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【毎晩22時更新!】ガン=カタ皇子、夜に踊る――無気力な第十二皇子は影で悪と戦っています――【リメイク版】  作者: 2626


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第五十六話 どうしても貴男が×貴様だけは御免だ

 【赤斧帝】と【V】が夕暮れに出かけたのをしっかりと確認してから、しつこくブラデガルディースの館に引き留めていたギルガンドの大きな胸板に縋り、サティジャは命乞いをしたのだった。


 「実は、私達も【獄人】にすると脅されて……」

涙ながらに全てを打ち明けていると、彼女の細い背中に逞しい腕が回った。

「……深い事情があったのだな」

もう片方の手が彼女の頭を繊細に、とても優しく撫でるので――サティジャは己の勝利を確信して目に涙を湛えたまま、顔を上げたのだった。

「――っ!」


 ギルガンドは今まさに獲物に襲いかからんとする猛禽と同じ目をしていた。

「されど、既に私達は一切を知っている」


 直後。

鈍い音と共にサティジャの両肩が同時に外された。

甲高い悲鳴を上げる彼女の顔を素早く掴み、ギルガンドは勝手に死なれないように顎を外した上で拘束したのだった。




 ――半裸のヌルベカを同様に拘束して引きずってくる【峻霜】の姿を見て、やっとギルガンドは本音を言う事が出来た。

「私の言った通り、二人とも耐え難く臭かっただろう」

「…………吐き気が、する」

これぞ香害だ、とギルガンドは吐き捨てて、サティジャとヌルベカを移送用の馬車に乱暴に積んだ。




 ブラデガルディースの館の全てが片付いた頃には、もう夜空に月が浮かんでいた。

「では、私は行く」

そう言って【固有魔法】を発動させて宙に浮かんだ仲間に、ヴェドは不器用で無骨な笑みを向けた。

「…………『決して来るな』と命じられたところで、従順になる男では、無かったな」

だから何だ。

それが何だ。

いつも通りの驕慢な調子の声が空から降ってくる。

「私を止めるか?」

「…………建前、は。……止めておけ、ギルガンド」

「断る、ヴェド」


 ――羨ましいくらいに真っ直ぐに夜空を帝国城目がけて天翔る男を見送って、【峻霜】は途端に憂鬱な気分になった。

「…………同乗、せねば……」

あの刺激臭漂う二人が脱走や自害をしないか見張るため、彼が狭い馬車に同乗する必要があるのだ。




*******************

 「……俺の探している誰かが、この先にいるのか?」

ロウは馬車の中にいる。

身体を丸め、杖を抱きかかえて身体を小刻みに震わせている。

「何度言ったら分かるのさ!いるって言っているじゃん!」

ベリサは苛立たしげにロウを蹴飛ばしたが、ロウは無抵抗に身体を小さくしたきりで、痛いとも言わなかった。

「止めなさい、ベリサ」

「でも!」

すうっと【赤斧帝】は目を細めた。

「――『おとうさん』の言う事が聞けないのかい?」

「ご、ごめんなさい」

急にベリサは大人しくなった。

その小さな頭を撫でて、優しい声で【赤斧帝】は言う。

「従順なベリサはとても良い子だ。忌々しいヴァンとは大違いだ」

幼女の顔が明るくなって、そのまま彼女は『おとうさん』に抱きついた。

「本当……?大好き、『おとうさん』!ずっとずっと一緒だよ!」

「……」【赤斧帝】は身体を震わせているロウを見た。「私の父である【乱詛帝】はどうしようもない女好きだった。……成る程、貴様は私の異母弟の一人か?」

「…………」

ロウは何も答えなかった。

己の半身がいきなり無くなってしまった喪失感があまりにも大きすぎて、それ以外を知覚したり反応したりする気力が完全に消えているのだった。




 「ところで――ベリサ。【神の血】は【精霊】に魔力を集めるものだそうだな?」

腑抜けのロウから視線を外し、彼はベリサに話しかける。

幼女はニコニコしながら、

「うん、『おとうさん』、あれは【スレイブ】の血を人体に打ち込むものだから。【スレイブ】の血って言うか――【スレイブ】の【スキル:ペナルティー】には三通りの効果があって。対象に、【固有魔法】を一つ追加する性質と、魔力を集めようとする性質と【スレイブ】に絶対服従する命令系統の付与が同時に行われるんだよ」

そうか、と彼は軽く頷く。

「だから【虚魂獣】は人間の魂を捕食する性質を得るのだな。無意識下で魔力を集めようとするために。

とは言え、魂を捕食した時には、喰っている先の身体には魔力が残滓としてまだ残っている。さながら、死んだ直後の人体に温もりが残っているように。……故に、【獄人】となるのだろう」

「うん、大体そう。さっきも【タイラント】に渡したけれど、今の【スレイブ】は魔力をたっぷり持っているんだよ。今なら皇太子達の【ロード】と【ミマナ】が相手でも絶対に勝てるよ!」

もう一度軽く頷いてから、彼は目を細めてベリサに訊ねた。

「ベリサ、唯一気になっている事がある」

しがみついて甘えながらベリサは【赤斧帝】の顔を見上げた。

「何?『おとうさん』?」

「『シャドウ』とは――何だ?」

忌々しそうに舌打ち一つして、ベリサはロウを睨む。

「この男が少しは知っているはずだったんだけれど……【パーシーバー】を潰したら駄目になっちゃった。本当に役立たずだよね、コイツ!」

いっそ【神の血】を打ち込んでやろうかとベリサが動いた時。

「そのまま生かしておきなさい。私が『シャドウ』ならばこの者を助けにやって来るだろう」

「……はーい」

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