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【毎晩22時更新!】ガン=カタ皇子、夜に踊る――無気力な第十二皇子は影で悪と戦っています――【リメイク版】  作者: 2626


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第十八話 カモネギな貴族様×事情通なよろず屋

 おお臭い、何と汚いと罵詈雑言を吐きながらも、その高貴な身なりの男が【よろず屋アウルガ】に入ってきた時、ロウは【乾坤一擲】で大負けした所為でふて寝していた所だった。


 (ロウ、大変よっ!一大事だわっ!いかにもお金と問題(トラブル)を抱えていそうなお客がいきなり来たんだものっ!それにしても臭いだの汚いだの本当に失礼しちゃうわねーっ!そんなに毎日お風呂に入れて香水を付けられる身分がそんなに偉いのかしらっ!……でもこの素敵なパーシーバーちゃんは、出来ればロウと一緒に毎日温かいお風呂に入りたいわっ!だって世界一可愛いオ・ン・ナ・ノ・コだものっ!)

 (おい。また『シャドウ』に頼むから黙ってくれと言われるぞ)

 (まあ、ロウってば照れちゃって、本当に可愛いんだからっ!でも何にも遠慮なんて要らないのよーっ?だってロウが小―ちゃい頃からこのパーシーバーちゃんはロウの側にいるんだものっ!頭も丁寧に洗ってあげるし、背中も優しくこすってあげるわよっ!)

 (……勝手にしろ)


 ロウの頭を撫でている【パーシーバー】の存在など全く分からぬまま、いかにも貴族らしい高貴な姿の男に従って、ドヤドヤと入ってきた護衛達が大声を出した。

「おい、起きろ!この貧民め!」

「……何だ、新手の借金取りか。悪いが今日も持ち合わせが無いんだ、帰ってくれ」

ロウは、この手合いの――身分や地位を笠に着て居丈高に接する人間が、蹴り倒したいくらいに大嫌いだ。

だから彼はすっとぼけながらノロノロと起きて、黒眼鏡をかけると杖を握りしめた。


 「……盲目だと?おい、こんな男が?話が違うでは無いか!」

貴族らしい男は護衛の一人を問い詰める。

「それが……報告では……『間違いなくここだ』と申しておりましたので……」

小声で話しているつもりだろうが、耳の良いロウにはとてもよく聞こえている。

だから彼はますますすっとぼけて、

「お貴族様が貧民街を見学したいって依頼なら丁度良かったな。それなりの金さえくれるなら、【地獄横町】以外をちゃんと案内して――」

「黙れ貧民!御館様の許可も無く臭い息を吐くな!」

護衛がロウを一喝したが、そこで貴族の男が低い声で「止めるのだ」と言い、穏やかにロウに声をかけた。

「私の従者が失礼した。それで……君の名前は何と言うのだね?」


 (んまーっ!本当に失礼しちゃうわねっ!名乗るなら先に自己紹介からでしょうがっ!)

 (警戒しろ、【パーシーバー】。主を御館様と呼んだ、恐らくコイツらは……)


 「先に名乗れない事情があるのか?」

「まあ、そんな所だ」

「そう言う客も、たまに来る。どうせ俺の名前はもう知っているんだろう?」

うむ、と満足そうに頷いてロウの前に男は立つと、慇懃無礼な態度で話し出した。

「金ならこの通り即金で払おう。ただし、その代価として、一つ――つぶさに教えて欲しい情報があるのだよ」

男が指を鳴らすと、不満そうな顔をした護衛の一人が懐から小袋を取り出し、ロウに渡した。

「……慈善事業相手には酷くしみったれているお貴族様が、怖いくらい気前が良いじゃないか」


 この音、重み、手触り、刻印……間違いない。

本物の金貨だ。

それも、こんなに。


 (おい)

 (……分かっているわ。三歩先に護衛が一人、その向かって右奥に一人、玄関と棚の前にそれぞれ一人。武器は槍よ。それぞれの身長は……)


 密かにロウ達は警戒の度合いを強めた。

貧民街の人間にここまで気前が良い貴族はいない。

――何かしらの腹黒い魂胆を抱えている場合を除いては。


 金貨を何度も音を立てて触りながら、ロウはわざと声の調子を明るくして言った。

「欲しい情報ってのは、俺が知り得ているモノなのか?」

「ああ、貧民街に誰よりも詳しい君こそが、恐らくこの帝都で誰よりも知っているだろうと結論に至ってね。貴族らしい教養溢れる会話は君も苦手だろうから、率直に聞こう。

『シャドウ』とは何処の何者なのだ?」


 やはり、か。

ロウは冷静に考えている。

この男はアーゼルト・ニテロドだ。

イルン・デウとフェーアを撃破した『シャドウ』の調査に、とうとうニテロドの御大将自らが乗り出してきやがった。


 「素顔までは分からん。この通り目が見えないんでな。だが声は聞いた事がある。割と……そうだな、若い方の男の声だった。凄い音を出す武器を両手に持っていて、何でもそれは飛び道具なんだそうだ」

「ふむ……」

「貧民街の何処かを根城にしている事までは分かっているんだが……」

ここでロウは手を突き出して更なる金貨をねだった。

その手にこぼれるほどの金貨を乗せて、アーゼルトは続きを急かす。

「それで?」

「ヤツはこの【よろず屋アウルガ】に来る事がある。【神の血】事件を追っているからって、情報を欲しがったりするんだよ」

「ほう?その時に売った情報は?いつ来たのだ?」

「つい先日だ。ハウロットって大悪党についてだ。ハウロットは貧民街の連中でも怖がって近づかない【地獄横町】相手に、揉めに揉めていたんだよ」

「何が理由で……?」

「【地獄横町】を牛耳る暗殺結社【致死の赤(スーサイド・レッド)】の構成員(なかま)を、ハウロットの手先が【虚魂獣】に変えたんだとさ」


 ――ピクリ。

アーゼルトの眉が僅かに動いたのをロウ達はしっかりと感じ取っている。


 「あくまでも脅しのつもりだったんだろうが、【致死の赤】の首領は激怒した。それ以来、ハウロット一味を執拗に付け狙っていたんだが……」

ここまでが『シャドウ』に『売った』情報だ――と前置きしてからロウは本題を切り出した。

「そのハウロットが殺された。噂じゃ『シャドウ』がやったらしい。だが、奇妙なんだ」

「……っ」

にじみ出た脂汗をアーゼルトは手の甲で思わず拭った。

同時にそっと深呼吸をしたアーゼルトの様子に、『やっぱりな』とロウは確信する。


 アーゼルト達もハウロットとは何かしらの面識があったのだ。

とすると、ニテロド一族は【神の血】をただ手に入れ、皇太子の位を奪う陰謀を企てているだけでは無さそうである。


 そもそもの話。

皇太子の位を奪う密計を、斜陽のニテロド一族だけで実現させるのは今となっては不可能である。

恐らく……他にも賛同し、協力している者がいるのだろう。

その者が『シャドウ』の言う『事件の黒幕』かどうかまでは不明だが。


 「……ほう。それで、奇妙とは?」

「ハウロットは何者かにくびり殺されたらしい。が、『シャドウ』の得物は飛び道具のはずだ」

「……ふむ」

「しかしだよ、【致死の赤】がやったのなら最低で生きたまま体を八つ裂きにするはずだ。敵対者がどうなるのか、見せしめにしなきゃならんからな。かと言って【帝国治安省】の連中が悪党を密かにくびり殺すってのも、ちいっと変だろう?ハウロットほどの大悪党なら、捕まえてから大々的に公開処刑モノだ。だから、誰がハウロットを殺したのか……俺にも見当が付かないんだよ」


 (……どうやら、上手く誤魔化せたみたいねっ)

 (俺が『シャドウ』をおびき寄せる餌にされる事も無さそうだな)


 「そうか……」

半ばは呻くように、アーゼルトはつらつらと言い訳じみた理由を喋った。

「実は、我が一族の縁者が【神の血】に手を出していた事がつい先日判明したのだ。確実に処断こそされたものの、貴族として一族郎党の名誉毀損は断じて許しがたいものだった。故に調べていたのだが……」

「ソイツは不幸だったな」

と言いつつもロウは特に興味も無さそうに、こぼれ落ちた金貨を手探りで拾っている。

「――おい!帰るぞ」


 急ぎ足でアーゼルト一行が出て行ったのを確認してから、ロウは呟いた。

「……情報を集めに行くか。この通り、金もある事だしな」

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