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3.

どう考えてもおかしい婚約破棄だけど、学生ばかりとは言え貴族が集まる公の場での宣言に加えて聖女迫害の冤罪を着せられているこの状況。今後貴族社会で好奇の目に晒されるのは間違いない。


「このまま婚約解消が確定しても、他の誰かと結婚するのは難しいでしょうね。まぁ、元から結婚に夢なんて見ていないからいいのだけど。どこかに勤めに出て自立の道を探りたいわ…」

「お嬢様は優秀ですし、何事にも動じないところがおありですから、どこででもやっていけますよ」

「気がかりなのは、私の罪状が”聖女様を虐げた”ことになってる点よね。それを鵜呑みにされたら、どこにも雇ってもらえないんじゃないかしら」


どんな道を目指すにせよ、身の潔白を証明しておく必要がある。やっていないことを証明するのは案外難しいもので、万が一聖女様が「あの人にいじめられてました!」と言い出したら絶望的だ。


「聖女様とは大勢がいる場で数える程しか会ったことがないし、あんなお可愛らしいお嬢様をいじめる理由がどこに…?確かに美少女の泣き顔からしか得られないモノはあるけれど、そのために相手をわざと傷つけるなんて言語道断よ。淑女の風上にも置けないわ」

「どちらかというと淑女は裏で相手を悪く言って蹴落としたりするものでは?」

「私の周囲にはそんなお方はいないわっ!!みなさんとっても優しくて天使のようなのだから!!!!」

「それはまぁよいのですが、殿下は本気でお嬢様が聖女様を虐げたと思っているのでしょうか」

「どうなのかしらね…。あぁ、こんなことになるなら私もローゼマリー様のお輿入れに同行したかった…!愛されて心からお相手に望まれて幸せいっぱいに嫁がれるマリー様の最高に輝いたお姿を見たかった!!!」

「婚礼の衣装合わせに同席して感激のあまり号泣していましたものね、お嬢様…」


ぐだぐだと文句を垂れていたら、コンコンとドアを叩く音がして執事のジェイムズがやってきた。


「失礼します、お嬢様。大変急なことではございますが、ご来客がお見えになっています」

「ありがとう、ジェイムズ。遂に修道院の受け入れ準備が整ったのかしら?」

「そのようにも見受けられますが…とにかく早急にいらしていただければと」

「早急に?わかったわ」


なんだか歯切れの悪い返答だが、他に来客の心当たりもない上に恐らく公爵邸への出入りは殿下の手の者に監視されているので、疑問に思いながらミリアを伴い客間へ向かうことにした。


◇◇◇


客間へ向かうと、法衣を纏った男性が待ち構えていた。


「突然の訪問失礼いたします、ディアレイン・ベスター公爵令嬢。さるお方の命により、お迎えに上がりました」

「あら、ローハルト殿下からの命ではないのかしら?修道士様」

「この屋敷の出入りは監視されているので念のためこのような偽装をしておりますが、俺は修道士ではないんですよ。詳しくは後程ご説明しますので、ご同行いただけないでしょうか」


この局面で、殿下の関係者以外で私に接触してくる人物に心当たりがまったくない。学園で親しくしているご令嬢方が救いの手を差し伸べてくださった可能性はあるけど、第一王子殿下の意向に逆らってまで私を庇ってくれるとは考えにくいし、もしそうだったならあまりにもお互い危険すぎるので同行するのは辞退したいところだ。どうするか考えあぐねていると、法衣の男性がニコリと笑ってこう続けた。


「あなた様なら、これを見せればわかってくれるはずだと聞いております。どうか、一緒に来ていただけますか?」

「それは…」


その手にあるのは気高さを感じる高芯咲きの白薔薇。大好きなあの方との思い出の、大切な花。


「あのお方が、この国に戻っているのですか…?」

「えぇ。本当は自分が迎えに行きたかったと最後まで不満げでしたよ。あなたにとても会いたがっています」

「すぐに支度いたします!少々お待ちください!!」


白薔薇を見たミリアも察してくれたようで、ジェイムズと共に出立準備を整えてくれてすぐに出ることができた。


あぁ、直接お会いできるのは実に二年ぶり!私の女神様!!

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