異世界転生したら神器がスマホだった
異世界から初投稿です。こちらの暮らしを皆さんにご紹介したいと思います。ジャンルとしてはエッセイではありますが、ハイファン・異世界転生で投稿します。エッセイっていうか、ブログというか、日記みたいな感じになるかもしれません。
更新は不定期です。仕事で書く時間があまりないので、連載ではなく短編シリーズ形式で投稿していきます。
前世に関しては、そっちの家族の迷惑になると困るので、質問されてもお答えする予定はありません。
とりあえず。
内容を三行で説明するなら。
転生先の
神器が
スマホだった
異世界転生した。
色々言いたいことはあるが、まずはそこだけ分かってくれればいい。
一応、大前提として、我が魂の故郷、西暦二千年代の地球よりも文化文明は劣るとだけ言っておこう。なろうでよくある中世ヨーロッパ風と言いながら近世くらいの世界観でもなく、古代に近いかもしれない。
イメージとしては、古代ギリシャや古代ローマだろうか。大学受験は日本史で受けたから生活水準の違いが分からん。
ただし、異世界転生に憧れる者たちにはお誂え向きに魔法などという超常があるので、とある宗教の台頭による科学の衰退などは起きていない。
交通網や娯楽面はいまいちだが、衛生観念に関しては前世並の水準を保たれているので、転生したことに気付いたときにはひどく安心したものだ。
都市部に住んでいるものだから、窓から排泄物を投げられてはたまらない。モヘンジョ・ダロには上下水道が完備されていたし、江戸時代の日本は排泄物まで3RやSDGsに対応した社会だった。
別に宗教を批判しているわけではないが、少なくとも救世主誕生からルネッサンス期までの地球のような歴史の停滞は無さそうだ。(個人的見解です)
そんな世界の、それなりの家に生まれた私ことスーヤ(家名はややこしいので省略するが、長ったらしい家名があるのは有力者の証拠である)は、TS転生にならずに安堵している十七歳の乙女だ。
界隈でも美少女と評判で、ひっきりなしに来る見合いの申し出を片っ端から蹴り返していたら嫁き遅れと呼ばれる年齢になってしまった。
っていう世界線だったらいいなぁ。
お分かりの通り、ウソです。
こちらは女性の結婚平均年齢十四歳。初潮が来たら子ども産める=結婚オッケーというざっくりした考え方なので、完全にBBA扱いだ。ちなみに男性の方はというと三十歳前後で結婚する。ロリコン大歓喜である。調べたら古代ギリシャもそんな感じだったらしい。悪習だよ。
私がこちらで、まあ、バブルで言うところのクリスマス過ぎたケーキ(いちご変えても売れない)くらいの年齢であるとお分かりいただけただろう。悪かったな。
と言っても、私自身は結婚なんてあんまり関係なくて、色々あって五歳から神殿でミコやってます。日◯ンじゃないよ。
私の立場は巫女とも言えるが、正確には神子だろうと思う。あ、生まれじゃなく扱いの問題ね。
古の神々が残した叡智を読み解く力のある者。
それが【スィム・ァフォン・ティゥィウドゥク】と呼ばれる者。
なんか変な名前じゃね?と思ったそこのアナタ。発音を日本語に直しにくかっただけです。苦肉の策なんです、察して。なんなら【ティゥィウドゥク】の【ティゥィウ】のあとに小さくンを入れたいくらいだ。
やー、ビックリしたね。五歳って洗礼的なことをやるんだけど、それがミコ(めんどくさいからミコで統一します)探しを兼ねてるのよ。
男でも女でも、条件を満たせばミコになれる。
女のミコはさっきの呼び名で、男のミコは【ネェイッ・トォ・ティゥィウドゥク】と呼ばれる。【ティゥィウドゥク・シィァ】がミコの総称で、女の場合は【スィム・◯◯】、男なら【ネェイッ・◯◯】と◯に名前を入れて呼ばれるのだ。
んで、私はミコの適正があると認められたので、こうして親に神殿へと押し込まれたのが五歳。親元離れてって年じゃあないよね。
しかしながらですよ?
ミコになれる子が見つかるのは二百年にひとりとか三百年にひとりとかそういう確率。レアですなー。
そんなミコのお仕事と言いますとですね。
神器を使用して神々から智慧を借りること。
違う次元におわす神々に問いかけ、お知恵を借りるのです。別にお祈りしたり、あやしい儀式をしたりもしません。いたこみたいに憑依したりもしません。
毎日毎日、あちらこちらから依頼された案件がきて、調べ物に書き物で、机に齧り付いてます。
そも、神器とは。
スマートフォンーーー要するにスマホなんだから。
✴︎
「またなんですか」
「それがおぬしの仕事じゃろ?」
「いや、そうなんですが」
こんなやりとりはしょっちゅうある。
久方ぶりのミコだからって、あっちからもこっちからも神々のお知恵を借りたい自助努力しない奴等から依頼がくる。そのせいで乙女の右手にはペンダコ。治癒魔法でも追いつかず、十二年間の蓄積で作られた年季の入ったペンダコ。
いい年した大人が、クレクレかよ!
人に聞く前にggrks!
お前ら全員、半年ROMってろ!
って、ちょっと古いか。いや、かなり古いな。もう化石だ。
神々の叡智と呼ばれる神器。スマートフォン。スマホ。こっちの人たちは上手く発音できない。どうしても【スィム・アットゥ・フォン】になってしまう。かろうじてフォンのところだけは言える。でも、フオンって言ってるんでね?ってくらい【ォ】の存在感が大きい。
【スィム・ァフォン・ティゥィウドゥク】は【スマホ中毒】、【ネェイッ・トォ・ティゥィウドゥク】は【ネット中毒】、【ティゥィウドゥク・シィァ】は【中毒者】が語源だったりする。まあ、言えないよね。
ググレカスと言ったところでググっても読めないわけで、私のように転生者でなければ異世界言語なんて分からんわけで。
不壊の魔法がかけられていて、容量無限大、課金無制限、不思議なことに地球のウェブにアクセスできる、充電は魔力を込めるだけで永遠に使える、どう見ても知恵の実社製の神器。
私が使い始める前は、言語設定が日本語ではなかったので、どうやら歴代のミコは日本人限定ではない様子。カレンダーはバグってるけど、時間はこっちに合わせてるみたい。地球の時間軸とどういう関係になってるのかは不明。
あ、課金無制限って言っても代償として魔力は取られる。仕組み?知るか、そんなん。お金はかからないというだけだ。
ちなみに私が286年ぶりに電源入れたら、履歴にはアダルトサイトを見た形跡があった。前任者は男の人だった。きっと夜な夜なお楽しみになったのだろう。
ミコは恋愛も結婚できる。できないわけがない。だって、神器を扱うには地球の記憶があればいいんだから、純潔とか関係ない。
でも、ね?神殿ってさ。ミコの周りはじーさんばーさん、おっさんおばさんが多くてさ。出会いがないのよ。
どう見ても、一生神殿に監禁するコースだよね?
それでも時折、ミコに表敬訪問に来たどこそこの若い王族やらとくっつく人がいるそうで。一縷の望みはそれだけ。
私のところには今のところ誰も来てません。おっさんにしか会いません。かなり間が空いてのミコなので、私を逃してなるものかと周りを神殿の年寄りで固められております。でも、申し込みもそんなにないみたい。顔か?顔があかんのか?
ちなみに住まいは宗教国家、地球でいうバチカンみたいなところで、聖地に建てられた宗派の総本山的なところに私は住んでいる。独立国家扱いです。世界最小国で、面積も多分、バチカンと似たような感じなんじゃないかな?よく分かんないけど。
幸運なことに私はこの宗教国家を内包する国の生まれであり、家族は農家のおんぼろ馬車でも片道五日くらいのところに住んでるので、ごくたまにですが会いにきてくれる。外部との接触は基本二親等までなんでね。友人とかは会えないんですわ。
自己紹介と状況説明はこれくらいにして、【スィム・スーヤ】の一日の流れを紹介したい。こちらも一日二十四時間ですが、午前と午後ではなく、朝(5:00〜11:00)昼(11:00〜19:00)晩(19:00〜5:00)で七時間、八時間、十時間に分かれています。慣れないと分かりにくいので、地球時間でお送りしたいと思う。
05:00 起床
身支度してお祈り
05:30 清掃
私は自室の掃除くらいだけど、他の人たちは神殿内をくまなく掃除する
06:00 朝食
調理担当の神殿の人たちが作ってくれたご飯を食べる
その人たちの清掃は朝食の後片付けが終わったら掃除になります
他の下っ端役職はローテーションだけど、厨房だけは専任なので、あそこは別のタイムテーブルで動いてる
朝食の内容は質素
今日はスープと薄焼きパン(ナンみたいなの)とチーズとお茶、季節の果物
果物はかかせません
神話に関係するから
神の与える祝福が地上で結実したものと考えられている
06:30 仕事開始
要人から依頼された案件について調べ物
調べたことは紙に書きつけていく
パソコンとまではいかない、せめてスマホじゃなくてタブレットだったらと思わない日はない
腱鞘炎はもれなく魔法で治されるので、エンドレス書き物
私にタイプライターをくれ
09:30 休憩
座ってばっかも疲れるので、外に出てウォーキング
散歩じゃなくてウォーキング
万歩計はないけど、最低でも一日五千歩は歩くようにしてる
魔法で治されちゃうけど、視力のために遠くを見るようにしてる
バチカンと違って(?)緑は多いので景色は目に優しい
10:00 仕事再開
ひたすらサーチ&ライト
サーチライトじゃなくて検索と書き物ってことです
たまに「こんなとっちらかった文じゃ分からん」とかクレーム言ってくるバカがいる
こっちの苦労も知らないでふざけんなタヒね
大体そういう勘違いした輩は次から依頼をお断りする
ミコにはそれだけの立場と価値がある
13:00 お茶
こちらは一日二食文化
三時間ごとに休憩を取る文化もある
お茶受けは雑穀クッキーと果物か果物を使った何かが出る
果物を使った何かの場合、クッキーは省略される
13:30 仕事再開
16:30 夕食
お昼がない(軽い)分、夜は早めの時間に食べる
そして食事の時間が長い
二時間かける
そう言うと地球のコース料理みたいだが、どっちかっていうと自分でよそえないビュッフェだ
大皿に盛り付けられたところから取り分けられる一皿の量が少なすぎる
そしておかわりは不可
要求すると、違う料理が出てくる
神々の恵みである作物だから、いろんなものをちょっとずつ身体に入れるのがよい、らしい
効果のほどは不明
まあ、悪いことではない
ちなみに私はミコなので、自由はないが序列は神殿長を抜いて一番高い
よって、神殿の中で一番初めに食べ始めなければならない
どんなに仕事のキリが悪くても、私が食べ出さないと次に回せない
神殿でも世間でも、こちらの世界で食事は上から下へ下げ渡すものなので
ついでに言うとミコなんて傀儡だから実質NO.2ですらない
一人で食べるのも悲しいのと効率の問題から神殿長のおじいちゃんと食べてる
最近、寄る年波に勝てないのか、誤嚥しそうになるので最早介護である
ここに引き取られた頃はこっそり「おじいちゃん」って呼ぶとニコニコ笑って頭を撫でてくれた
第二の育ての親であるので、介護もやぶさかではない
二時間かけてちまちま食べるのも手持ち無沙汰だし
余談だが、神殿には育ての親が第五くらいまでいる
18:30 進捗報告と翌日の打ち合わせ
第四第五の育ての親であるおっさんと顔を突き合わせて報告
親というより、先生かもしれない
第四の育ての親は作法の先生
第五の育ての親は国語と社会の先生
ミコ付きになると出世の早道なので、彼らは神殿の中ではエリートだ
第三の育ての親は女性神官で、私付きの世話人である
こちらももういい年だし、私も自分のことは自分でできるので、今は違う職務についてる
19:00 入浴
神殿でミコだけは毎日の入浴が許されている
他の人は水浴びしたり、濡れタオルで体を拭くくらい
石鹸は早々に過去のミコによって伝えられたけど、洗髪剤の類はなかなか難しいようだ
特にリンスとかコンディショナーとかトリートメントね
石鹸シャンプーで洗って、お酢混ぜたお湯で中和して、オイルつけるくらいのケアです
蜜蝋と髪にいいオイル混ぜたお手製バームもあるよ、全身使えるヤツ
神殿経由で売っててミコ印でいい収入になってるそうな
あ、発案は私ではありません
20:00 健康観察と治癒魔法
私が治癒される方
疲労回復程度の話
眼精疲労が主
あと腰痛
軽くマッサージもしてくれる
若い女性神官がやってくれる
担当の子の一人が乳がでかくてマッサージ中によく当たる
今も昔も山はなく谷もなく、丘でもないからうらやましい
20:30 夜のお祈り
お祈り自体は決まりきった文句をモゴモゴ言うだけなので即終わる
消灯が21時なので、唯一の自由時間がここ
スマホで動画見たりマンガ読んだり
動画のサブスクは活用しています
〆切近い仕事が終わらなかったときは持ち帰りみたいな感じで自分の部屋で仕事
丸一日の休みは月に一日しかないのはブラックだと思う
21:00 就寝
神殿の消灯時間
寝ずの番の人もいるけど、ミコはそんなことやりません
こっそりスマホで遊んでたりする
日によっては日付変わるまで寝ないでスマホいじってる
見つかると怒られる
以上、こんな感じで毎日暮らしてます。
この世界の宗教はひとつだけ。ギリシャ神話みたいな多神教。でも、宗派が仏教並みにある。というより、土着信仰の神様を取り込んでった感じ。
✴︎
神話の話を少ししてみよう。
原初の神様がこの世界を創って、いろんなものを管理する神様を生み出した。この星は人のために作られた大地で、最高神は自らを模して作り出した人をいたくお気に召し、この星に留まることにした。人のために火や水などの視認できるものの神様と、愛や死という概念の神様のそれぞれを束ねる二柱を置き、下にそれぞれの眷属みたいな感じの神様がいた。
でもコレがまたややこしいんだけど、今の信仰の最高神は原初のかみさまじゃないんだわ。
ある頃、他の世界から(異世界という考え方はある)四柱の神様がそれぞれ異なる世界からやってきた。彼らは原初の神様と仲間たちよりも強く、賢く、彼らに恐れ入った原初の神様は彼らを敬い、自らより上の立場に置いた。
四柱の異界より来たりし神。
獣の神
竜の神
精霊の神
知恵の神
神様同士の話し合いの結果、それぞれの力を持って原初の神様が作り出した世界、特にこの星を発展させようという話になった。ただ、この四柱の神様の中で、一人だけ魔法を知らない神様がいた。とにかく頭のいい神様が知恵の神。神器【スィム・アットゥ・フォン】を使い、人々を上手に導いていく。その代わり、他の神様から魔法の使い方を教わったりする挿話があるんだけどそれは横に置いといて、とにかく知恵の神様の言うこと聞いときゃ大丈夫!って話になり。
現在、最高神と崇められるのは、魔法を知らなかった知恵の神となった。
で、神様たちから見てある程度発展したし、もう直接介入はいいだろうと神界に居を移したけども、人が困ったときに助けの手となるようにと、神器【スィム・アットゥ・フォン】をこの星に置いて行った。
というのが、子どもでも知ってるお話。神器の使い手に関しては「俺が来たんだからそのうちまた現れるっしょ」というお言葉が残っている。
これって、私と違って異世界に転生ではなく転移してきた人がいるってことだよね?しかも地球から。
んで、その人が実在の人物だけど神格化されたってことだと思う。この話自体は出雲の国譲りみたいな話だけど、似たようなことがあったのかもね。
他の三人の異界から来た神様も神器を遺してて、そっちは私みたいな条件なく使える。獣の神と竜の神は武器、精霊の神は絵を見るとどうやらエルフっぽいんだけど自然現象に干渉できるアイテムらしい。その辺は秘匿されててよく知らない。
そろそろ寝なくちゃならないので、今日はこの辺で。五日がかりで夜にちまちま神器のスマホで書きました。書きたいこといっぱいあるんですけど、何日かしたら年一回の顔出しする式典があるのでまた時間できたらボチボチ投稿します。イケメンいないかな。
もし聞きたいことあったら、感想欄に書いてください。余裕があったらお答えします。
あ!あと!知恵の神は日本人だったぽいんで、ここで言わせてください!知恵の神の心当たりがある方、ていうかご本人様!もしこの投稿見つけたら連絡ください!色々聞きたいことがあります!
伝承からなろう詳しそうな感じするんで、ある意味そのための投稿だったりします。私の予想だと無事に地球に帰ったんだと思ってます。そう信じてます。
それでは、今夜はこの辺で。読者の皆様に、よき夜とよき朝が訪れますよう、【スィム・スーヤ】がお祈りいたします。
お読みいただきありがとうございました。
いろいろツッコミどころがあると思いますが、まあ、誰も信じちゃくれないと思うので、大目に見てください。信じるか信じないかはあなた次第。
【追記】
ちょいちょい書き間違えたので直しました。
打ち合わせ中に内職。どうせバレない。