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第二話 和也殿下

前話のあとがきで、この小説の設定上の解説を追加しました。

「和也殿下、ちょっと、ちょっと、何をしているんですか?」

「うん?どうした?」

「どうした、じゃ、ないですよ!!!」

目の前にいるのは、内秦(うちまさ)国学院高等部尋常科三年生の武邑(たけむら)(かえで)だ。

「私は、部活動に来ているだけ。いつも、部活動に来ないと怒るくせに、今日はなんなんだ?」

こう、答える私は、内秦国の神民(しんみん)の狩野和也。身分は「侯」である。

「侯主様がお呼びなんですよ!いつも、部活には顔も出さないくせに、こういう時に限って!!」

侯主というのは、女王のことである。女王と言っても、別に国家元首とかではなく、大王の3親等以内の親族である女性のことである。(「王の」女性版である。いうまでもなく、親王の女性版は「内親王」である。)

中国では、内親王を「公主」とよぶが、それに(なら)って、女王は「侯主」と呼ぶらしい。で、公主ならば、その部下は公であろう、侯主であるならば、その部下は侯であろう、とかいうことで、侯の身分を持つ者は、特定の女王と主従関係を持たなければならない。

なんか、中国の古典での意味と若干違うような気がするのだが、数百年も前からそういう制度なので、仕方がない。私の主君は、大王家の吉備洸華(ほのか)女王殿下である。

「で、洸華女王殿下が私に何の用なんですか?」

ついでにいうと、女王殿下が結婚すると、臣籍降下するので、主従関係から解放される。なので、女王の夫を見つけ出すのが、私達、若手諸侯の役目である。

「詰問です!殿下が、何かよく教えてくれなかったけど、とんでもないことをしたって、怒ってました!主君兼学校の先輩として、叱るようです!」

確かに、私は高等科二年生、洸華殿下は高等科四年生であり、洸華殿下は単に儀礼的な意味での主君だけではなく、学校の先輩でもある。

私、何か、悪いこと、したかな?




「和也!幼女を誘拐したとは、どういうことですか!?」

学校図書館の三階の神民学生会館第一会議室で、私はヒステリックな女性に叱られていた。

「ほのか様、だれに聴いたのですか?」

「私の情報網を馬鹿にしないことね。あんたが昨日に誘拐した女の子は、もうそろそろ睡眠薬の効果も切れて、お目覚めかしら?内務省にばれでもしたら、とんでもないことになるわよ!そうなったら、私も無事では済まないわ。一体、どうするのよ!!」

「女王殿下、お言葉ですが、私は保護者の同意の下、自宅に宿泊させただけであり、これは誘拐ではありません。」

「保護者の同意?どうせ、商売に失敗した雑色人夫婦を買収して、娘を正室にするとか、何とか言ったわけでしょ?雑色人の女の子を正室にするなんて、そんな・・・・保守的で頑固な宮内省にばれたら、どうするのよ!」

「保守的で頑固な方の集団を相手にしたくはないですね。」

「しかも、相手は、小学生でしょ!?あんた、一体、どこのロリコンなのよ!」

「いや、たまたま好きになっただけです。」

「たまたま、小学生が好きになるわけないでしょ!?あなた、自分の可笑(おか)しさ、分かってる?」

「小学生ぐらいの女の子を妻にした古代の神民の名前を挙げると、切りがありませんね。」

「とりあえず、貴方のやっていることは、犯罪です!内務省にばれると、大変ですよ?」

そりゃ、小学生の女の子に睡眠薬を飲ませたりしたことが、警察にばれたら、逮捕は確実でしょう。

だけど・・・・・

「あれぐらいの年の女の子って、目が覚めると何をすると思いますか?」

「え?」

「まず、目が覚めると、手を洗いに行きます。ついでに、体内から睡眠薬の成分が出ていきます。警察がいくら証拠を探しても、証拠はすでに下水管を流れているでしょう。」

自分が小さいころを思い出すといい。小さい子は、目が覚めるとトイレへ行く。すると、睡眠薬の成分も、出ていくに決まっている。私はあえて、遅くとも三日以内に血液中から出ていくタイプの睡眠剤を使用したのだ。

「私の部下が、こんな、完全犯罪を平気で行うような男だったとは・・・・。」

「そういう男だからこそ、ほのか様の元カレを、退学に追い込めたわけでしょ?感謝してくださいよ。」

洸華(ほのか)女王殿下を振った、女王殿下の元交際相手の士族上がりの男は、私の謀略によって退学に追い込まれた。この時に、私は法の抜け穴という抜け穴を、一生懸命勉強した。そして、今回、それを、恋愛に応用し、好きな女の子を誘拐するという快挙に踏み切ったわけだ。

「もう、いいです!とりあえず、私に迷惑だけはかけないで!」

「わかりました。女王様に迷惑をかけないように、完全犯罪を遂行します。」

「やめて!背筋が凍るわ!!」

「それでは、失礼します。私も家に帰りたいので。」

そういって、私は家に帰った。

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