表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

太陽のような瞳の美少女2

本作は、少し前に日間ランキング2位・月間9位をいただきました「あるギルドメンバーの遺書」という短編 https://ncode.syosetu.com/n4695hi/  

と、その短編シリーズ https://ncode.syosetu.com/s9750g/


の続きになります。

単体でも楽しめるようになっている作品ですので、お気軽にお楽しみください。


※短編シリーズ八作全作品、日間ランキングに同時掲載されました。ありがとうございます。


 

 汽車の車両の窓と、隣の車両の窓の間は約二メートル。

 全然いける。余裕だ。

 幸いなことに、汽車の煙はここまで届いてはいない。風が上向きに吹いているからだ。

 窓枠から外に出て、下の方にあるパイプに足をかける。パイプのすぐ下では車輪が踊り狂っていて、少しでも足を踏み外したら私がアウトだ。

 まあそんなことはないわけだけど。


「おい! 生きてる!?」

「ああ……もうダメ……もう死ぬんだ私……パパ、ママ……先立つ不孝を許してね……」

「諦めるなっての!!」


 少女は窓枠の一か所に右手でどうにか掴まっていたが、今にも指が離れそうだ。すでに四本。今、三本になった――もう少し持ってくれと思いながら、窓枠に到着する。

 少女はそこでようやく私の存在に気付いたようだった。


「え!? ちょっとなにしてるんですか!?」

「なにしてるはこっちの台詞なんだよっ」


 ガシッと彼女の腕を左手で掴む。私自身はバランスを取りつつ、右肘を窓に叩き込んだ。


「ちょっ、危ないですよ! ガラス割れますよ!?」

「今それ言ってる場合かなぁ!?」


 二回、三回目でガシャンと割れた。私は彼女の腕を握りながら、窓から車両にすっと入り込む。

 窓は割れたばかりだから結構危険な状態だが、そういうことを言っている場合でもなかった。

 美少女は体勢があまりよくない。右腕だけを私に取られているから、バランスがよくないのだ。足もとはおろそかになっているだろう。


「下気を付けてね。車輪に足取られたら死ぬから」

「ええ!? 嫌ですまだ死にたくない!!」

 

 涙目の美少女。


「だって私まだ何もできてないのにっ……!!」


 そして彼女は自分で上がってきた。窓枠を掴み、割れた窓から車両に入ってくる。

 ふわりとしたワンピースが少し窓を引っかけたが、気にした様子もない。衣装は綺麗なのに、彼女は気にしていないようだった。


 車両の席に無事座り込むと、彼女は大きく息を吐く。


「はぁ……死ぬかと思ったぁ」

「あのねぇ」


 鈴を振るような声。可憐な容姿。誰もが放っておかないだろう美少女は、安全地帯に逃げて安心したのかにこりと笑う。

 生命力を感じさせる笑みだった。


「ありがとうございます。助けていただいて。はぁもうほんと死ぬかと思いました」

「なんで風で飛んできたりしたのさ。魔術使えないなら駅に居ればよかったのに」

「だって、これが最後の汽車だと思ったので……」


 それで走って来たらしい。

 まあ気持ちはわからなくもない。多分あの街から出る最後の汽車だから。

 ブレスワルド中央街まで徒歩で行くと、一週間くらいかかる。


「まぁでも、結果的にはよかったね。乗ることはできてさ」

「はい! 結果的に上手くいったからまあよかったかなと思います!」


 彼女は明るく笑って答えた。今死にそうになったのに、呑気なものだ。

 私がただのどこにでもいる女だったらどうするつもりだったのか。


「そういえばクールタイムってなんだったの?」

「あ、それはですね、魔術を使ったあと次が使えるまでの時間のことを言うんですよぉ。ちなみに私は五時間経たないと魔術使えないです」

「それであんなことしたわけ!? バカかな!?」

「反論できないですね!!」


 あははと笑う少女。

 随分呑気だな。今死にそうになったのに吞気なものだ……


「あ、申し遅れました! 私、ルチアと言います。魔導師でーす。よろしくお願いします!」

「あ、ああ……私はシャロン。よろしくね」

「はい! 宜しくお願いします!!」


 声がでかいなと思った。

 表情がくるくる変わる子だ。ペースを乱される。

 と思ったら彼女は囁くように声をかけてきた。


「あのう……シャロンさんって、ひょっとして冒険者の方なんですか?」

「え?」

「だって凄く力とか強いなって思って。こんな汽車の外でも動けるのも凄いですし」

「あ……ごめん、痛かった? ちょっと手加減してる暇なくて」

「いえいえ! 寧ろ安心しましたよ!」


 ルチアはぱん、と手を顔の前で合わせる。


「それに、旅の仲間が出来てとても嬉しいです。宜しくお願いしますね!」

「ああ、うん――よろしくね。ルチア」


 私はあまり他人に興味がないから、その程度しか言えないけど。でもルチアは花のように笑った。


「言いたくなきゃ言わなくてもいいけどさ。ルチアはブレスワルドになんの用事があるの?」

「え? ブレスワルドってブレスワルド中央街ですよね? なんでその名前が出てくるんです……?」

「なんでって。この汽車がブレスワルド中央街行きだからだけど」

「え!?」


 ルチアは目を丸くした。


「ミズーリ地区行きじゃないんですか!?」

「ミズーリ地区って、グレーンゾーン地区より東の極東……?」


 私達が乗っているのは東から中央に向かう汽車。極東に向かう汽車は反対側――


「反対側だけど大丈夫?」

「ええ!? 反対っ……ちょっと待っ……あ、あのぉ! おろしてください! 一旦おろして……」


 そう叫びながら先頭車両に向かおうとする彼女に、思わず笑いが漏れてしまった。

 とりあえず、中央街までの三時間は退屈しなさそうだ。

 彼女には悪いけれど。








お読みいただきありがとうございます。


面白かったと思っていただけたら、画面下部の☆☆☆☆☆を星で評価いただけると作者がとても喜びます。

たくさんの読者の方に作品をお届けしたいため、もし評価いただけたらとても嬉しいですm(_ _)m


今後作品を作っていく上での大きなモチベーションにもなります! 

また、ブクマしても良いぞ、という方がいらっしゃいましたら是非いただけると幸いです。


これからも作品づくり頑張ってまいります。


よろしくお願い致します。


※次は7/15の夜か7/16の朝です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押していただけると作者への応援になります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼▼▼元々の短編こちらです。是非どうぞ▼▼▼

あるギルドメンバーの遺書


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ