんですがね?

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