第一話=天才神目覚める
遥か古代ニホンという島国があり、そこは文明が発達していた。
しかし人々は神の恩恵を忘れ、乱れ、争い、欲がままに生きていた。
そんなニホンの人間に対し神は怒りをあらわにし天変地異を巻き起こし人々を滅亡へと導いた。
神はそれと同時に天才を創造された。
これは千年以上も前の神話である。
今は西暦三千十一年……
三人の若者が心霊スポットである廃墟を訪れ肝試しをしていた。
「二十三歳にもなって本当にビビりだなお前は」
「怖がりですね」
「仕方ないっしょ怖いもんは怖い……でも、幽霊なんていないっしょ」
ヘタレだが口だけ達者の宇野清市は後輩に口車にのせられて仕方なく肝試しをするはめになった。
先頭を堂々と歩く二歳年下である勇敢で熱血漢の川口大五郎になめられていた。
しかも六歳年下の女の子、志水タツム(しみずたつむ)にもなめられる始末。
そんなヘタレを鍛えるための企画にすぎなかったこの肝試し。
「先輩後ろ」
「ひい」
大五郎がからかうと、タツムにしがみつく清市。
「ちょっとくっつかないでください。気持ち悪い」
タツムに押し返されるて、何かを踏むみパキっと物音がしてそれにもビビる。
「もう、オレっち帰る」
「ここまで来てですか?」
「てか先輩一人で戻れるのかよ?」
二人はそんな清市をからかい手を叩きながらあざ笑う。
歩いていくうちに研究室と書かれた部屋にたどり着く。
「いかにもですね」
「入るか」
「マジでやめたほうがいいっしょ」
そんなことはお構いなしに大五郎とタツムは毛入室にはいる。
一人取り残された清市。
「待ってオレっちも……」
三人はそこにあるものにでかい棺のような箱に興味がわいた。
「これタイムカプセル……だよな?」
「ぶっちゃけ触らないほうがいいっしょ……呪われたらヤバいし」
その時タツムが何かに足をひっかけ転びそうになる。
「きゃっ」
ポチっと何かのボタンを誤って押してしまう。
ギギギ……
鈍い音をたてその箱はフタをあけた。
五郎は中を覗き込む。
ゴクリ……と、ツバを飲み込む。
「言っていいか?」
「うん……」
「待って……ヤバいっしょ?」
清市の制止を無視して五郎は伝える。
「女の死体がはいてる」
「うそ……」
タツムも覗き込むと息を飲み冷や汗を流して自分の目を疑った。
「信じられない……腐ってる様子もないし臭くもないし……」
その死体らしきものは綺麗な状態で奉られているかのように思えた。
「なんでこんなものがここに?」
「ヤベっしょ……とりま逃げよう」
「いや、まて保安官に連絡したほうが」
「そうですすね」
「でも近くに連絡用の機械ないっしょ……逃げよう」
この時代には携帯電話などは存在しない。
過去の遺産はオーパーツとして扱われ歴史博物館でしか見ることができない。
むろん携帯電話も例外ではなかった。
「そうだな……お前の言う通りだ」
すぐさま部屋を出ようとしたときまばゆい光が差し込み美しい女性が現れた。
「で、で、でたー」
「幽霊が本当にいるなんて」
「待てよこれは何かのトリックだぞ」
大五郎は一人その光に近寄ろうとした。
「私はサンタナ……人間よここから立ち去りなさい」
「しゃべった」
「ヤバいって」
「先輩たち早く逃げよましょう」
一目散に走りさる清市。
だが、大五郎とタツムは逃げないでいた。
「この時代にも勇敢な若者がいますね……しかし、あなた方ではない」
するとサンタナは無から聖人を創造しはじめた。
神――
大五郎とタツムの脳裏にその言葉が走った。
背筋が凍るような恐怖。
だが暖かいぬくもりも感じていた。
まぎれもなくサンタナは創造の『神』なのである。
「もう一度言います。立ち去りなさい」
逃げようとしたが身動きが取れない二人。
「まさか?」
「破壊……守護……」
さっきの遺体が静かに箱の中から立ち上がり言葉を発した。
「聖人よカラミティアの封印をもう一度……」
創造された聖人は清めの呪文を唱え始めた。
「フルバ、キヨ、セイント、ミューバ……邪悪なる創造の天才よ再び封印の箱に入りたまえ」
しかし聖人の力が弱いのかカラミティアの封印はならなかった。
肩をおろし落胆するサンタナ。
「罪深き人間よ……なぜ、封印を解いたのです?」
「あの、足が何かに引っかかってボタンをおしちゃったんです……ごめんなさい」
天然ドジのタツムは右手を後頭部にあてペコペコと頭をさげる。
「謝って済むなら神なんていりません」
サンタナはタツムを叱る。
「じゃあ、あの箱に押し込めばいいじゃないか?」
「力ずくでできることじゃありません」
今度は大五郎を叱る。
「全くこんな天才を創造するんじゃなかった……」
サンタナは深くため息をつく。
「破壊……守護……?」
言葉の意味はわからないが近寄ってきたカラミティアの問に大五郎は答えた。
「守護」
「バ……」
サンタナは一歩及ばず、カラミティアの守護の力で天界に強制送還された。
「守護……完了」
やっとの思いで外に逃げ出していた清市は不思議な機械を拾っていた。
「なんだこれ……どっかでみたような?」
この夜の出来事は三人とも記憶が消されていた。