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ギルド戦の次の日、土曜日の朝。
幸のウィークエンドは洗濯と買い物をすることに費やしている。
洗濯も終わり、冷蔵庫の中身を確認してお昼まではこれでしのいで、午後に1週間分の買い出しをしよう、そう決めた幸はパソコンを立ち上げTDGにログインした。
ピコ~ン♪
「あれ?あ、ウルフさんだ」
ギルドチャットにもテルーあてのチャットにも来ていた。
ギルドチャットのほうは昨夜の不参戦のおわびと今日のオフ会の参加確認だったみたいで斜め読みでながし、テルーあてのチャットのほうを開けた。
『おはよ。昨日はお疲れさんでした♪
きいたよ、ルルちゃんのおかげで勝てたんだってね』
いつものウルフだ。幸はホッとしてタイプし始めた。
『おはようございます。ウルフさんも残業お疲れさまでした』
すぐに反応があった。どうやら、もうログインしていたみたいだ。
『あー、うん、まぁ残業…というか、接待でね。抜けられんかった(泣)』
『接待ですか。お酒の入るお付き合いだと大変でしょうねぇ』
『もうね、勘弁して、その話』
どうしたんだろう、ウルフさんが機嫌悪そう。
『すみません。
今日、明日、ウルフさんはオフ会レンチャンじゃないですか。
発散して楽しんできてください』
幸がなんて返していいのか考えていたら
『ギルドオフも、ルルちゃんいかんのね。ルルちゃん、もしかして対人恐怖とかあるん?』
幸は息をのんだ。対人恐怖?対人恐怖なのかな?どうなんだろう。
『かもしれませんね』
『じゃぁさ、電話は?それかスカイプとかラインとか?』
幸は今度こそ絶句した。
体がこわばり、指先が冷たくなっていくようだ。
なんていえばいい?どうしよう。
『ごめんなさい。電話もスカイプもできません。ごめんなさい』
『ありゃ、やっぱりダメか。
いやいや、強引でこちらこそ、ごめん。
あせっちゃったんだ。
オークがオフ会に誘ったっていってたからさ』
『オークさんには、ギルドのオフ会もお断りしているんですけど?』
『そうだけど、そっちじゃなくてね。
ルルちゃん、オフ会の時にギルチャはオッケーかな?』
『え?』
『俺もオフ会に参加できなくなっちゃったんだよ』
『それは残念ですね…』
『でね、スカイプで参加ってのも考えたんだけど、
ルルちゃんができないなら、ギルチャでみんなで参加ってのもできるじゃんって思ってね』
『それなら、参加できます。
気にかけてくれてありがとうございます』
ウルフの気づかいにこわばった体が緩んできた。でも、ウルフはオフ会に行くことを楽しみにしていたはずだ。急用があったにしては、ギルチャに参加するというのと矛盾が生じる。
『じゃ、ギルチャの時間はオフ会開催の6時から8時の間ってことだから、
その間はルルちゃん、強制参加だからねー( ̄ー ̄) 』
『強制参加って(笑)わかりました。
私も、自分のつまみとお酒を用意して、雰囲気を出しておきます』
『おし!ルルちゃん確保!!
とりいそぎ、ちょい出かけるんでまたね』
『はい。またギルチャで』
ピコン♪
ウルフが退室したのを知らせる表示がでた。いうだけ言ってさっさと消えてしまったウルフに唖然としたが、ウルフにうまくしてやられたような気がしなくもない。さすがオフ会の男だ。
買い物は缶酎ハイやチーズなどのつまみ系もかごに入れ、予期せぬギルドオフ会のオンライン参加にじわじわと楽しみにしている自分に気がついた。こんな気持ちになったのは久しぶりかもしれない。いつから楽しむってことをあきらめて、ひっそり孤独をかみしめていたんだろう。




