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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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9話

レティから「魔力の流れを掴めば魔法が使えるようになる」と聞かされていたが、今のところ俺にはその兆候すらない。

つい最近までは、それはメイも同じだったのに……


過去形で語らなければならなくなったけれど。

悔しい!

 

「やるではないか、娘っ子。 魔法は発想次第で色々な使い方が出来るでの、自分なりの使い方を見つけるとえぇ」


先日の模擬戦から俺達親子はレティに弟子入りしていた。

アイツを師と仰ぐのは忸怩たる思いがあるが、この世界の戦闘においてレティ以上の存在はそうはいない。

しかも何故か戦闘面においては非常に真面目でわからない事は丁寧に教えてくれる。

立ち回りについては特に事細かい。

 

特定の状況下での考え方を戦闘を終える毎に修正してきたり、戦術面での教養の深さに驚く。

普段がアレなのに……

本人には言わないけど尊敬するし、カッコいいんだぜ。


「感覚が解ると簡単なもんだね!」

「今度属性変換のコツも教えてやろう。 風魔法は移動にも攻撃にも幅広く使えるからの、面白い魔法じゃぞ」

「へぇ~攻撃だけじゃないんだね」

「うむ、戦闘にはあんまり向かんが空だって飛べるように出来るからの」

「空飛ぶのって戦いに向かないの?上を取って攻撃ってそれだけでも強いと思うんだけど」

「ワシみたいなのと違って娘っ子みたいな近接タイプはフィジカルが上がってくると走る方が速いからの。 移動の補助に使うのならえぇんじゃが、全力バトルにはあんまり向かん 」

「ふ~ん」

「まぁ、それも工夫次第じゃ。 魔法は思うものを描けるのも魅力じゃからな。 娘っ子の魔道を進むとえぇ」

「おぉ、何か燃えてきた!」

いいなぁ

俺も進みたいなぁ、魔道。

 

羨ましそうにミルズは二人を眺める。

 

「なんか仲間になりたそうにこっちを見ているのがいるんじゃが」

「仲間にしますか?」

「いいえ」

 

「何でだよ、仲間に入れておくれよー」

「いいえ」

 

「おい、いい加減にしないと泣くからな! 良い年した大人が泣くからな!」

「めんどくさ!」

「つっても感覚じゃからのぅ。ワシも早いとこヌシには魔法を使えるようになってもらって色々と仕込んでいきたいんじゃがな。自分の魔力の流れが解らんと他人のものも感知出来んじゃろうからな」


魔法のある戦い、特に回復魔法があるものとそうでないものは大きな差があるそうだ。

そりゃそうだ。

怪我をすれば動きは悪くなるし、被弾しないように戦うと攻撃力は落ちる。

 

単位時間の攻撃力は大事で、一秒の差で囲まれたり、味方が倒れたりする。

その逆も然り。


だから、この世界の闘いは、回復魔法前提の被弾戦術がメインとされるのだ。


模擬戦で死ぬんじゃないかって思えたアクセル君の怪我もあら不思議、30分で元通り。

全くふざけた世界だ。


しかしマススパーではなくガチスパーを毎回出来るのはアツい。

怪我の怖れなく訓練できるのは得られるもののスピードが段違いだからな。

 


「ヌシは神聖魔法に適正があるからの、回復には期待しとる。」

そうレティから言われるんだけど俺には魔法で傷が治るというのがどうにも掴めないのだった。

 

そうこうしている間にまた角つき兎を発見する。

依頼の達成には十分な数は狩っていたが訓練のためにも三人は戦うのだった。


日の落ちる前に街に戻り、本日分の成果をギルドに報告しにいく道すがら、獅子の泉と呼ばれる噴水のある広場で物乞いと思われる女性を見かけた。


"思われる"という感想を抱くのは女性の着ているものはみすぼらしく、本人も薄汚れている。

物乞いというのは卑屈な印象を受けると思う。


しかし彼女はピンとまっすぐ背筋をはり姿勢が良く、その様な印象は全く受けない。

夕日に照らされた白い雄々しい獅子のオブジェのある噴水の前で祈りを捧げる姿はむしろ神秘的で美しい。


しかしながら彼女の眼には包帯がまかれていて、視力は既に失われているのだろうと想像出来る。


彼女はアーフェンクライン帝国ではあまり見ないヒュランという元の世界で最も人間に近い種族。

身なりから長期間洗われていないだろう腰まである金髪は穢れを知らないのか夕日に反射し黄金に輝く。

美を追及した彫刻の様に整えられた顔の輪郭や鼻、少し小さめだけど桜色の愛らしい唇。

巻かれた包帯の下に隠された眼がどれ程のものかと嫌でも期待させられる。


隣にいるちんちくりんの自称神様、他称蒙昧の魔女様よりも余程神々しい。


美の女神と呼ぼう。


そして目を引くのがその大きさ。

いやいや、違うから!

そっちじゃなくて、いやそっちも凄いんだけど!

物凄いんだけど!

違うんじゃよ?うん……


今の俺って身長は多分180cm強程あって日本人としては十分長身に入り、エルフィニアとしては平均よりやや下といった所なんだけど、彼女は俺と同じか少しデカい。


何せ膝立ちでレティと同じくらいの背丈なのだ。

それでいて顔の大きさはそれほど変わらない。

 

胸部装甲は天保山と富士山ぐらい違うのに……


見惚れていた俺の心の奥に、何かが触れた。

視線を交わしたわけではないのに、まるで内側を覗かれたような不思議な感覚。

 

包帯に覆われた彼女の“目”は、確かにこちらを見ていた――そんな錯覚に陥った。

 

一瞬だろうか、数秒だろうか、固まっていた俺は自分のふくらはぎに痛みを覚えた事で我に返った。

レティが執拗に俺のふくらはぎを蹴っていたのだ。

 

「なんじゃヌシ、浮気か!嫁の前で良い度胸じゃな!」


軽く狂気を覚えるぐらいに蹴り続けるレティ。

先ほどよりか少ししょんぼりとした表情の美の女神様。

なんでしょんぼり?

 

「誰が嫁だ。 ふくらはぎを蹴るのをやめろ。そんなに暴力的なヤツが人に好かれるとでも思うなよ!」

「ぬっ!」

蹴るのをやめててへぺろ☆するレティ。

可愛さで誤魔化せるとでも思ってるのか、コイツ……


それを聞いてか女神様の表情は明るくなっている……気がした。

なんでだろう。

 

「父ちゃん、そりゃね、男の人は女の人の胸が好きとは聞くけど相手の目が見えないからってギャン見するのはどうかと思うよ?」

「違うっての!いや眼には入るけどこれは仕方ないだろ?」

「これは? ホント最低!そういうトコだよ!」

 

メイからの厳しい指摘を受ける。

美の女神様は今度は残念そうな表情になる。

いや、違うんだ。

違う違う、そうじゃない。

けど仕方ないよね、うん。

 

しかしまぁ、晴れたり曇ったりと忙しい顔だな。

どれも美しいけれど。


「言葉の揚げ足を取るな。 今までここにこの方はいらっしやらなかっただろ。 それで気になったんだよ」

「おっぱい様には敬語か、ん? この節操無しめ!切り取って蒸して炒めてやろうか!」

「あなた、言ってる事が怖いよ……」

そんな恐ろしい事を言われながら反対側のふくらはぎをメイに攻められる。

娘の蹴りはレティのものとは違い流石の威力で、無防備な状態で蹴られた俺はバランスを崩した。


地面に倒れこみそうになった所をすっと美の女神様に抱き止められる。

 

「お怪我はございませんか?」

ゆっくりと暖かく感じるほど柔らかな声が鼓膜を振動させる。

声まで美しいんだぜ……

 

「あぁ、うん。 ありがとうございます」

「良かった。 頭から倒れては大変なことになりますからね」

あぶねぇ、母性溢れる優しい声の影響でうっかり赤ちゃん返りするとこだったぜ。

ばぶー。


「何しとるんじゃ。 ギルドが閉まるじゃろが、はよ立たんかい!」

「誰かにふくらはぎを蹴られて痛くて動けないんだよなぁ、ん、あれ?」

「いいから立つんだよ、このバカチンが!」

レティとメイに両脇を抱えられ引きずられながら広場を後にする。

 

不思議な事にふくらはぎからはすっかり痛みが消えていた。

むしろ今日一日の疲れすらとれているように調子が良くなっていた。

 

ズルズルと引きずられながらミルズは振り返り噴水の方に目を向ける。

すると美の女神様はこちらを向いて手を振っていたのだった。

あら、可愛い。

美しさの中にある可愛い、たまらんね。


つか、やっぱり眼、見えてません?

俺は引きずられながらも手を振り返して返事をするのだった。


「しかしあやつ、器用な事しとるの。 あれで見えとるのか、 魔道の世界は広大じゃのぅ」

レティは何かに想いを馳せるように呟くのだった。 

 


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