第六話=走れ清市、マッハの本気
どっちかが死ぬ命を懸けたマラソンがスタートを切った。
ゴールはカラミティアの目の前に早く来たほうが勝ちとなり、コースは廃墟を一周するという人間には過酷なレース。
「位置について、よーい、ドーン」
カラミティアの一言でスタートした清市とマッハ。
マッハはチーター並の速さで清市をどんどん距離を離していく。
「マジありえねぇっしょ」
清市は必死に追いかけるもかないようがない。
(天才のスマホ)
頭によぎったのはそれだ。
スタート前に渡されていたスマホ、困ったときはコードを入力すればいいとカラミティアにいわれていた。
ここはこれに頼るしかない。
『881……コード認識完了』
するとクツが何やら特殊なものに変わった。
「これはジェットスニーカー?」
清市に自信が芽生えた。
「これならいけるっしょ」
マッハの速さを上回るスピードで走りぬくことができた。
しかしマッハはそれを見越していた。
全力ではなかったのだ。
尚もスピードをだすマッハ。
マッハはどんどん加速して清市を追い抜く。
「勝てねぇ……どうすりゃいいんだ?」
廃墟のコーナを曲がったところでマッハが何かに足を取られ転倒。
「これはロープ?」
清市はメールをうっていた。
『マッハはロープで足をひっかかける』
送信ボタンをタッチした時それは現実に。
「お先に~」
「きたないやり方だな」
「生きるか死ぬかの戦いにきたないもくそもないっしょ」
その様子を見ていたカラミティアは右手親指の爪をかじり焦っていた。
「あの男スマホを使いこなしてきた……恐れる事態にならなければいいが……」
それをよそに清市は調子に乗りロープで転ばせながらマッハとのデスマラソンを攻略しつつあった。
カラミティアの目の前に来たとき清市は喜びに包まれる。
「勝った」
そう言った瞬間マッハが清市を抜かした。
わずかながらマッハの勝ちである。
「死ぬのか……」
清市は土下座して命乞いをする。
だが非常にもマッハは清市を呪いで心臓を止めた。
『オーナーが息絶えました……新しいオーナー情報を入力して下さい』
無情にもその音声だけが廃墟の廊下にこだまする。
「天才神、これであなたのオーナーもいなくなった、とういうことで天才のスマホは私が……」
カラミティアはクスっと笑うと清市が目を開ける。
「なぜ?」
「最初からあなたの負けだったのマッハ……」
カラミティアが指さす方向に偽物の清市が倒れてていた。
走ってたのは清市のビジョン。
「身代わりオプションを使ったのか、カラミティア?」
「そういうことよ……」
清市も調子に乗って一緒にからかう。
「マジうけるっしょ、こんな機能もついてるなんて、マジ、オーパーツすげぇっしょ」
「調子に乗らないで……」
「すみません」
清市は頭を下げる。
マッハはそのまま消滅した。
「ねぇ……この機能はあなたが開発したアプリでしょう?」
「そうだよ、オレっち天才っしょ」
この先が思いやられると落胆するカラミティア。
そして清市によって封印されるという不安。
「殺すか……」
カラミティアは清市に殺意を覚える。
「え、何か言った?」
「いいえ……」
スマホの中に戻るカラミティア、清市はあるコードを把握していた。
そのコード『931』この意味は清市だけが知っていた。
今は天才のスマホを持って帰宅する清市。
その頃、清市の隣人は怪しく笑っていた。
「これが創造のタブレット……素晴らしいオーパーツが手に入るなんて思いもよらなかった」
カーテンを閉めきり部屋の電気は消したままで薄暗いなか怪しく笑い続ける隣人。
彼の名前は井守充郎、ニート歴二十年のデブオッサンである。
ピロロロ~ン、ピロロロ~ン。
「はい、創造神さま、アテネとマッハはやられましたね」
『なかなかやりますね……清市とかいう人間と、天才神カラミティア』
「どうしますか?」
『その創造のタブレットで神話の聖人たちを創造なさい、失敗はゆるしませんけどね』
「了解しました」
充郎は創造のタブレットでトラソルテオトルという聖人を作り出した。
人の罪を食らい、清める聖人である。