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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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15/22

15話

フェイからの依頼というのはとある皇女の護衛。

 

「少女?」

「いや、皇女」

「本気で言ってる?」

「残念ながら本気だ」

「お断りします」

素早く撤退を決め逃亡を図ろうとするが、黒い鎧に包まれた屈強な男たちがいつの間にか出口を塞いでいる。

ご丁寧にばっちり耐魔防御が施された盾を構えてレティ対策は完璧だ。

「まぁ待て。 とにかく話を聞け」

「政治のゴタゴタに巻き込まれるのは御免被りたいんだけど」

「うむ、面倒じゃ」

「政治的な話は一切ない、それは大丈夫だ。 姫様に何かあった時に何かあるだけだ!」

「おい!」

「頼むよーお前たちぐらいしかいないんだよー」

余程困っているのか騎士団長直々の泣き落としが入る。

まぁ、武力を背景に押し通そうとしないのは好感が持てる。

帝国から追われて逃げ惑う生活なんて娘にはさせられないしな。

俺はふぅっとため息をついてからフェイの前の椅子にどかっと座る。

レティは部屋の周囲を見回した後、俺の膝の上に座る。

頭をはたいて隣へと座らせて依頼内容を確認する。


「姫様は冒険者に憧れていてな。」

この国は皇族であっても武を学ぶ。

騎士として国に尽くし、武功によって次代の皇帝が決められる。

それは戦術戦略、戦技剣技魔法の英才教育を受ける男子のお話だ。

だが、女性はその限りではない。

「少々力を持て余し気味の姫様は、才能もあってか護身術を超えてウチの下級騎士と模擬戦できるぐらいになってしまわれた」

「別に強くなるのはいいじゃん、駄目なの?」

「それはいい。だが、憧れの冒険者を味わおうとして、度々城を抜け出そうとされては敵わん」

「絵に描いたようなじゃじゃ馬じゃな」

「でだ。 こうなったら姫様に冒険者の真似事をしてもらって満足してもらうという方向で話がついたらしい」 

「それで? 何で俺達なのさ? 他に優秀な騎士がこの国には腐るほどいるだろうさ」 

「それがお前達にお願いする理由に繋がる。自分が初心者の冒険者なのだから、同レベルの方と組むのが当たり前だろうと姫様は仰るわけだ」

「……ややこしい娘じゃな。」

「ほんとそのと…… ルーキー冒険者と一緒に冒険者の真似事なんぞしていたら何が起こるかわからんだろ? そこでお前達だ」

「冒険者稼業を始めて三ヶ月。 条件には当てはまるな」

「おう。 似非ルーキーのお前らなら護衛としても信頼がおけるってのが抜擢の理由だ」

「まぁ、断る事が出来そうな雰囲気でもないし……」

「しかしワシらに得がないのぅ」

「金なら相応の報酬を出す」

「ふむ、ならば貸し一つと言うことでどうじゃ?」

金銭の授受で終わらせるより後々柔軟性のある貸しという形は悪くないかもしれない。

「お前からそう言われると後々恐ろしい事になりそうだが…… まあ、良いだろう。これで契約成立だ。」

書類を渡されてサインを促される。

契約書をさらりと確認し署名しようとしたが……

「なぁ、本契約に基づく業務は初回の遂行をもって終了するものとせず、依頼者の裁量により随時継続的な業務が発生する可能性があるものとする。っていうのはどういう事だ?」

契約書から目線を上げる。

フェイはわざとらしく視線を外す。

「おい、これはまた同じことがあっても依頼を受けないといけないって事じゃないのか?」

「えぇ?! そんな事が書いていたのか! 俺も書類は苦手でなぁ!」

コイツ……

泣き落としておいてその直後に罠を仕掛けるとか……油断ならねぇ。

契約書を書き換えてもらいサインする。

 

「貸し2つじゃな」

レティはニッコリと邪悪な笑顔をフェイに向けて退室する。

「2つな」

俺も後を追う。


苦い笑いを浮かべたフェイは頭をかきながら書類の山へと帰っていった。

「おい」

「まだなんかあるのかよ?」

「姫様を頼んだ」

やけに真剣な顔のフェイが俺たちに頭を下げるのだった。


―― 

城から帰る頃には夕日が落ち始め影が長くなっていた。

「ちょっと遅くなっちゃったな。 メイとローザがお腹を空かせてるだろう」

「んじゃのぅ」

「レティは先に帰っておいてくれよ。 俺は何か食べるものを買ってから帰るよ。 何がいいとかある?」

「肉がえぇのう、血が滴るやつじゃ」

「あいよ。 あとローザ様にサラダと……後は酒だな」

レティと別れ、露店が並ぶエリアへと移動する。

空は星の光の輪郭を顕にし始め街灯はぽつぽつと灯りをともした。

目的の買い物を済ますと宿へと向かう。


憩いの場となる昼間の獅子の泉と違い、夜は静寂に包まれていた。

 

美しい唄声がどこからか夜風にのって鼓膜を揺らす。

広場を進むとタンッタンとリズムを刻む足音が聴こえてくる。


噴水の前には一人の女性がいた。

年の頃は18歳前後といったところか。

成年というよりは幼く、少女というには艶のある表情だ。

 

少ない街灯の光に淡く反射する腰まである金の髪。

エルフィニアにしては耳の先が丸く印象的な形をしていた。

 

スラリと伸びた手足が動と静を表現し、躍動感の中に美を加えていた。

澄んだ歌声に包まれながら舞う姿はまるで重力を感じさせない。

輝く光の粒をまとい踊る姿は神秘的なものを感じる。


俺はその美しさにしばらく足を止めて見惚れていた。

 

「あっ」

俺の存在に気付いた彼女は驚いた表情を見せてすぐに逃げ出す。

金の髪が夜の風に舞いながらその背に流れていき、輝く粒子が霧散していく。


俺の手のひらに落ちた光からは暖かい力を感じた。

「これは、魔力……?」


まるで今見た光景が夢だったかのように、獅子の泉には水の音が流れていた。


しかしだ。

しかしながらだ。

元おじさんの俺は大いに傷付いた。

おじさんを見るやいなや逃げ出す少女に。

よくよく考えれば薄暗くて人気のない場所で自分をじっと見つめる男がいれば逃げ出したくもなる。

そうだ、そうだよなと自分を納得させつつ宿へと向かうのだった。


――

翌日、皆で件の皇女と待ち合わせの場所となる獅子の泉へと向かう。

 

一部の者以外は内密にされている今回の依頼、城内で会うわけにもいかず、差し当たりわかりやすいこの場所で顔合わせとなった。


たくさんの人々が行き交う中、男女の二人組がこちらを見ている、種族はエルフィニア。

 

女性の方は長い金の髪をアップにしてまとめて表情と合わせて快活そうな印象だ。

冒険者と言うには小綺麗で年の頃から言うとルーキーといったところ。

だが装備の剣と盾はシンプルだが質の良さを感じさせる。


一方で男の方はと言うと、銀の髪にアイスブルーの瞳。

端麗な容姿だが目付きは鋭くこちらを睨みつけている。

全身から溢れる威圧感は抜き身の刀のそれで、危険な匂いすら感じそうだ。


二人組はまっすぐこちらへと近付いてくる。

男の背筋を凍らせる様な視線を受け俺はパーティーメンバーの前に立つ。

「あんたたちが依頼の?」

そう問うとアイスブルーの瞳の男が口角を上げ微笑む。

マネキンの様なはりついた笑みに軽い戦慄を覚えたが、その後の方が強烈だった。


「あなた達が今回のパーティーメンバーですね。私の名前はカイン・ヘルクスハインと申します」

低く落ち着いた声は意外なほど優しく、聞き心地がいい。

だがその声と鋭い視線との落差に、脳が一瞬フリーズした。


そのギャップは胸元あたりにスピーカーが仕掛けられていてそこから音が出ているのか疑うレベル。

狼狽えていると俺の手を取り握手をかわす。

 「よろしくお願いします」

「よ……よろしく」

常日頃娘には挨拶をしっかりしなさいと言っていたのに……

こんなんでは娘に偉そうに躾け出来ないな……などと思ってメイの方へと視線を向ける。

「目がハート!」

思わず誰に向けてでもないツッコミを虚空に放ってしまう。

 

メイのヤツ、目が蕩けてやがる。

娘の好みなんて知りたくなかった……


ローザも祈っている。

コイツは平常運転か。


色々と脳の処理が追い付かなくて動作が重たくなる。 


そんな俺に眼の前の二人は、はてなマークを頭の上に浮かべている。

初対面の人間がこれだけ右往左往していたらはてなマークの一つやふたつ、出てきてもしょうがないだろう。

 

メモリ不足により動作不良を起こした俺に変わりレティが受け答える。


「ワシはレティシアじゃ。レティちゃんと呼ぶが良い」

「よろしくお願いします、レティちゃん」

カインはレティと握手の後、ローザとメイとも握手する。

レティをちゃんと「ちゃん」付けするやつを見るの初めてだ……


「私はアーシェ。 ただのアーシェよ。 これからよろしくね!」

お姫様は最初に抱いた印象通りで、俺を現実世界へと引き戻してくれた。

少々お転婆であってもこの世界で出会った人の中では一番まともな人格をお持ちだった。

 

お互いに自己紹介を終え、カインは城へと帰っていった。


「さぁ! ギルドへ向かうわよ! 冒険が待ってるんだから!」

憧れの冒険者への一歩を踏み出すお姫様の足取りは軽い。

「お、おぅ」

目がハートのままのメイを引きずりながら俺達は冒険者ギルドへと向かうのだった。 

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