7.おゴブリン様、ですわ!
「ところでアリメ。 その服も着替えたら?」
飛行訓練をすること三十分が経過した頃、私はわりと自由に飛び回ることが出来るようになりました。
しかし、その代償は大きく、練習でそこら中に衝突し転げ回ったせいで、衣服は破れボロボロに。
「そうですわね......しかし、着替えなんてありませんし......近場の町か村で買わなければなりませんね」
「いや、君その格好で買いに行くのかい? そもそもお金ないんじゃないのかにゃ?」
......ジ・エンド。
「ど、どうしましょう」
「どうもこうも、君には強大な魔力があるだろう。 それを使えばいい」
「魔力をつかう?」
「その翼のように衣服も具現化すればいいのさ」
「そ、そんなことができるんですの?」
ちょいちょい、と前足で私の翼を指すチェシャ。
確かに、飛べる翼なんてものを作れたのだから、洋服だって作れても不思議は無い。
「......イメージ、ですわね」
「うんうん」
目を閉じ、洋服を想像する。
「あ、ひとつだけ注文あるにゃ」
「? なんですの?」
「あまり明るい色にはしないでほしい。 空飛ぶとただでさえ目立つからね......」
「わかりました」
であれば、シンプルに黒にしましょう。
自然と溢れ出した魔力が、体中を覆い出す。それがゆっくりと衣服の質感に変わり、私は目を開けた。
「できましたわ」
「おお、すごいねえ」
黒のドレス。
「けど、スカートは動きにくくないかにゃ?」
「どうしても、こう、私が着るとなるとイメージが......」
「まあ、良いか。 それじゃ目立たない夜のうちに出来るだけ彼女の町を目指そう」
「わかりました、いきましょう!」
◆♢◆♢◆♢
月の光を背に浴び、空中遊泳。
(......これは、気持ちが良いですわね)
まさか空を飛び回れる日が来るだなんて。
息苦しいお屋敷から出られたのもあるのでしょうけど、この開放感は何にも代え難いですわ。
「アリメ......誰かいるよ」
「ん? あらまあ」
下の方を見ると、三匹のゴブリンがひとりの人を担ぎ運ぶ姿が。
ゴブリンは初めて見ましたわね。って、あれ......これ。
「チェシャ、彼らは何をしてるんですの?」
「え、見ればわかるでしょ。 食糧運んでるんだよ」
「食糧?」
「あの人間」
「あーあ、なるほど」
いや食糧人間かーいっ!!
「アリメ!?」
「助けます! あなたはそこに居て!!」
翼を折りたたみ急降下。手前に居たゴブリンを蹴り飛ばし、ズザザザと着地。
「その人を開放していただけませんか、おゴブリン様」
いや、おゴブリン様てなんですの。
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