半分の空白
朝、特別班の会議は前夜の未処理一覧から始まった。有明の複合フロアで、二つの業務のうち一方を担当する区画だけが無人になる。壁も扉もない同じ室内だった。
白石は勤務停止だけでなく、給与、住居、保険が途切れない道を探した。生活を失えば、人は危険を知っていても席へ戻る。
退職や休職の期間は日数を増やさないが、記録も消さない。一年後に同じ業務へ戻った例では、残りの日数から再開した。
夜の庁舎で電話だけが鳴り続けた。通報のすべてが消失ではなくても、一件ずつ記録へ戻すほかなかった。
警告が届かなければ規則は役に立たない。班は会社の代表番号だけでなく、働く本人へ情報が渡る経路を確かめた。
一度消えた人から連絡はない。位置情報、声、映像、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが残る。
夜の引き継ぎでは、確定した条件より先に、翌朝までに止めるべき業務と連絡の届いていない人を読み上げた。
真壁は日付と原記録への参照先を付け、後から別の班が同じ判断を確かめられるようにした。
一つの一致だけで線を結ばず、残った人の例も同じ条件で照合した。反証を外せば、規則は簡単に作れてしまう。
働く本人へ説明する時、班は「安全」と「対象外」を使い分けた。対象外の確認例が、将来までの保証になるわけではない。
報告書には現象の呼び名より、勤務日と作業内容が多く並んだ。名前を与えても、消えた人の行き先は分からない。
班は他県の警察とも記録形式を揃えたが、指揮権まで一つにしなかった。現地の家族対応と捜査は各署が担った。 班は原記録へ戻り、判断の根拠をもう一度確かめた。
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