書き換えた名・名簿の差
正午、池袋の現場写真が会議室へ届いた。転籍、部署名変更、社員番号再発行を同時に行った例でも結果は同じだった。人事記録は境界にならない。 労務担当の白石理沙が出勤簿と契約書を照合し、消えた者と残った者の違いを一項目ずつ外していく。
白石は名簿変更を安全策として扱わないよう通知した。説明できるのは、変更後も累積が続いた事例があることだけだ。
二十四日目で出向させても、次の勤務は最初の一日にならなかった。名札、席、給与元を変えた事実は、累積を消していない。
部署名とフロアを同時に変えた例も結果は同じだった。看板ではなく、引き継いだ顧客資料と工程が残っている。
窓の外には、夜勤の明かりを残すビルが無数に並んでいた。その一つ一つに、誰にも数え切れない出勤日が積もっている。
一度消えた者から連絡はない。声、映像、位置情報、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが長くなった。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
(本文実測:681字)




