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ディスタンス  作者: ぷかぷか
5/10

 気が付いたら、窓の外は赤くなっていて夕焼けが町をそめていた。


「いけない、6時からだったよね。早く用意しておかなきゃ」


 長い思案から戻ってきた幸は気を取り直して1Kの小さな台所でつまみ系のおかずを作った。自分の好きなものを多めに作っておいて、あとは小分けにして冷蔵庫に保存しておく。


 買い物しているときに好きなゆず酒パックを見つけたので、それは買い物から帰ったあとすぐに冷蔵庫のポケットに投入してある。きっともういい冷え具合だろう。


 せっせと作ってテーブルに並べ、パソコンも設置し起動した。準備万端、よし、と思った時にはもう5分前、慌てて椅子に座りTDGにログインすると、すぐギルドチャットの入室の音が鳴った。


ピコ~ン♪


ウルフ『ちは。あともうちょっとではじまるね』


テルー『はい、私も準備オッケーですよ』


ウルフ『面倒だったから、俺、ビールと宅配ピザだよ(笑)』


テルー『良いじゃないですか(笑)』


ピコ~ン♪ ピコ~ン♪


連続して入室を知らせる音が鳴る。


オーク『よ!』


アリス『ちは~』


フォックス『ちはちは~。こっちはルシアと共同で入るよー』


テルー『こんにちは♪ 初めてオフ会オンライン参加させていただきます』


オーク『テルーちゃん、大歓迎だよ』


フォックス『ウルフがどうしても行きたいっていったことがこんな形になったんだよね。

 テルーちゃんが参加しやすいなら、もっと早くこうすればよかったね』


オーク『ほんとだなぁ。ウルフ、大丈夫か?』


 え? え? どういうこと? ウルフさんが参加できなくなっちゃったのはなぜ?


ウルフ『大丈夫だよ、もう、そう心配しなくていいってば。』


テルー『ウルフさん、どうしたんですか?

 どうして参加できなくてお家にいるんですか?』


ウルフ『あーうー』


フォックス『言っちゃえばいいのに』


アリス『ウルフ、テルーさんが心配してますよ? 白状しよう?』


ウルフ『骨折したんだよ』


テルー『骨折……』


ウルフ『接待の帰りにちょっとあってね、そん時に足をね打っちゃったの』


テルー『だからギルドも出られなかった……』


ウルフ『あ~~っ かっこわりぃ。そうだよ』


テルー『お大事に。大変ですね』


ウルフ『あ、まぁ、小指だけだったからそんな大事じゃないんだけどね。

 でも固定具が大げさで靴がはけんのよ』


オーク『ま、乾杯から始めようじゃないか。

 詳しくはそのあと。で、みんな回ってる?』


ウルフ『ビールジョッキもってるよ』


テルー『私もあります』


オーク『じゃ、かんぱーい』


 ウルフさんの突然の不参加は足のケガだった。接待がらみでケガするなんて大変だな。でも、元気そうでよかった……


 幸はホッとしてゆず酒サワ―のグラスに口をつけた。甘酸っぱさが口の中で広がっていく。


フォックス『なぁ、ウルフ? 接待でからまれたんだろ?』


ウルフ『まぁ。』


アリス『酔っ払いに?』


ウルフ『いいじゃないか、そんな話』


フォックス『言っちゃえばいいじゃんよ』


ウルフ『はぁ;

 接待先のお偉いさんが大変お酔いになりまして

 襲われそうになったんだよっ』


アリス『ふぁぁぁあ??』


ウルフ『もっとかっこわりぃ(泣)』


テルー『ウルフさん、なぜそれがケガになったのですか?』


ウルフ『うっ、ルルちゃん(泣)

 よけたはずみにこけそうになって小指を強打しちゃったんだよ』


テルー『いたそうです。早く治りますように』


フォックス『まだあるだろ、ウルフ』


ウルフ『お前、絶対、からかってるよな』


フォックス『なになに?(ルシア)』


ウルフ『いわねぇよ!』


オーク『接待先のお嬢さんに見初められたんだってね』


ウルフ『なっ? 何でしってんの?』


オーク『お前の接待先…』


ウルフ『あー! オークの会社だったんだ?

    あのいけすかないじぃさんの会社!!』


オーク『そのじいさん、俺の叔父。そのお嬢さんは俺の従妹』


ウルフ『……めっちゃ世間は狭いなぁ、おい』


アリス『wwwwwww』


フォックス『(笑)(笑)』


 幸はそんな話の中に入れてもらえているのに、なんだか寂しさを感じた。


 そうだよね、ウルフさんは人気者で、いつも誰かと付き合っているイメージがある。自分が知らないだけで、本当は彼女とかいるんだろうな。あんな気遣いができるいい人だし。


ウルフ『そんな気はないから、もうおしまい。

 な! ルルちゃんもびっくりしてるぽいよ』


テルー『いえいえ、気にしてませんからどうぞどうぞ(笑)』


ウルフ『いや、そこは気にしてほしい』


フォックス『ウルフ、かぁわいそ』


ウルフ『うるせぇ!』


一番のトピックは、ウルフのケガとオークさんの叔父さんと従妹のはなしだろうか。ウルフはうるさがってすぐ別の話にもっていってしまった。


 あっという間に8時になり、お開きになるということでギルドチャットは閉じられてしまった。楽しかったのだけれど、結構飲んでしまってほろ酔い気分だ。ぼーっとする頭でパソコンを落とそうとしたとき、ウルフからチャットが入った。


『ルルちゃん、ありがとうな。楽しかったよ』


『ウルフさん、こちらこそありがとうございます。

 初めてだったけれど、面白かったです』


『俺だけじゃなくルルちゃんもいっしょだったらもっと楽しいと思ったからさ。よかった』


『ケガのこと、大変でしたね。

 それなのに私のことまで気にかけてくれて』


『いやいや、俺がやりたかっただけだから。

 もちっと、つきあってくれん? まだビール残ってるし(笑)』


『酔ってないんですか。私は酔いましたよ』


『なになに? 酔ったの? ガチで飲んでんの? えー?』


『結構のみましたよー。』


 幸はほろ酔いでへらへらとタイプする。


『くぅ。酔ったルルちゃんみたいぞー。』


『みてどうするんですー。』


『もちろん拝む!』


『じゃぁいいですよぉ(笑)』


 酔ってるからか調子に乗ってパソコンカメラでパシャッと撮った画像を載せた。


『ルルちゃんか!! ホントだ! 赤くなってるなぁ!』


 幸は酔いが進んだみたいでトロトロしてきて、そのまま寝てしまった。


『ルルちゃん? ルルちゃん???? おーーーい?』


足の小指の骨折。

これは、私の実母のケガを参考にしました。本当に大げさな固定をして包帯を巻くので歩きづらそうでした。靴も入らないので、突っ掛けをひっかけていました。

それと、ウルフさんは、ノンアルコールビールですね。酔えるはずがありません。

ルルちゃんと話がしたいがためにチャットしているんだと、気が付いてもらえるといいのですが。

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