偉そうだな
掲載日:2026/10/06
山あいの小さな村に、包丁だけを極めた職人がいた。
その職人は、どんな食材でも最高の料理に仕上げる包丁だけを作っていた。
それを見ていた隣の男が言った。
「人間、なにか一つ極めればいい。」
Y氏は、むっとしたように言った。
「偉そうだな」
その帰り道。
町で評判の料理人の店に寄った。
その料理人は、ステーキだけを作っていた。
香ばしさと芳醇さのバランスが最高だった。
そのステーキを食べていた隣の男が言った。
「人間、なにか一つ極めればいい、ってことかな?」
Y氏は言った。
「きっとそうだな」
その帰り道。
のどかな雨上がりに谷あいの山道を歩いていると、向こうから一台の車が猛スピードで走ってきた。
すれ違いざま、運転手が窓を開けて叫んだ。
「危険だ! 戻れ!」
「偉そうだな」
Y氏はのどかな山あいを進んだ。
見上げると、目の前に巨大な土石流が迫っていた。




