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砂の門  作者: 山代
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砂門と俺

 今日、俺は仕事を辞める。

朝礼が終わると同時に部長のデスクに辞表を叩きつけるのだ。一言だけで良い。


「本日分を含め、残りの有給休暇は全て消費いたします。」


あとは、堂々と事務所から出てゆけば良い。

この日の為に、普段はすぐに使い切る有休をキッチリ2週間分残している。

幸いにも荷物は少ない、45Lのナップザックで足りるだろう。

俺が面倒を見ていた後輩とハムスターには、申し訳ないが辞める。


 入庁して30年。組織の中では古株になった。安定と金の為に始めた職であったが肉体労働ゆえ、定年まで働くのは無理がある。今なら早期退職金が貰えるだろうし、早々に足を洗うのが吉だろう。

辞職後のスローライフを夢想する。

西に畑を買って自給自足も悪くないかも知れない。

南に小屋を建てて釣り三昧が良いだろうか、あちらでは色鮮やかで大きな魚が釣れるようだし。

二輪車で国を一周しても良いだろう。ガレージで砂塗れになっているヤツはまだ動くだろうか。

金の心配は要らない。趣味は無いし、食事に興味も無い。

30過ぎて頭髪の後退に伴い女気も無い。

可哀想な人間だろうか?これは現実だ。肯定するほかない。

歩く、跳ぶ、歩く、跳ぶ、足取りは軽い。

薄ら笑いでスキップをするハゲは滑稽だろうか?

良いではないか。明日にはこの土地とも別れるのだからな。


突然、生暖かい風が吹いた。


 アスファルトに砂が堆積する。ビル群を砂が覆う。

ため息が止まらない。心做しか腹が痛い。

通信機にて職場に一報を入れる。



砂門(さもん)顕現を確認。現場にて民間人の避難誘導、救護、探索にあたる。応援を求む。』




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