東京の外・反証
大手町の照明が消えるころ、班の照合はまだ続いていた。県警から届いた記録を特別班が照合する。現象は都境を越えたが、対象は東京で始まり継続された業務だけだった。 班は有力な仮説ほど先に反証する。階数、業種、建物年齢、勤続年数のどれも、次の事例で例外が出た。
真壁は範囲が広がったとは書かず、追跡条件が判明したと記した。現象が移動したのか、初めから場所を見ていなかったのかも不明だった。
都境を越えたことで、場所だけを封鎖する対策は崩れた。東京の土地ではなく、東京で始まった仕事が外へ現象を運んでいる。
逆に同じ会社が別事業を始めた部署では消失がない。追われているのは企業そのものではなく、業務の流れだという推定が強まる。
窓の外には、夜勤の明かりを残すビルが無数に並んでいた。その一つ一つに、誰にも数え切れない出勤日が積もっている。
一度消えた者から連絡はない。声、映像、位置情報、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが長くなった。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
(本文実測:712字)




