一時停止
掲載日:2015/05/27
少しの、気の迷い。
体は、Goのサイン。
あとは、足を踏み込むだけ。
なのに、左足が、震えている。
鼓動はレッドゾーン。
激しく打ち響く鐘の音。
目まぐるしく変わる視点。
どこに焦点を定めていいのか、わからない。
右足は、既にアクセル。
ブレーキはリリース。
左手のギアはLo。
目の前を横切る黒猫。
遠く、屋根の上から見下ろしている梟。
のっぺりとした顔。
180度回る頸。
大丈夫、入ってしまえば、体は通る。
頭に、言い聞かせる。
それでも、震える右手は、細いステアリングを握りなおして。
左手もシフトレバーを、愛おしく撫で続けている。
もう一度、黒猫が通った。
今。
クラッチを繋いで。
白煙を上げるタイヤ。
スキール音。
押し付けられる体。
ふと嗅いだ。
枕に、君の匂い。
あぁ、そうか。
僕はもう。
戻れないところに、いるんだね。
押し寄せるスピードは。
僕の体を、ガードレールから、
やっぱり、、
一時停止は、
後の後悔を、逃がしてはくれなかった。
ありがとう。
少しだけ、気持ちがいい。




