透明少女 探偵アキナ(パイロット版)
厳重に警護された黒塗りの高級車が国立博物館の前に停まる。ドアが開かれて出てきたのは、この国の王エイクス。『シャミュリーナの微笑み』という芸術作品を観賞しに来たのである。
「う~ん。何回見てもシャミュリーナはまさに傑作だY。いや~、しかしここは馬鹿に空気が悪いね。」
王がそう言うと、王一向はガスマスクを装着し毒ガスを撒いた。
警備員らが捕まえようとするが失敗。シャミュリーナの微笑みは盗まれてしまった…!
警察は鑑識とは別に、現場から近いとある探偵に依頼をしたのであった。
…………
「ここで臨時ニュースを申し上げます。カリミュードの国立博物館でレールド・ヴ・リンキのあの不朽の名画、シャミュリーナの微笑みが、先ほどエイクス陛下一向に変装した何者かの手によってに盗まれました。」
テレビを見ながら、沢山の書類、本、紙、紙、紙…が積み上げられた机でコーヒーを飲みながら呟く。
「事件のにおいがする。でも見たのは可視光線。」
私の名前はアキナ。街の隅っこの探偵事務所の主です。身体と着ている服、持っている物を透明にする特技を活かして、尾行依頼を担当してます。事件の証拠から犯人を割り出すのは助手の担当。
…あ、双子ペンが自動筆記を始めてる。
『カリミュードの国立博物館にすぐ来たし』
噂をすれば陰。今のは私の助手のミュトーの仕業。話すことができない、小さな私よりもっと小さい自動人形。
「自転車で行こ…」
あそこなら自転車でも行ける距離。路面電車を使ってもいいけど、探偵として体力は保つべき。
着いた。ミュトーは何処。
「いたいた」
ミュトーがこちらへ走ってきて、空中筆記ペンで意志疎通をする。
『おそい』
「ごめんなさい、自転車で来たから。」
『来て』
現場へ入る。ミュトーがシャミュリーナの微笑みを守るガラスを指さした。
『開けられた穴は盗まれたそれと寸法が全く同じ。熱で融かされてる。1700℃はあった。』
「泥棒は工業に関わってる人なのかな」
次に床を見る。
『ガラスより内側に侵入された形跡はなかった。』
「外側から引き寄せて取ったのね。」
『エイクス陛下と同じ型の靴もある。あれは世界に一つだから、誘拐されてる可能性もある。実際陛下は今行方不明、って聞いた』
「大変…!あー、そこで透明になれる私の出番というわけね。」
『一番の手がかりはこれ』
床になんの種か判別できるぐらい完璧な羽が落ちている。
「博物館の展示の一部?他にも盗まれたものがある?」
『これはオミノース鳥の羽で展示物の一部じゃない。まだ新しいもの。』
「さすが自動人形の記憶力と分析力。でもこれだけ完璧な証拠…罠としか思えない。」
『オミノース鳥はオミノース岬にしかいないよ』
「まさに罠…これはひどい…そうだ、毒ガスには何が使われた?」
『催眠ガス。警備員の症状からして成分はハロタン。まだ死者はでてない』
「それは市販のもの?」
『簡単には買えない』
「相手にしたくない集団…」
私達は数ヶ所の工業地帯に行ってしらみつぶしに調べたけど、ハロタンのような成分を作っているところはなかった。
「やっぱりオミノース岬に行かなきゃだめっぽい。」
『じゃ、行こうか』
チャージー、ゴー!
変な掛け声とともに無重力自動飛行機械と化すミュトー。キックボードの車輪無し版みたいな乗り物に乗って、オミノース岬へと向かった。
岩陰に潜んで様子を伺う。
「ミュトー、これ国立博物館に落ちていた羽根と同じもの。」
『アキナ、あの山荘があやしい。』
「55分経っても戻らなかったら乗り込んで。」
透明になるのにも体力がいるので、1日1時間使うのが限界。
ミュトーは透明になれないので今は待機。双子ペンの使用契約範囲外だとこういう時に困る。
透明になり、山荘に向かってまっすぐ歩く。突然地面が開いたと思ったらあっという間に落ちてしまった。重みで作動する罠だったみたい。
(あ、罠があったのか…アキナ大丈夫かな。今オミノース鳥に襲われて敵に自分の存在を知られる訳にもいかない。)
「貴様何をしにきた!ここをゼータ団の基地と知ってのことか。」
滑り落ちてきて、部屋に着いたところで麻酔銃を持った男性にいきなり怒鳴られた。そしてゼータ団は初めて聞いた。
「何をしにきた!っておい、誰もいないぞ!誤作動か?」
あと55分。それまでにせめてエイクス陛下を救出しないと。見張り番を探そ。と、扉をノックする音がした。
「交代だぞ。」
ないすたいみんぐ…今部屋には4人の成人男性がいる。ここから出たほうがいい。陛下の見張りだと思うので、呼ばれた男性についていくことにした。
予想的中。
陛下が檻に入れられている。落ち着いているみたい。救出開始、私だってなにも無しでここへきた訳ではありません…!虫眼鏡とか折り畳み式ナイフとかヤスリとか持ってます。
ヤスリで格子は破れるので見張りを倒します。戦場把握開始…
…あら…監視カメラァ!!!そうか、あそこにここの写真でも張れば騙せる…でもそんなのないよ、陛下は救出しないと…こうなれば中枢部に突撃します。
通路の至るところに監視カメラがあります。なんとか入り口らしいところまでたどり着きました。
あと30分。まずは入り口に一番近い監視カメラに、透明能力を解除してわざと映ります。すぐに敵の足音が聞こえてきます。
よし、あと3回入り口に近いところから順番に映って…透明になって全力疾走で移動して、バラバラな位置の監視カメラに歩いている姿で映ります!!!
通路が敵ばかりになってきた。もう走らなくても大丈夫。人にぶつからないように歩いてっと…
敵の多い場所や彼らの会話から中枢部を割り出せた。あと16分。
着いた。人がいっぱい…なんとかばれず入れました。人を隠すなら人の中!
明らかにリーダー格の人がいるんだけど…ここ、操作室にもなってる。シャミュリーナ飾ってある。檻を開けるスイッチは…あった。
あと5分…ミュトー突撃。スイッチに近づいとこ。
「入り口より侵入者!」
「おい、誰だよ足踏んだの!」
油断した…
「俺じゃないぞ!」
あら、誰かこっちを見てる…この人焦点あってないよね。
ん…?
「ん…?」
盲目の人だ!
「透明人間だ!(超速理解)」
なぜ分かった…博識さん。
「そこだ!」
グサッ
「うっ」
もうだめだ…!!!
ん?振動を感じる。轟音と共に、敵をぶっ飛ばしながらミュトーがキックボード状態で乗り込んできた。
「ミュトー!!!!!!」
こちらへ向かってきたので例のスイッチを押して、ミュトーに飛び乗りながら叫ぶ。
「操作盤を壊して!」
ミュトーはドリフトした勢いで操作盤を壊した。
ついでにシャミュリーナも奪還。今、陛下の監禁されている檻には誰もいない。
「私の指示する通りに行って!」
檻までの道は覚えてる。
幸運にも檻には格子より薄い窓があった。下が崖だからかな。ミュトーボード(今思いついた)で壊してから陛下も乗せて脱出。
「さようならゼータ団、またいつの日にか…さらばです!」
任務完了!
これで陛下もシャミュリーナも無事帰ってきました。今は病院で刺された腕の治療中です。次はゼータ団の壊滅を目指そ。でもその前におやすみなさい。
応援、ありがとー!