移された会社・夜の記録
大手町の朝、特別班へ一本の通報が入った。対象企業が本社機能を東京から横浜へ移す。新しい建物で同じ業務を再開した二十五日目、フロアが消える。 会議の最後に確定、推定、不明を三列へ分ける。現象へ名前を与えず、見た事実だけを次の班へ残す。
横浜の新社屋は新築で、東京の対象ビルと設備上の共通点はない。それでも東京で始めた同じ業務の二十五日目に空白が生まれた。
法人名を変え、部門を売り、社員を入れ替えても、顧客と工程と成果物が引き継がれれば連続と扱われる例が積み上がった。
東京で仕事を続けることだけでなく、東京から仕事を持ち出すことも危険になった。候補一覧は会社数ではなく業務数で膨れ続ける。
一度消えた者から連絡はない。声、映像、位置情報、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが長くなった。
「なぜ二十五日なのか」三上が書いた問いには、まだ一文字も答えがない。規則を見つけても、理由へ近づいたとは限らなかった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
(本文実測:696字)




