トラップ
マンホールに入って分かれ道で喧嘩になった連たちは
バラバラになってしまった。
そんな心配もしていられず、敵が連を妨げてくる。
連たちの行方は・・・・。
マンホールの中はいつもと違っていた。中は明るくなっていて、
すぐそこにマンホールがあった。
どうやら休憩ポイントのようだ。
中は広々としていて、真ん中には机とイス、それと袋があった。たぶん食料かなんかだと思った。
迷路じゃなく広い部屋みたいな感じだった。
連は袋に入っているのはやっぱり食料だった。パンと缶詰や水などその他色々あった。
それ以外に銃の弾や救急箱など品揃えが良かった。
イスや袋は5つあった。
連は隆志や真希にもやりたかった。と心のどこかで思った。
香奈も同じ事を考えていたのだと思う。
香奈の目には涙が今にも出てきそうだった。
しかし香奈は涙をこらえてイスに座った。
そして皆は食料に手をつけた。
無言の状態が結構続いた。
最初に話しかけたのは連だった。
これからの作戦や緊急事態にどうするかを皆で話し合った。
例えば、ばらばらになったときは銃で2発連続撃って合図するとか、
道の方向は健太に任せるが、大事な判断や作戦では連を中心で行うことにするとか。
そしていつまで続くか分からないこの迷宮をどうやっていくかなどを決めた。
連は食料や水を半分ぐらいは残してそれを持って行くことにした。
もちろん、真希や隆志の分も一応持って行くことにした。
弾のセッチィングや連の肩の治療などを行った。
よし、行くかと決心したときだった。
スピーカーかなんかで放送が入った。
「よく、ここまで来たね、君たち。だが二人はどうした?
もしかして仲間と二つに分かれてしまったのかね? まぁ、ここから先は今までより簡単じゃない。
そう、レベルアップだ。健闘を祈る。」
この声は最初の時に聞いた声だった。
連の怒りはこみ上げてきた。どうしてこんな目にあってしまったのか、どうしてこんな危険な事になったのかは。
全て奴のせいだと連は思った。
行こう、の合図で連たちは次へと進んでいった。
中はいつもより暗く感じた。さっきが明るかったので目がなれず、先が全然見えなくなってしまった。
だが、前に進むにつれ、目がだんだん慣れてきた。
歩いてすぐだった。歩いているとポチッと音がした。なんだろうと下を見たら、カウントダウンが始まっていた。
3・・・2・・・1・・・・。ドッカーン。
下が爆発した。
そのとき連は怪我が無かったが少しでも気づくのが遅かったら完全に吹っ飛んでいた。
連はカウントダウンが始まる時、なんか分からないけど、やばいと反射的に慎二の足は前
にでた。
その直後に・・・・。連は出てきた汗が止まらなかった。心拍がものすごく速く、落ち着きそうも無かった。
連はただ、息を整えるので精一杯だった。
慎二はレベルアップの意味がやっと分かったのだ。
それはトラップ(罠)が仕掛けられていることだったのだ。
健太は連に大丈夫かと心配しながらこっちによってきた。
連は首を縦に振りまだ、息を整えていた。
「本当に連君は足を引っ張るのだから・・・。」
香奈は怪我が無いと分かった途端に胸を押さえてホッっと安心していた。
確かにこの迷宮を入ってから足を引っ張っているのは自分自身だと連は実感していた。
いつもは強気で皆を引っ張っている連は今度、逆に引っ張られているとは・・・・。
連は悔しかった。守ってやるべき人を守れず、逆に心配掛けられているのだと思うと悔しくて、悔しくて
たまらなかったのだ。結局表面だけの強がりだったのだと連は落ち込んでいた。
こういう時に皆を引っ張っていかなくては・・・・。
「ごめん、俺のことは心配しないで、先に行こう。」
香奈と健太はにっこりとうなずき、冒険が再会した。
連の肩の痛みは慣れか、治りかは、分からないけどあまり痛くなかった。
でも、香奈は心配そうに見ていた。
連は大丈夫と何度も言ったが、なんか心配してくれているように連は感じた。
連にとっては別に迷惑ではなく、むしろ嬉しい方だった。
でもなんか、香奈の事が気になり集中できなかった。
先頭の健太は手で待ての合図をした。
健太のライトの先にはまた、トラップがあった。
さっきとは違い何か上についていた。
付いていたのはカメラだった。健太は素早く手をカメラの視界に入れると
下の床が大きく開いていた。
中を覗くと竹やりが入っていた。
もし、気づかずにトラップに引っかかったら、体が穴だらけになっていた。
それを考えただけで寒気がした。
3人は穴をまたいで次へと進んだ。
連はトラップ探しに集中していた。
トラップに引っかかると、死んでしまう可能性がものすごく高いと二つのトラップで
連は気がついた。
連は歩いて30分ぐらいかかっただろうか?
突然、銃声が聞こえた。
連たちは恐る恐る近づいていった。
そこには黒い男が2名いた。
その横には犬が倒れていた。
たぶん、犬が襲ってきて黒い男達が撃ったのだと思う。
健太が銃を構えた。次の瞬間、バタっと男達は倒れていった。
さすがの健太、丁度、二人とも胸に弾が当たっていた。
香奈は、耳を押さえて泣きそうになっていた。
仕方がないと思う、連だって血を見るのは怖かったのだ。
でも、連は自分の血が流れる方が怖かった。もし、これが俺達だったら・・・。
連は肩を見た。連は方の重傷ですんだが、少しでも間違えれば俺は死んでいた。と
時々思う。連は悲しく思う、どうして人を殺さなくてはいけないのか、連はずっと考えていた。
連は一度マンホールから出ようと思ったが壁に撃ってもびくともせず・・・。
連はこのままマンホールから出る事ができないと感じていたのだ。
永遠と続く迷宮、そして何回もマンホールに入っても続く同じ迷路
そして、俺たちを邪魔する敵、そして最大の罠、トラップ。
連の精神面はもう破壊寸前だった。疲労と痛みと怒りと憎しみ。
もう、連はどうでもよくなってきた。
だが、香奈は諦めていなかった。香奈は精神面が強い女の子なのは知っているが、
ここまで強いとは思わなかった。
相変わらず、健太は目を光らしていた。健太はすごいと思う。
逆に俺たちが足手まといなのだろうか。
そんなマイナス思考の連はそんな事を考えながら歩いていた。
トラップの事が、頭から離れていたのだ。
ポチッと音がした。気がつくと連はスイッチを押していたのだ。
それと同時にサイレンが鳴り出した。
敵が前と後ろから迫ってくるのが分かった。逃げる道はない。
絶体絶命のピンチが訪れた。サイレンは時間と共にだんだん大きくなっていく。
敵もだんだん近くなってくる。
身動きできなくなった。3人は賭けに出た。
前に突っ込んで敵を最初に殺す作戦だ。
これしかないと思った健太はダッシュで前に突っ込んでいった。
3人は銃を構えて、今だ!と健太が言った瞬間、射撃戦が始まった。
ズガガーン、敵は倒れていった、いや、まだ後ろからの追っ手が追いついてきた。
すぐに後ろに向いた3人は敵に撃った。
「キャッ!」声を上げたのは香奈だった。香奈のわき腹を押さえていた。
「大丈夫か?」と香奈に向いた瞬間連の靴にかすった。
そしてやっと銃撃戦が終った。香奈のわき腹から血が出てきた。
だが、擦り傷で済んだらしい、でも結構苦しんでいた。
香奈は救急箱から消毒液と包帯でぐるぐる腹を巻いていた。
その時だった、後ろの人が銃を持って連にめがけて撃ってきた。
弾は外れたが、男は生きていた。健太が撃ってその男は死んだ。
死んでいたと思った男が生きていたとなると、この中にまだ生きている奴がいるかもしれないと思った連は敵を見渡した。だが、生きていた奴はさっきの男だけだった。
「香奈、大丈夫か」健太と連は声を揃えて言った。
「あはははは」と笑っていた。でも連には無理矢理笑っているとすぐに分かった。
でも健太はそうか、と一言で流した。連はよく一言で済ましたなと心の中で健太への怒りが芽生えて生きた。
連は香奈への好きな感情があったからそう思うだけかもしれないと必死で怒りを抑えた。
香奈は行こうと腹を押さえながら歩いていった。
連は香奈がこうなったのは自分がトラップを踏んでしまったからと思っていた。
連は不注意のまま歩き出したから・・・。
やっぱり足を引っ張っているのは連だと自分を責めた。
香奈を傷つけたのは・・・・。
連は歯を食いしばり、自分への怒りを抑えた。
連はイライラしていた。自分の気持ちをコントロールできなくなってきた。
そんな時、香奈がいきなり足を止めたのだ。香奈は「ゴメンね、連君、私ったら・・・。」
香奈はいきなりそう言って来て連に抱きついてきた。
「・・・怖いよ連君、どうしたらいいの?いつ帰れるの?」
香奈は泣き崩れた。連は優しく香奈を抱いた。
「帰れるさ・・・きっと・・・・。」
連は考え直した。辛いのは俺だけじゃない、ここで頑張らなくては・・・。
連はリーダーとしての責任の重さを感じたせいで、気持ちが不安定になっていってた。
だが、今はリーダーは関係ない、力を合わせてここから脱出するという気持ちが出てきた。
連の気持ちはスーッと楽になった。連は気持ちを入れ替えて先に進みだした。
そのときの健太の目は今まで見たことの無い恐ろしい目だった。