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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

一般性癖論

作者: 木村カナメ
掲載日:2026/05/04

「『母を殺した』と自首した男性に死刑判決が言い渡されました」


 淡々と原稿を読み上げるアナウンサーの声がポータブルラジオから聞こえた。つい数日前インタビューに伺った囚人だった。以下はその際にレコーダーで録音した肉声である。


 首絞めという行為それ自体は武器を必要とせず他者を死に至らしめるのに有効な手段だが、ここ最近はカジュアルに、極めて手軽に快楽を生み出すことで一部の酔狂な人間にとっては人気なようで、私としてはとてもじゃないがそんなリスクを冒してまでやるようなことでは無いんじゃないかと思ってしまう。


 だがしかし私は首絞めがどうしようもなく好きだ。もはや趣味と言っても過言では無いほどに首を絞めてきた。まあ大抵の人間はこんな話をすると、決まって漏れなく確実に私から距離を置く。だというのにあなたはこんな私にインタビューしたいと熱烈なオファーをしたそうじゃないか。いったいどんな意図があるのか知らないが、どうかしてるんじゃないか?


 ……まあいいか。どうせ後少しの人生なのだから、最期くらい言いたいことを言わせてもらいますけどもね、私にとって同意の上での首絞めは首絞めとは言えない。ただ首の血管を圧迫して脳への血液を遮断させる危険な行為でしかない。


 私がまだ14の時。生死を彷徨いかけたあの瞬間から、首を絞めるという行為の沼に浸かってちょうど10年。麻縄や衣服、果てはピアノ線といったメジャーな物での首絞めは粗方やりつくしてしまった。結局のところ自分で絞めるのが最も手軽で最も大きな快楽を生み出していたことに気付いたときは思わず膝から崩れ落ちたものです。


 (中略)


 ……私がここまで首絞めに執着する理由? そんなの一つですよ。散々私を苦しめ廃人寸前に追い込んだ化け物に、全く同じ方法を以てやり返したかったからです。惜しむらくは、最後の最後に快楽を与えてしまった事が悔しくてたまらないですけどね。


 ハハッ、という自嘲気味の笑い声を以てカチッと再生が終わった。

 事件の詳細に関してはまったくもって馬鹿馬鹿しい内容だったが、自分と同じようなことをしてきた人間の話はとても興味を惹かれるものだった。

 惜しむらくは他者を手にかけたせいで絞首刑になっている愚かな人間であったこと。

 ああ、せっかく同士に出会えたと思ったのに死んでしまうとは情けない限り。

 真に快楽を得るその瞬間まで、そのドス黒い感情を表出させては最大限楽しめないのだから。

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