流れ星の願い事
この世界では、夜、流れ星に願い事をするとそれは必ず叶う。
だから晴れた日の夜は誰もが星空を眺めながら眠りにつく。
流れ星は誰にでも平等に流れる。しかし、誰にでも一生でたった1度しか訪れない。
歩いている時、眠っている時、分かっているのは「晴れた夜」というだけで、いつ来るのかは誰にも分からない。
けれど、願えば絶対に叶う。
どんな病も治る。どんな夢物語叶う。
そうして名を馳せた人達がこの世界には稀にいる。
そして私も、流れ星を待ち焦がれる人間の一人である。
生まれつき足の自由がきかず、普段見ている景色はみんなより体半個分低い。
そんな私にも、みんなと同様に見ることの出来る景色がある。それが星空。
この世のどんな場所から見る山々や海、町並みよりも遥かに広く大きくどこまでも美しく続く景色。
いつか見られるかもしれない。
もう見られないかもしれない。
けれど待たずにはいられない。
でも、たまにふと考える事がある。
流れ星は「願いを叶える」事はあっても、「叶えてもらう」事は無い。
誰にも見つからなかった流れ星は、そのまま星空を彷徨う「泳ぎ星」になる。
泳ぎ星になると、輝きを失い、果てのない星空へと静かに、そして溶け込む様に消えてゆく。
反対に誰かの願いを叶えた流れ星は、その身を強く光輝かせ、燃え尽きてしまう。
そこで流れ星は一生を終える。
じゃあ、「流れ星が流れ続けますように」と願えば、みんなの願いが叶うのでは無いか。
そうすれば流れ星だって燃え尽きることなく、ずっと輝き続ける事が出来る。
光無き泳ぎ星になって寂しい思いをする事もない。
そんな事を、ウツラウツラしながら考える時がたまにある。
ある日の朝、田舎のとある病院で、地元、他方、果ては外国のメディアがインタビューをしに来るほどの出来事が起こった。
現代の医療技術では不治の病とされていた難病が治ったというものだった。
その患者は生まれつき足が悪かったが、朝目を覚ますと、自由に歩けるようになっていたのだと言う。
「あぁ。そうか、私も結局。」
読んでいただきありがとうございます。
かなり短いものではありますが、初めて小説を書きました。
これからもたまに書きます。