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【毎晩22時更新!】ガン=カタ皇子、夜に踊る――無気力な第十二皇子は影で悪と戦っています――【リメイク版】  作者: 2626


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第四十一話 受容の愛情×独占の供犠

 何も無い掌に焔を灯して、ソーレは恍惚とした表情で見詰める。

「オユアーヴ。私はマニィと結婚し、レコトも授かって本当に良かったと思っている。私が二人に抱く感情は、貴様の生み出す『美』への思慕とは全く別の愛情だと判明したのだから……」

「っ!!!」

オユアーヴは背筋が寒くなった。


 ソーレの【固有魔法】は【分解】だ。

焔に関連する【固有魔法】なんて所持していなかったはずだ。


 「私は貴様の『美』のために何も彼も供犠に捧げて燃やしてみせよう。私自身の全てさえも」

そう告げるなり、ソーレは服を脱ぎだした。

「っ!?」

オユアーヴは目を限界まで見開く。


 ソーレの心臓部を貫くように【神の血】が打ち込まれていた。




*******************

 『連絡があったのにオユアーヴが中々来ないから、道でも間違えたのかと思って探しに行ったんだ。そうしたら悪ぶっている小僧共が話し掛けてきてな……』


 オユアーヴが『ロウの知り合いだ』と名乗った直後に、いきなり見知らぬ男によって荷物ごと拉致されたのだそうだ。

「あ、ありゃバケモノだあ……!」と彼らは異口同音に怯えて言った。


 その男は口の周りを真っ赤に染めていたらしい。


 嫌な予感がしてロウが周囲を捜索すると、付近のゴミ溜めの中に手足を縛られた【獄人】が放り込まれていたそうだ。

……ただ人の魂を喰らうだけでは物足りなかったのだろう。

魂を宿していた【獄人】の身体を――特に脳髄を直に啜った痕跡があったらしい。


 『【獄人】が見つかった所為で大騒動に巻き込まれてな……。やっと今、よろず屋に帰ってきたばかりなんだ』

「何処に拉致されたか分かるか!?」

オレ達は車椅子から立ち上がって、『シャドウ』の支度をしながら訊ねる。

『貴族街の方に向かったらしい。済まないが、それ以外は――』


 この時。

オレ達もユルルアちゃんも同じ直感を抱いていたのだろう。

それは【よろず屋アウルガ】にいるクノハルも同じだったらしい。


 「『ソーレ・クォクォ……!』」


 宦官のオユアーヴを拉致するような貴族の男。

他には考えられなかった。




*******************

 ソーレの裸体が焔を纏って燃え上がる。

「【分解】に加えて【犠焼(インモレーション)】を手に入れた。これさえあれば……オユアーヴ、貴様の『美』を……」


 『美』の真髄――(ソーレ)だけが理解する最深部を憧れて眺めるだけではもう物足りない。

まるで異物を内側に宿す事で真珠へ変えていく真珠貝のように、鋼に触れる事で『美』の結晶を生み出すオユアーヴそのものが欲しい。

その身体の、骨の髄を啜り脳味噌と肉を(むさぼ)るだけでは到底満足できない。


 オユアーヴの存在の証明とも呼べるその無垢な魂を。

『美』を生み出す純粋な魂が内に抱く、深く限りない(みなもと)を。

焼き尽くし跡形も無く貪り食って、一滴残さずに舐め尽くしてしまいたい――!!!




 オユアーヴは咄嗟に檻の扉を両手で掴んでどうにか出来ないかと揺さぶった。

けれど彼の力では頑丈な鉄の檻は僅かに歪む事さえしなかった。

分厚い壁を貫通しないとは分かっていても、勝手に彼の喉からは絶叫が飛び出た。

「――うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ――!!!」


 無我夢中で彼は【固有魔法】の【合体】を使った。

己の記憶が正しければ――この倉庫の外には!


 ――ガラーン!ガラーン!

倉庫の隣に設置されていた非常用の鐘楼――強盗団対策の一環として昔から設置されていた――その鐘がけたたましく鳴り出した。

「っ!?」

迫ろうとしていたソーレの動きが止まった。


 鐘そのものがオユアーヴの【合体】に――強く、弱く引かれて――激しく揺さぶられているのだった。


 「私の!オユアーヴ!」

ソーレが飛びかかってきて、檻の鉄を手で握っただけで溶解させてしまう。

「さあ、その『美』を私に――」

オユアーヴは檻の隅に身を寄せて叫んだ。

「嫌だ!死にたくない!」


 彼の養父母は彼を愛して真っ当に(はぐく)んでくれた。

彼の父親は彼を守るために死んでくれた。

『助け合う』のが家族だと教わった。


 こんな歪んだ支配と独占の強制を『美』と唱える事は――オユアーヴが心奪われている『美』と、彼を偽りなく愛してくれた家族の尊厳と、その魂への最大の冒涜だ。


 死にたくない。

 死にたくない。

 このまま焼かれて死ぬ事だけは嫌だ!




 業火にくべた生贄のように体中を燃やしながら、ソーレはオユアーヴに手を伸ばす。

「生きるのだよ、貴様の『美』は!私の中で!私と共に!――永遠に!」


 ――やっと、恋い焦がれ憧れ続けた『美』に触れられる。

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