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【毎晩22時更新!】ガン=カタ皇子、夜に踊る――無気力な第十二皇子は影で悪と戦っています――【リメイク版】  作者: 2626


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第四十八話 ロウ達の過去×許しがたい者②

 次の日、サティジャ・ブラデガルディースが無人の講義室の片隅で一人泣いている姿が見えた。

こちらの様子をチラチラと窺いながら。


 なので無視して、オレ達はそのまま通り過ぎる事にした。

「あ、あの……」

「殿下……?」

車椅子を押してくれている特待生達がざわついたが、

「アレは無償の善意を貪るだけの人間だ。優しい心で関わったが最後、全ての恩を仇で返されるぞ」

彼らはあのアルドリックに侍っていた彼女の姿を思い出したのだろう。

「――はい」

と静かに頷いてくれた。


 次の日もサティジャ・ブラデガルディースはいかにも被害者らしい面をして【帝国第一学院】のあちこちで泣いていたが、特待生は誰も声をかけなかった。

アルドリックはこの間何をしていたのかと言うと、あれだけお気に入りだった彼女を慰める事も気遣う事も一切無く、講義をサボって帝都に繰り出しては遊んでいる様だった。




 「テオ様、私はとうとう変態的な性癖に目が覚めてしまいましたわ……」

昼休みの保健室で膝枕してくれているユルルアちゃんが――え!?

今、何て言った!?

思わず顔を上げようとしたテオだったが、

「テオ様に見向きもされないあの女の惨めな姿を見ていると、ほの暗い愉悦を抱いてしまうのです……何てはしたない……」

良かったー、とっても健全だった。

「僕にとってユルルアは最後に残された大事な人だ。はしたないも何も構わない、ずっと僕の側にいておくれ。それに……」

ユルルアちゃんはとても小さな声で、囁くように言う。

「ええ、ブラデガルディースも【神の血】に携わっていたのでしょう?テオ様に今更色目を使っているのは、どう考えてもそれの関係ですわね」

「この前、【黒葉宮】に小さな蜘蛛が出ただろう。見た目は悍ましいが、あれの方が遙かに無害だった」

毒も無いし害虫を食べる方の蜘蛛だったしな。

ユルルアちゃんは眉をひそめて恐縮した様子で言う、

「あの時は……大きな悲鳴を上げてしまって申し訳ありませんでした」

「謝るな。君が苦手なものは僕が追い払う」


 いつも通りのクソバカップルである。




*******************

 明らかに【パーシーバー】よりも幼い外見の子供だった。

全体的にガリガリで、栄養失調気味の体つき。


 「こんな小さな子供が、家具の背後に咄嗟に隠れたら誰も気付かない訳だ」

ロウは幽霊の本体を見つけて、連れてきた。

「おっさん、このくそがきはだれ?」

その幼女はもの凄く生意気だった。

ロウの事をおっさんと呼ぶのはまだしも、ゲイブンをクソガキだと!?

テオはムッとしたものの、大人しく自己紹介する。

「クソガキじゃなくて、おいらゲイブンって……」

「じゃあブン。わたし、おなかがすいているんだけど」

「へ、へい、何かご飯を作りますですぜ!ところで、君、名前は何て……?」

「ああ、ベリサと言うそうだ」

ロウは疲れた顔をして説明した。


 何でも母親に棄てられて、衣食住欲しさに寮に潜り込んだらしい。

正体を知った特待生達が、思わず笑ってしまうくらいの小さな女の子。

しかし性格がこの通り生意気極まりないので、ロウは苦労している様だった。

この子と比べると、クノハルの生意気は筋が通っていて圧倒的に分かりやすくて本当に助かると言う事が判明した……。


 「まずい!」

ご飯を作ってくれてありがとうじゃねえのかよ。

オレ達は怒りを通り越して呆れた。

「おにく!おにくたべたい!」

ジタバタと地面にひっくり返って暴れる幼女。

「金が無いんだ」

やっぱり苦学生からは報酬を受け取らなかったんだな、ロウ。

「だったらぬすめばいいじゃん。おっさんってばか?」

この年で倫理観が完全に終わってんな……。

棄てるような親の教育を受けていたから、ある意味では仕方の無い事なのかも知れないが。

「馬鹿だろうと何だろうと盗人になるよりはマシだ」

「ふーん。おっさんってみじめだね。きれいごとっていうのにしがみついておぼれしんじゃえばいいんだ」

ロウも相当に呆れてしまっているようで、

「御託は良いから残さずに食べろ、ベリサ」

「やだ!まずい!まずい!」

「だったら俺が食べるから寄越せ」

ロウは手探りで皿を取ろうとしたが、ベリサはその手を叩いた。

「どろぼう!これはわたしのだ!」

「不味いと言う言葉が飯を作ったゲイブンをどれ程傷つけていると思っている。我が儘は俺には通用しないぞ」


 (うん?)

 (どうした、トオル)

 (【パーシーバー】がいない。珍しいな。あの性格なら、かすり傷でもロウが傷つけられたら黙っちゃいないだろうに)

 (それは確かに珍しい。【精霊】と精霊を従える者はいつだって離れないのに)

 (ベリサがいない所で、ロウに聞いてみようぜ)


 「うるさい!うるさい!しんじゃえ!」

そう言いながらベリサは手掴みで音を立てて食べた。

ロウは深々と溜息をついた。

「つくづく、教育の大切さを思い知るよ……」

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