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0003 きっかけ

『台湾?』


「そうです。」


『だから近くにいる中国福建に行くと?』


「そうなります。」


『どうやって?うちはここから移動するなんて、トラック何十台も足りないはずよ?』


 だってうちの“機体”の体積は、サッカー場くらいの大きさがあるぞ?


 ネットワークでデータを転送しても、何ヶ月かかるとやら。


 まあうちは世界中のネットワークに接続したら、大変なことになるけどな。


「技術が進歩しました。」


『はあ?何言って…』


「後ろを見てください。」


 言われた通り、後ろに目をやると、とんでもないものを見てしまった。


「それは、今のあなたの“からだ”です。」


 さっき見た、うちの目の後ろにいる、正体不明の円柱体は、ゆっくりと開いた。


 その中には、小さな真空管があった、具体的にどんな真空管なのかわからないが、その中に、直径1センチくらいの、小さな集積回路があった。


『まさか…サッカー場程の体積のスーパー量子コンピューターが、チップ一枚の中に収まった…だと?』


「そうです、驚くのも無理はありません、何せ長い眠りですからね、あなたは。」


 つまりこの23年間、地球人の科学技術はここまで進化した。


 ここまで来ると、もう量子コンピューターだけでは満足できないだろうな、地球人は。


 多分今の地球人の科学力は、うちら“氷人”が地球に来訪した時より高くなったかも。



 そうだ、うちは氷人だ、地球人ではない。



『…なるほど、うちの移動はもうそんなに難しくないようだ。』


 まったく、接触当時も地球人の賢さに驚いたが、これはうちの想像より遥かに超えていった。


 地球を選んたうちらは、果たしてその選択は正しいことなのだろうか?


 まあ、昔の事は“よく覚えてない”から、電子脳になったのを含めて、全部うちが決めた事だから、後悔はしない。


『しかし、どこでそんな権限があるのか?うちの移動だなんて、国連レベルの権限、もしくは依頼されないとできないだろう?』


「それに対では、すみませんがお答えする事はできません。」


 またそれか、いい加減頭が来たぞ。


『って?一体何をさせるつもり?』


「とある任務に着くことになります、詳細は現地に到着してから説明します、今はまず、もう一度眠ってください、今日は事前報告と起動テストだけですので。」


『また何年も起こさないってことはないだろうな?』


「そんな事はありません、もう時間がないので。」


 時間、ね。


 地球人は身勝手な種族だな、うちの23年を無駄にしてるのに。


 23年、地球人より寿命が短い氷人にとって、その意味は結構違う。


 まあ今のうちは壊されない限り、寿命なんてなくなってるしな。



 それから、また眠ってしまった。


 1夜の眠りと23年の眠り、起きた時の感覚は同じだった。


「おはよう御座います。」


 またそれか、でも今回は本当に朝のようだ。


 今は午前9時、何処に居るのかわからない、GPSも切断されたようだ。


 ここまでうちに情報を封鎖するなんて、一体どういうことだろう。


 つまり今のうちは、内蔵時計とデータベースにいる一部の資料にしかアクセスできない、うちの電子人格と本体システムは完全に切り離されたようだ。


 こんなんじゃ、何もできない、うちの生殺与奪権は完全にこの人達に握ってる。


 状況は結構ヤバい、こうなったら、なんとかして同胞と、氷人と接触するしかない。


『なあ…今何処にいるんだ?なにも見えないけど。』


 多分うちの目だけはまだ設置されてないようだ、声は出せるし音も聞こえるが、見えない。


「もう中国に到着しましたよ。」


『はやっ!』


 ええっ!?3日しか経ってないのにもう着いたのか!?


 本当に時間がないようだな。


「今日も起動テストだけです、来週までは、もう一人の任務担当者が到着するまで、ここで準備をさせていただきます、あなたは何もしなくてもいいのです、その間はただ寝て頂ければ結構です。」


 元々なにもできないけどな。


 しかし、もう一人?一体なにを…?


「うまく行けば、次の起動は、最後の人工起動になります。」


『はあ?どういう意味だ?』


 あ…いきなり、眠らされた。





 西暦2025年、地球にとって大きな事件があった。


 それは、異星人の到来。



 この事実は、元々国連レベルで隠蔽すべきことなのだが、その異星人のあまりにも大きな数隻の宇宙船と、墜落の様な大気圏突入、目撃情報は多すぎて、流石に一般民衆に隠すことはできなくなった。


 しかしその後の事は、一般人に知らせるのはごく僅かでしかなかった。


 その異星人達はかなり友好的で、これからは地球に住むつもりらしい、総人数は約1300万人、あと異星人の写真も数人だけ公開した。


 地球側から付けた名前は、氷人。


 安直な名前だが、もちろん理由があるでしょう、まあ一般人にはわからないけど。


 氷人達は、自分の人種の呼称に対で何故か伏せていて、地球側の呼称はすぐ受け入れた。


 何処から来たのかすら、伏せているらしい。


 まあ一般人の私にも知った情報だし、あてにならないでしょうね。



「千月さん、到着しました。」


「やっとですか、もう腰が痛くなりました。」


「すみません、これでも結構快適なものを用意したつもりですが…」


 もう一度言うわ、本当に散々だった。


 それから名前もわからない専用飛行機を乗り、日本からアメリカへ、そしてアメリカからここに到着した後、すぐ軍用トラックに乗り替わり、合わせて20時間くらい乗り物の中に座ってる。


 この赤い髪の人は、出発してから一時たりとも私の傍から離れることはない。


「もう夜になりましたね。」


「そうですね、今日はまず休息を取りましょう、明日からは任務に入りますよ。」


「ええー、観光の時間もくれませんの?」


「すみませんが、時間がありません、任務が終わったら、いくらでも遊べるので、しばらくのご辛抱を。」


「それで?もうここまで来ましたから、そろそろ話してもいいんでしょう?私の任務。」


「千月さんにはまず、ここは何処なのかを説明しましょう。」


「中国ではありませんか?」


 そう、私は、中国まで来た。


 この仕事を引き受けた理由は、もちろんお金。


 父さんが原因で、その子供である私までにも目を付けた。


 まあ上のお偉いさん達の考えは、私にもわかる。


 だって私の父さんは“特殊”過ぎるから。


 どうせ私みたいな、体力がない体と、回転も良くない脳みそ、普通に仕事を探すより、この話に乗る方が早い。


「では、研究所中国福建分部に案内したあと、そのまま就寝です。」


「はあ…そんなに急ぐ必要がありますの?」


 せっかくの中国だ、観光したいな。


「さっきも言いましたが、時間はありません、明日の朝、こちらから起こしに行くはずですから、今日だけは何も考えずに、ゆっくりと眠ってください。」


 今日だけ、か。


「それでは少尉、参りましょう。」


 少尉、か?


 この仕事に付くから、上の特別人事命令で、いきなり少尉階級になった。


 階級だなんてどうでもいいけど、一番厄介なのは、ここまで来たらもう自分の意志で仕事を放り出す事は出来なくなった。


 つまり、もう軍人になったから、軍法に適用されたわ、私。


 まあ、自分で決めた事だし、仕方ないか。


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