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20話:少年はフードが必要不可欠

少年―――いや、少女がフードを取ると現れたのは、中性的な銀髪美少女だった。

狐になる前なら一目惚れしていたかもしれない。


てっきり男かと思っていたため、声変わりしてないから13、4ぐらいだと思っていたが15は絶対にある。俺とあまり変わらない。


「お前、俺とあまり年変わらなくないか?」


「いや、え? 反応それ?」


「反応すること他にあったか?」


崩れ落ちそうな感じで、驚くが俺にはそれしか言うことがない。

だって、狐になったせいか恋愛感情が気薄になっている気がして、性別に関心があまり無くなってしまったんだ、しょうがない。


「ああもういいや、僕がお兄さんって呼んでいるのはその仮面で顔が見えなくて年が分からないからだよ! だからその仮面外して」


投げやりな感じで言ってきた。


「絶対無理」


「いや違うんだよ、べつに無理やり外して貰おう思ってなくて·····ごめん」


できるだけ嫌そうに言うと、申し訳なさそうに言われた。こっちが申し訳なくなるほどだった。

俺そんなにきつく言ったか? 確かに今後そんなこと言われないように、できるだけ嫌そうに言ったけどこんなに落ち込ませる気はなかった。


「あー、そんなことよりさ、さっきの金貨で俺が信頼ができるとか言ってたのなんでだ?」


気まずくなって、話題を変えた。


「あぁ、あれはね信頼の金貨って言ってね、表裏当たればその人は信頼できるって魔神具だよ」


「魔神具?」


「知らないの? 魔神から得られるエネルギーで作った道具だよ」


え? 何その便利な魔神。


「おーいたいた。て、おい! 何フード取ってんだよ!」


扉からさっきの門番みたいな鎧を着けている40代くらいの筋肉モリモリのおっさんが入って来て、俺に持っていた槍を向けてくる。

顔を見られても平気そうなのを見る限り、この人が門番長なのだろう。


「大丈夫だって、信頼の金貨をこの人は当てたんだから」


「あれを当てれたのか·····ならいいか。兄ちゃん悪かったな」


「え、ああはい」


よく分からないけど、助かった。

てか信頼の金貨ってそんなに信じていいの? 俺スキル使って当てちゃったよ。大丈夫?


「じゃあ街に入っていいぞ」


「ありがとねー」


「めんどくさいから、俺の仕事あまり増やすなよ」


「はーい」


俺も着いて行こうとしたら門番長に止められた。


「兄ちゃんはちょっと待ってくれ」


「仮面は取りませんよ?」


「それはいい。なんなら俺がいる時なら、顔を見せなくても通してやる」


「いいんですか!?」


「あぁ、こういう時に使うのが権力ってもんだ。それよりな、あの子についてどこまで聞いた?」


「男のふりしているってだけですけど·····」


それも聞いた訳ではない。多分そうだと思っただけだ。


「そうか、それならいい。あの子はな、良い家のお嬢様なんだ。そして、その良い家の次代に小さい頃に選ばれて、嫉妬をずっと受けてきた。そのせいか周りから受けている感情の種類がある程度分かるんだ」


「お兄さん何してるの? まだ?」


「お嬢のお兄さんは検問を受けているから外で待っとけ」


フードの少女―――いや、なんか話の流れ的にバレたらやばそうだから少年だと思って接しよう。フードの少年が扉を開け、部屋を覗いてくる。


「早く終わらせてねー」


少年は扉を閉め、どこかに歩いていった。


「あぁ、俺はお嬢の家の騎士だったんだよ。ま、規律が厳しすぎて辞めたがな。それでな、お嬢は周りからの感情が分かるせいで、あーなんて言うんだろうな、人間不信? てやつになってしまったんだ。だから、信頼できるやつは本当に貴重なんだ。少ない時間だろうけどお嬢の遊びに付き合ってくれないか? ちゃんと報酬は出す」


「まぁいいですけど·····」


「おお、本当か! ありがとう!」


あの少年の身の上話を聞いて、俺にも何かできないだろうか―――と思ったわけでは微塵もなく、報酬のためだ。

俺は悪人ではないと思うが、善人でもない。数分前に知り合ったやつのことなんて知らん。


なんなら、そんなお嬢の遊びに付き合わずにこの街を観光したり、ルナにこの世界を教えて貰ったお礼として魔剣を見せるため、冒険者になったりしたいのだ。


だが、お金がない。ルナには感謝しているが、お金と武器を渡してくれなかったことは恨んでいる。

こっちは魔剣を見せてあげるつもりなのにその為のお金も武器もくれないなんて、どこかのRPGの王様みたいだぞ。


まぁ、つまりお金を得るためにお嬢の遊びに付き合うんだ。


「門番長、ファセリア家の方が来ています」


部屋の外から俺の対応をしていたと思わしき門番の声が聞こえる。

ファセリア家はどこかのさっき門番長が言ってたみたいな良い家なのだろうか。


「あぁ、くそ。またあのわがまま坊ちゃんか」


どうやら良い家の坊ちゃんみたいだ。門番長の発言を聞くに良い人ではないようだが。


「兄ちゃんお嬢のこと頼んだぞ」


門番長は取調室みたいな部屋を出ていった。わがまま坊ちゃんの相手をしに行ったのだろう。

てか、俺勝手にここから出てっていいんだよな? もう出たけど。


部屋から出ると、これまた質素な石壁の通路が現れる。


「お兄さんいたー!」


縄でぐるぐる巻きにされている少年が声をかけてくる。


「お前もこいつの仲間か、抵抗するなよ」


少女を縄でぐるぐる巻きしたであろう門番が俺も縄で巻き出す。


「いやいや、ちょっと待ってくれ。俺は何もしてないぞ?」


「じゃあなんでこんな所にいるんだよ」


「そりゃあ、門番の人にあの部屋に連れてこられたからだよ」


自分がついさっきまでいた部屋を指差す。


「連れてきた門番はどこ行ったんだ?」


「門番長に俺たちを任せてどっかに」


「門番長には部屋を出る許可を貰ったのか?」


あれ? 貰ってないな·····


「着いてこい」


口論が終わる頃には縄は巻き終わり、少年と同じぐるぐる巻き状態になっていた。

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