2話 セカイの話
ヴァロカは肩を伸ばしながら部屋を出ていった。数分後、彼は何冊か分厚い本をもって入ってくる。
『遅カッタジャネーカヨヴァロカ!』
寂しかったのか、丸っこい小鳥?はヴァロカをつつき始めた。
「紹介するの忘れてた、こいつはサード。AIサーヴァントってやつ、俺の仕事のサポートをしてくれるやつだ。言動は結構子供っぽいが高性能なんだぞ、足で何かを掴んで持ってこれるし」
サードは急に褒められて照れているのか、つつくのをやめ、静かに彼の肩にちょこんと乗り、そのまま眠ってしまった。
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「さて、今から教えていくが、大丈夫か?長い話になるから、必要なら水とか持ってくるが」
「……いえ、大丈夫です」
ヴァロカさんは了承の意を示し、ベッド脇の椅子に座った。彼は先程の本を1冊掴み、開き始める。タイトルは『終末についての100のこと』だそうだ。表紙からして、おそらく子ども用の教本だろう。
「……じゃ、今からここの事について教えていくぞ。まずはっ…ここの都市についての話からだな。
ここは軍都グラジオスって言うところだ。でかいところだが…もうここしか住める場所はないんだ。人類最後の砦ってやつだな」
ヴァロカさんは本を広げ、こちらに向けた。そこには地図のようなものが描かれていた。これが軍都内部のものだろう。
「軍都は8つの地区に別れてて、俺らがいるとこが『ヤグル地区』て言うんだ。地図で言うと…ああ、ここだな。」
ヴァロカさんは黄色く囲まれた地区を指さす。
「結構大きいのですね」
「まあ、そうだな。先人たちが頑張って居住地を広げてくれたお陰だな。」
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「さて、今からここを管理している軍について話そうか」
ヴァロカさんはページをめくり、細かく色付けされた図を見せる。
「これが軍の組織表ってやつだ。話すって言っても、ここに書いてあることが全てだから自分で読み込んでくれ。俺は呼ばれたからそっち行ってくる。投げやりですまんな」
そう言って、彼はサードと共に行ってしまった。
私は言われた通り、その本へ目を向ける。
【第一部門:行政】(緑)
〈主な機関〉
・行政局 ・司法局 ・立法局』
【第二部門:研究・医療】(赤)
〈主な機関〉
(研究)・中央区研究所 ・プルメリア学園大学院
(医療)・軍営中央病院 ・その他診療所
【第三部門:教育】(青)
〈主な機関〉
・プルメリア学園
【第四部門:軍事・治安維持】(白)
〈主な機関〉
(軍事) ・防衛軍 ・対霊遊撃隊
(治安維持)・治安局 ・各区治安維持組織(協定済)
【第五部門:総務】(黄)
*これといった機関はないため仕事内容を書く。
〈仕事内容〉
・本部、建物の維持 ・犠牲者の集計
・公共墓地の管理 ・行事、式典の準備 etc…
「……ん?」
見たことも、聞いたこともないはずなのに、何故か既視感を覚えた。
読み終わって丁度にヴァロカさんは帰ってきた。彼は私に気づくやいなや、首を傾げて近づく。
「ん?どうした?」
「あ…いえ、何も」
「そうか、なにか思い出せそうだったら言ってくれ」
ヴァロカさんは椅子に腰掛ける。
「じゃあ。最後の話をしよう。さっき、ここは人類最後の砦って言ったよな?なんでそう言われるようになったかについてを教えよう」
「まず、人類を脅かす化け物たちについて話す。そいつらの名前は『終末』と言う。煌歴2416年に雪国で発生した後、すぐに全世界へ広がった。んで、そいつらが起こす災害のことを『極夜』と言うんだ。後、今は煌歴3612年な」
「次は極夜について話そうか。極夜はどんなもんかっていうのは、その名前の通り辺り一面が夜になる。そして化け物たちが出てくる…っていう事しか知らねぇわ。すまん」
ヴァロカさんは頭を掻きながら謝った。そして、再び背伸びをする
「ふー…疲れた。一旦休憩がてら外行くか。診療所は休みだし、アンタもこんな病室に留まりたくないだろ?それに、自分の目でこの軍都を見た方が早いしさ」
彼は私の手を取り、ゆっくりと立ち上がらせた。まだ足元はおぼつかないが、前よりもずっと体調はいい。サードも起きたのかヴァロカから離れ、身支度を始めた。
「服はここに置いておくから、準備できたら玄関に来てくれ」
いつの間にか身支度を終えたサードを連れ、彼は部屋から出て行った。私はベッドサイドテーブルに置かれた服を手に取る。黒のシャツ、白いベスト、スカート…どれも綺麗に洗濯されており、汚れひとつも無い。横にはイヤリングであろうアクセサリーが置いてあり、青色の水晶が見蕩れるほど美しく輝いている。試しに着替えてみた。うん、水晶の輝きに負けず、我ながら可愛い。記憶を失う前の私はさぞかしオシャレだったのだろうと思えるほどだ。
足元を弾ませながら玄関へと向かう。もうヴァロカ達は準備を終えていたらしく、待機していた。2人と合流した後、外に出た。
「……わっ…」
思わず感嘆の声を上げてしまう。それもそのはず、最後の砦やら終末世界やらなんやらと言われていたから、てっきり街並みはボロボロなのかと思っていた。だが予想に反して街並みは近未来的で綺麗だった。
「驚いたか?まあ無理はないだろうよ。『終末』だのバケモンだの言って、人類に希望なんてないんだとか思っていたんだろう?」
ヴァロカはフッと笑って、
「逆だよ。こんな事になったからこそ、人類は更なる未来を求めた。生きる希望を求めた。だから技術が急速に発展して、俺らは今に至る。なんかの本から引用すると…『待て、しかして希望せよ』ってことだな。今のこの状況にピッタリだろ?」
彼は私の手を繋いで街を歩き始めた。サードはムスッとしながらも、ぴょこぴょこと私たちに着いてくる。ある程度歩いたところで、お店が立ち並ぶショピングモールらしきものに着いた。そこはとても活気がよく、さっきの話が嘘みたいに見えた。
ヴァロカはこちらに手招きをし、あるお店に向かった。そこはお財布やカバンなどのお店らしい。
「よし…エルシア、好きなもん買っていいぞ。ん?ああ、金は俺が払うよ」
「えっ!?いや、それは…流石に失礼というか、おこがましいというか…」
「だってあんた無一文だろ?あんな路上で身ひとつで倒れてたんだから。それに、これは俺からのプレゼントって訳だからな、奢りじゃないぞ」
彼の押しに負け、店の中を見て回る。何故かサードも着いてきた。一緒に選んでくれるのかな…?ふと、綺麗に売られているカバンの値段を確認して見る。
「…えっと…一、十、百、千、万…15万…?」
「マジ…?本気…?」
「何かお困りですか?」
二人でで予想以上の金額に驚愕していると、店員さんに急に話しかけられてしまい、ビクッと身体を震わせてしまった。でも、せっかく話しかけてくれたのなら、答えなければ。そう思い、勇気をだして話を始めた。
「あの、お財布を探しているのですが」
「お財布ですね。承知致しました、ではこちらへどうぞ」
店員さんは優しく案内してくれた。財布の売り場に着くと、再び丁寧な物言いで接客してくれ、サッと買い物を終えることが出来た。
再びモールの中をぶらぶらと歩く。その間ヴァロカ達と他愛のない会話を続けていた。ふと、彼は私にある疑問を投げかけてきた。
「そういやアンタってさ、本当に終末の話とか、ここの話とか知らないんだな?」
「はい、記憶が無い以上そうなりますね。いつか戻るといいのですが…少し怖いのです」
「だよな。辛い記憶まで思い出しちまうもんな、仕方ないか。まあ、俺らのところで一緒に働いてれば大丈夫だろ、記憶が戻ってもサポートするからさ」
「そうですね、ありがとうございま…一緒に働く…?」
「違うのか?だってアンタ行くところないだろ?なら、俺のところで働いた方が安全だ。それに、人手が増えればその分助けられる人が増える。一石二鳥じゃないか」
「ソウダゾ!エルシア!オレラハオマエヲ歓迎スルゼ!」
彼らは太陽のような笑みを浮かべ、手を差し伸べた。私は手を取り、精一杯の笑顔を見せる。
「はい、よろしくお願いします」
彼らと帰路に着く。仲良く談笑し、新たな生活に希望を抱く。そして、空が闇に包まれた。
どうも皆様こんにちは。霜月東と申します。執筆遅れてすみませんでした。色々と予定が込み合い、ようやく終えることができましたので、今度からはなるべく早く執筆を終えれるように頑張って参ります。
Twitter(現X)にてキャラ情報の発信を始めようと思いますので、よろしくお願いします。




