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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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79/79

79話

ジルベロの案内で神殿の奥へと進むと、そこには地下へと続く階段があった。

両端に蝋燭の灯りが並ぶだけで薄暗い階段がどこまで続いている。

割と長い時間、階段を下り続けた。

すると何やら嗅覚を刺激する、どこかで嗅ぎ覚えのある匂いが漂ってくる。

「くっさ」

「ワシはしとらんぞ」

「別にそんなことは言ってないだろ。なんつぅか、割と知ってる匂いな気がするな」

「御香の匂いでもないようですが……」

階段を降りていく度に段々と香りが強くなってくる。

薄暗い階段の先、光が漏れ出してこの階段の終点を照らしていた。

どうやら匂いはそこから来ているようだ。

「はぁ、ほんま……」

ジルベロがため息をつく、割と深めに。

「どしたん、何か悩みか? 俺が聞いてやろうか?」

「じゃあ、ウチは隣で頷いてあげる!」

「仕事でもアイツと関わんのが面倒なだけや……」

「宗近さんだっけ?」

神聖な鍛冶場を預かる職人さんだからな、気難しい人なのかもしれない。

ジルベロが嫌そうな顔をするのもわかる気がする。

「あ、女の人は入ったら駄目とかあるのか? こういう場所って女人禁制ってことがあるって聞くし」

「いや、別にそんな決まりはない。むしろおったほうがえぇやろ……宗近にはな」

頭にはてなを浮かべつつ、階段を下りきって光の先へと進む。

そこは深い谷、切り立った断崖に囲まれていて、外界からきり離されている。

谷底と思われる広場には鍛冶仕事をする場所であろう建物と職人が住む家。

昔ながらの日本家屋、茅葺屋根に障子扉。

近代化が進んでいる日の出国においても、まだここは時代の流れを受けずに静かに佇んでいる。

「父ちゃん、あれ!」

メイが障子扉を指さす。

その先には草鞋を履いた足が扉からはみ出ている。

「おい、人が倒れてんぞ!」

事件か? 事故か?

ジルベロは眉間に手を当て、辛そうな表情を浮かべている。

なんだかわからんが、大変だ。

俺は急いで駆け寄り、扉を勢いよく開いた。

すると凄まじい異臭が俺の鼻の粘膜を貫いた。

「くっさ!」

宗近と思わしき人物の周囲には大量の瓶が、そこらかしこに転がっている。

これ、全部……

「酒臭!」

アルコールかよ!

床一面、見渡す限りの酒瓶。

その中の1本を大事そうに抱きしめながら、大いびきで眠る人物。

「これが宗近?」

ジルベロは何も言わずに頷いたあと、宗近を持ち上げて床の間に放り込んだ。

「どべっ! ぐふぅぅ、んごがががが〜んごごごご〜」

そんな衝撃をものともせず、胸に抱いた酒瓶を離すこともなく宗近は眠り続けていた。

「はぁ、いつもこれや……おい、おきんかい!」

宗近の頬を張り続けるジルベロ。

もともと顔が真っ赤なので、これ以上赤くなろうが全く問題はない。

だが、そのビンタの勢いが強すぎて、逆に気を失いそうだ。

「あぁ、なんだ、和子さんかいな。もっとお尻を強く叩いてくれてもかまわんよ。あぁ、良い感じだ……」

「黙れ、はよ起きんかい!」

蹴ろうが投げようが酩酊状態の宗近。

これじゃ話にならんな。

「ローザ」

「はい、承知しました」

そう言うと、ローザは解毒魔法を宗近にかけた。

見る見る間に、赤みを帯びた頬が引いていき、その目に正気の光が宿りだす。

「あ、しもた! 先に言うべきやった……」

ジルベロがやってしまった的な表情を浮かべている。

なんだ?

急に酔いの覚めた宗近は、ムクリと起き上がり姿勢を正した。

「久しいな、ジルベロよ。話は聞いておる」

キリっとした太めの眉毛に鋭い眼光、深夜の飲み屋街に腐るほどいる酔っ払いはいずこへやら。

先ほどとは打って変わって渋めのイケオジが姿勢を正して俺たちに向き合った。

「あなたがたがこの私の力を借りたいと申していた者たちか……ふむ、実に良い顔つきをしている」

声まで男前。

さっき、和子さんがどうとか言っていた人物はどこに行ったんだ?

「俺たち、これから世界最強の敵と戦うんですよ。そいつに勝つためには生半可な装備じゃいけない」

「なるほど。それでわざわざ遠路はるばるいらしたわけか……」

鋭い目つき。

緊張感で俺たちの背筋も自然と伸びてしまう。

「残念だが、それは無理だ」

「何故? 素材やお金はなんとかしますから!」

「無理なものは無理なのだ……」

「使い手の問題というわけですか? それならば俺たちの力を見てもらって!」

「違うのだ。先ほどまで私は神と繋がっていたのだが、何故かそれが途絶えてしまったのだ……」

「えぇ?」

「この手を見よ」

宗近の手がプルプルと震えている。

震える手を反対の手で押さえつけるが、その手すら一緒に震えてしまっている。

確かにこれでは槌も持てないのかもしれない……

「治療できないのですか?」

「わからぬ。だが、それ以上に神との交信が途絶えては君たちの満足のいくものができるとは思えないのだ」

神との交信……

俺たちには計り知れない、宗近の御業のコアな部分にその交信とやらが必要不可欠なのか?

そう言われてしまっては、解決の糸口が見出だせない。

どうすれば……

すると、急にジルベロが宗近の前に乗り出し、彼の顎を上げ、こじ開けるように口を開かせた。

「兄さん、そこの瓶をとってくれん?」

ジルベロは床に置かれた一升瓶を指差す。

まだ並々と中身の残ったそれを手渡すと、ジルベロは宗近の開かせた口に突っ込んだ。

ごくごくと喉を鳴らし、一升瓶の中身は宗近の胃へと消えていく。

「ぷはぁ〜」

表情が二転三転、またも宗近の目がまどろんでいき、最終列車の座席に引っかかるように座る酔っぱらったリーマンのような顔つきになっていく。

「兄さん、まだや。そこら辺に落ちてるやつをコイツの口に突っ込め」

「えぇ……」

とりあえずジルベロの言われた通り、床に転がった酒瓶を宗近の口へと突っ込んでいく。

二本、三本……大丈夫か、これ?

「よし、もうえぇやろ。おい、どないや、これでいけるか?」

「ふぇ? 和子さんや、もっと強く叩いてくれんと……こう!」

自分のケツを叩き出す宗近。

スパンスパンと小気味良い音を立てるその手の震えは完全に止まっている。

これは……


「ヌシ、コヤツ……」

「ただのアル中じゃねぇか!」






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