9.誘拐
横たわるゴブリンに拐われそうになっていた人。よくよくみれば小さな男の子。
暗闇であまりよくわからなかったですが、お子様でしたのね。
「あの、おきてくださいまし」
眠るというよりショックで意識を失っている感じですわね。
これはしばらく起きないかも。
「アリメ」
「ん、なんですの」
「さっきのはどうやったんだい? 一瞬でナイフを奪ったのは」
「ああ、あれはですね、私の首を過ぎた時にナイフの柄に【死神の左手】で触れたんです」
「ナイフの柄に? 触れてどうなったの?」
「私のこの【死神の左手】が奪える命は、生物だけではないということですわ」
「......どゆこと?」
小首をかしげジト目でこちらを睨むチェシャ。
「ナイフの【命】を奪いました」
「!?」
む。睨む目つきがもっとキツく......ここはもう少しわかりやすくいきましょうか。
確かに、冷静に考えれば意味不明な事を言ってますものね。
反省ですわ!
「ナイフの命、即ち存在価値の話になりますわ。 ナイフの命を奪うということはその存在を消してしまうということ......なのでナイフ自体が消えたのです」
「ええ、無茶苦茶な......」
「私も最初この現象を見たとき意味がわかりませんでした。 ちなみにあなたの命を奪ったときに遺体が残ったのは、その遺体には他の役割があったからですわね......生物の死体は他の命を生みますから」
「あんまり腑に落ちないけれど、そうなってるんだからそうと納得するしかないのか......複雑だにゃ。 って、それじゃあ君が彼のナイフを持っていたのは?」
「あれは簡単な話ですわ」
チェシャは魂を遺体に戻すことにより、命が再び宿った。
「あのとき、あなたが生き返るのをみて思いついたのです。 命を戻せばナイフとしてまた顕現するのでは無いかと......やってみてふつーにナイフが現れてビックリでしたけれど」
「君は......凄いね。 今まで僕が見てきたどのヴァンパイアよりも」
「ふふっ、そんなにお褒めにならないで」
若干チェシャの笑顔が引きつっている気がしますが、細かいことは気にすんな!の精神で「褒められた」という事実の美味しいとこ取りです。
これが強く生きるコツですわ。
......いや、まあ、【死神の左手】の能力は正確なところわからないので、その認識であっているのかどうかは微妙なところですが。
消えたからそういうことじゃね?という結果論ですわね。
「そんなの、それじゃあ......君の左手は、武器収納し放題じゃないか......」
「!!」
武器を収納し放題!?それだ!!我が愛猫ナイスアイデア!!流石できる子!!と内心考えていた時でした。
「ん......あれ、僕......ここ、どこ?」
怯えたような声の男の子。目を覚ましたようで、あたりを見回し、不安げな表情を浮かべています。
ふふっ、可愛らしい。
「え、お、おねえちゃん......が、僕を......?」
「ええ、そうですわよ」
ぽんぽんと男の子の頭を撫でる私。くせっ毛なのか彼の頭は、ふわふわとしておりますわ。
そして男の子は上目遣いで言いました。
「うち、貧乏だから......僕を誘拐しても、意味ないよ......?」
おほほほ。これは完全にやべえ勘違いのされ方をしてますわね。
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