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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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18話

今日のギルドの掲示板には今までは見たことがない依頼があった。

内容は火トカゲの討伐。


「火トカゲ」は、全長およそ二メートルに達する大型の爬虫類型モンスター。外見はコモドドラゴンに似ていて、重そうな体に硬い鱗をまとっているという。

幼体のうちはせいぜい小型犬ほどの大きさで、人に対して大きな脅威とはならない。

だけど成体になると火を吐くようになり、危ない存在へと早変わり。


とりわけ問題なのはその繁殖力の高さで、田畑を好んで荒らすことから、各地の農民にとっては深刻な害獣とされていて嫌われている。

一匹一匹はそんなに強くないんだけど、とにかく数が多い。

そのため、ギルドでは若手やルーキー冒険者向けの任務として、火トカゲの駆除依頼が定番となっている。

 

……っていうのがギルドの受付のお姉さんから聞いた情報。

コモドドラゴンの下りは絵を描いて説明してくれたんだけどなんというか非常に個性的だった。

「可愛いトカゲだね。」

思わずそう口にすると彼女は長い耳を真っ赤にして奥へと引っ込んでしまった。

「ワシを前にナンパとかえぇ度胸じゃの」

ガシガシとふくらはぎを蹴ってくる。

毎度暴力に訴えやがって、そういうとこやぞ!

隣に視線をやるとキノコを握ってローザが腰だめに構えていた。

「ひぃ!」

それで刺すつもりか?!

どこに刺すんだよ!

っていうかいつまで持ってんの、そのキノコ!


「もうそんな季節か……いや、今年は早いな」

「国の依頼だ、報酬はいい。が、何かあったのかもな」

周囲の若い冒険者が掲示板を見ながら話している。

「今年は早い」か……

お国からの意思を受け取り、この依頼を選択することにする。

確かに他に受領する冒険者がたくさんいるから危険度はより低いものになるし、バレないように国の人間を紛れさせるにはちょうどいいんだろう。


「今日はこれを受けよう。 そんなに強い相手でもないし丁度いい相手じゃないかな」

「わかった。頑張るわ!」

初の討伐依頼で意気込むアーシェ。

一方真剣な面持ちで頷くアイン。

行き先はロンフォニーの森の奥、トレアの風穴と呼ばれる場所へと向かう。

その道中、アインが皆にお願いがあると話し始めた。

「皆さんの弟子にしてください。お金もないので対価で渡せるものなんて無いんですが……」

「まぁ、俺たち全員レティの弟子みたいなもんだし、いいんでない?」

「えっ?」

もっとしぶられたり対価を要求されたりすると思ってたのかな。 

「おい、新入り、パン買ってこい!」

最速で先輩風を吹かすメイ。

「いきなりパシらそうとすんな!」

「冗談!」

俺と娘の軽いやり取りに反応が鈍いアイン。

「こういうとるしワシは今更一人増えようが構わん」

「私も問題ありません」 

「あの……理由とか聞かないんですか?」

「強くなりたいって気持ちに理由などない!」

ドンっという擬音がなりそうな程、胸を張って堂々とのたまうメイ。

そう、理由なんていらない。

あえて言うなら生まれたからだ!

とりあえず、それでいい。

「別に言いたくなったら言えば良いし、言いたくないならそれでもいいんでない」

「んむ。 そんな事よりもうすぐ着くみたいじゃぞ。 他の冒険者が入口にたむろしておる」

そんなわけで新しいパーティーメンバーが加わったのだった。

アーシェが羨ましそうにこっちを見てるけど、あんたはダメだからな!

ちゃんと自分の立場を理解してるか?


トレアの風穴の入口付近には他の冒険者が既に火トカゲを相手に戦っていた。

ここは奥へと進む真っ直ぐな道があり、さらに奥へと進むと地下へと下っていく。

深いところは強いモンスターたちの巣窟で初心者お断りゾーンになっている。

深い縦穴を吹き抜ける風の音が獣のうめき声の様に聞こえて不気味な雰囲気。

入り口から少し奥へと進み俺たちも他の冒険者と一緒に火トカゲとの戦闘を開始する。


今回の主人公はアーシェとアインだ。

俺達は積極的には戦わず、アドバイスしたり実践での動きを見せたりと本当に師匠のような、先生のような立ち位置をとる。

アーシェとアインの動きは対照的だ。

自在に動き回り剣や魔法を振るい戦うアーシェ。

敵の間をすり抜け優位な位置を確保し、相手に的を絞らせない。

隙を見逃さずに攻撃を加える様はなかなかのものだ。


対してアインは非常に戦いづらそうにしている。

足取りは重いわりにズッシリとした重厚感はなく不安定。

振るう剣も間合の管理が上手くいかずに空を切ることが多い。  

「敵の突進に対してバランスを崩すのは少しアップライトに構えすぎなんじゃない?」

「タンク役の立ち回りをしないならもっと腰を降ろしてどっしりと……」

などとアインにはどうしても指摘が多くなってしまう。

楽しそうなアーシェに比べてアインは辛そう。

これではアインは楽しくない。

どうしようかと考えていたところ

「盾と長剣をやめるべきじゃな」

言い難かった事をズバッと伝えるレティ。

「向いとらん。 それでも盾役をやりたいんなら敵の注目を集めて回避する方向にせよ」

至極真っ当な意見に対して押し黙るアイン。

剣を握る手が震えている。

「剣と盾に拘りがあるのですか?」

そうローザに問われ無言で頷くアイン。

「騎士は……味方を守り敵を討つものだから……」

小さな声で答えるアインからは拘る理由に強い意思を感じない。

しかしこれ以上詰めても何か前向きに改善出来るような雰囲気でもない。

「まぁ戦っていけば慣れてくるかもしれない。 もう少し数をこなして考えよう」

問題は一旦棚上げして戦いに専念する事にする。

そうして半日が過ぎ、今日のところはおしまいという時間になった。


町に戻るには遠く、依頼はまだ残っているので多くの冒険者は風穴の外で野営を張っていた。

俺たちも同じ様にテントを設営して明日に備えることにする。

お姫様は今日の成果に満足気で就寝前までご機嫌だった。

対してアインは、どんより重い空気をまとったままだ。

気持ちはわからんでもない。


皆が寝静まった後、俺は見張り役の時間で外に待機しているアインの隣に腰掛ける。

星がまたたく夜。 

月明かりと焚き火の炎に彼は淡く照らされている。

「実家がもう何代も前に没落した貴族なんです……」

アインは月に話すように空を見上げて話し出す。


オルファニス家。

騎士の家系でその武力によって帝国内で地位を築いてきた。

しかし何代か前の当主が戦場で敵前逃亡にも似た敗走をしたそうだ。

当主の言い分としては劣勢のまま敵軍と交戦するよりは一度引いて大勢を整えてから後に戦う事を選んだだけだと。

ごもっともだ。

ただし領民を置いたままの撤退という事実が無ければの話だが。

結果として敗走の後に領地も取り戻したが逃げ出した騎士という汚名は晴れることなく引き継がれていく。


そうしてオルファニス家は力を失い、祖父の代には貴族の称号すら剥奪される事になった。

祖父は父に期待をかけたが、父は重い期待に耐えられずに母と共に家を出たそうだ。


そうなると祖父の期待はアインへと一身に集まる事になる。

小さな頃から厳しく躾けられ、武功を立てるべく鍛えられ続けてきた。

鍛えても鍛えても花開くことのない彼の才能に祖父は絶望し、やがて朽ちるようにその命を落とした。


「父がいなくなるまでは祖父は厳しい人ではありましたが、とても愛情を感じました。そんな祖父が僕は好きだったんです……」

焚き火に照らされ表情の見えないアインは続ける。

「だから僕は騎士を目指すんです。もう一度、オルファニス家を再興するために」

心の内を教えてくれたのはパーティーメンバーへの信頼の証か、揺れる自分の決意への戒めか。

「それが強くなりたい理由か……」

別に強くなりたい理由は人それぞれだとは思う。

俺なんかなんで格闘技の世界に身を投じたのか、頂点を目指そうとしたのか本当に理由なんて無かった。

ただ……

「自分の為にじゃなくてもいいと思う。 他人の為に力を出せる人もいると思うんだ」

俺はアインを真っ直ぐ見つめて言う。

「ただ理由を人のせいにするのは違うと思う」

アインの瞳は炎に揺らいで見える。

「俺にはそう見えるよ。僕の人生はおじいちゃんに決められちゃったって」

決意の宣言だってそうだ。

言うことによって自分を縛っているように感じる。

そんなものは決意なんて言わない。

「アインの人生はアインのものだから、本当に自分のやりたいと思うことをやってほしいな」

まぁ、人それぞれの人生。

ただ自分が好む人間性を持つ人には、より良い人生を送ってほしい。

アインにとってのそれが何なのか、本当に後悔の無いように選んで欲しい。

俺はテントへと戻り明日に備える。


アインは何も言わずに月を見つめていたのだった。 

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