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【毎晩22時更新!】ガン=カタ皇子、夜に踊る――無気力な第十二皇子は影で悪と戦っています――【リメイク版】  作者: 2626


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第十七話 残酷な失恋×さようなら

 オレ達が【よろず屋アウルガ】に入ると、確かにそこには【虚魂獣】がいた。




 「もうやだ……食べたくないのにひもじいのが止まらないの……私……これ以上、バケモノになりたくない……」

うずくまってゲイブンの手を握りしめて、彼女は人のままの目をして震えていた。


 『……三本も【神の血】を打ち込むなんて……何て、何て酷い事を……っ』

【パーシーバー】が極限までその空腹の感覚を下げているから、辛うじて彼女はロウやゲイブンを襲わないでいられるらしい。


 ――その応急処置も、もはや時間の問題だった。


 「フェーアさん、フェーアさん……」

フェーアの手をおでこに付けて、ボロボロと泣きじゃくるゲイブンが、オレ達の姿を視界に入れた。

中身のない卵が割られたかのように虚無的に笑って、ゲイブンは言った。

「あはは……もう、もう来ちゃったんですぜ……?」

「ああ」

オレ達は『シルバー&ゴースト』を構えた。

「嫌ですぜ!止めて――」

咄嗟に俺達の前に立ちはだかろうとするゲイブンを、歯を食いしばってロウが組み伏せる。

「ゲイブン、もう……フェーアは人間じゃないんだ!」

「でも、ロウさん!でも!でもですぜ!」

「三本も【神の血】を打ち込まれたんだ。これ以上苦しめるな!」

「……ああっ!うわああっ……!」

ボロボロと嗚咽と涙をこぼすゲイブンに優しい視線を送ってから、フェーアはオレ達を見据える。

「ああ、噂は本当だったんだわ。黒装束に不思議な武器を両手に持って……貴方が『シャドウ』なのね」

「言い残す事はあるか」

フェーアは目を閉じて微笑んだ。

「――ブンちゃん、ロウさん。私の事は忘れて。さようなら」




*******************

 翌日、ゲイブンはテオの送迎の仕事を休んだ。

その次の日に戻ってきた時は、ゲイブンはいつも通りだった。


 「ロウさんと一緒にフェーアさんのお墓を作ってきたんですぜ!それと危ないから、しばらく【大遊郭】の【至福と奈落】で住み込みで働けって……」

そう言ってゲイブンは、少し不安そうに【よろず屋アウルガ】のある方角を見つめる。

「ロウなら心配要らない。むしろロウにとっては、ゲイブンが人質にされる方が怖いのだろうよ」


 ――フェーアの家族は借金まみれだったと言う。

そんな人間が、どうやって【神の血】を手に入れたのか。

仮にニテロド一族の陰謀だとしたら、【大遊郭】での騒ぎはヤツらに監視されていた可能性がある。

オレ達が【よろず屋アウルガ】に到着した時は周囲に怪しい気配は無かったが……場所を知られた後だったかも知れない。


 「……分かったんですぜ。ロウさんまで亡くすのは嫌だから、おいら、大人しくそうしますぜ」

「ねえ、ゲイブン……」

ユルルアちゃんが心配そうに声をかけると、ゲイブンは牛車を動かしながら言った。

「おいら、何にも知らなかったんですぜ。誰かに優しくする責任も、好きになる責任も。でも……その責任を背負う覚悟って言うんですかね、それが出来た気がするんですぜ!」


 (大人になったな、ゲイブン)

 (ゲイブンの優しさは強さで、甘さは慈しみだ。幾ら『忘れて』と言われた所で、絶対に忘れる事なんて出来はしない……)


 「それで良いんだ、ゲイブン。焦って大人になる必要は無い。それに、人は背負うと強くなれる事もある」

テオがいつになく温かい声で話しかけると、

「えーっ!?」

ゲイブンは振り返って笑った。

いつものように無邪気に、純粋に。

「じゃあ、おいらももうすぐ『ガン=カタ』ってので『シャドウの兄貴』みたいに格好良く戦えますかね?」

「特訓が必要だが、不可能ではない。そうだな、まずは基礎体力向上のために半年ほどみっちりと――」

「ひぃえーっ!」

ゲイブンは慌てた様子で前を向いた。

「ま、また今度にしておきますぜ!」

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