4.婚約
「「…………」」
噴水のそばの花壇には、チューリップのような可愛い丸みを帯びた鮮やかな花が咲き目を楽しませてくれる。そんな中を私達は無言で歩いている。
照れ隠しに握られたままの腕が痛い。
「…………お前、なんで僕ともっと話したいなんていったんだよ」
「? わたくし、おなじとしごろの子とお話するの、はじめてですの。だからお友だちになってほしいのですわ」
君は理想の男性かもしれないしね!!
「な……っ 僕はこんなみにくい姿をしてるんだぞ!? ともだちになんてなったら、お前がへんなめでみられるかもしれない……っ」
「みにくい?」
君、将来すごい美人になりそうだけど!?
「ぁ……みにくいっていうのは、ようしがととのってないっていう事で……」
いや、それは分かってる。てか可愛いなこの子。やっぱり理想のワンコ系イケメンだ。
「わたくしにはルドルフさまがみにくいとはおもえませんわ」
「っそんなわけない!! お前はキレーだから、僕をバカにしてるんだろ!」
「そんなことありません」
君の方が比べ物にならないくらい綺麗です。
「だ、だったらお前は僕とけ、ケッコンできるのかよ!?「できます。むしろしたいんですけど」え……」
しまった!! つい食い気味に本音が出てしまった。ルドルフ君がドン引きしてるじゃないか。
「しつれいいたしました。ですがわたくし、ルドルフさまのことをこのましく思っておりますのよ」
「なんで……? 会ったばかりなのに……こんなにみにくいのに……」
瞳をうるうるさせて、ふるふる震えながらこっちの様子を伺ってくるとか……かわいすぎる!!
「ルドルフさまはみにくくありません。わたくし、ルドルフさまのようしもだいこうぶっ……ゴホンッ だいすきですもの」
「ほ、本当に……?」
「はい。ひとめぼれですわ!」
「ひとめぼれ? ひとめぼれって何だ?」
「ひとめぼれとは、ひとめみたその時から、あいてをすきになることですわ」
「っ……お前は、僕にひとめぼれしたのか?」
「はい」
「っ……ぼ、僕も……」
ルドルフ君が真っ赤になってもじもじしている。その姿は妖精のように愛らしい。
「僕、も……お前にひとめぼれした」
その瞬間、私の頭の中で鐘が鳴り響いた。
◇◇◇
「あら〜! お手々繋いで帰ってくるなんて、可愛らしいわ!」
夫人が母との会話を中断してこちらへ笑顔を向けてくる。可愛いカップルねと微笑まし気にからかってくるのだが、さっき両思いになりましたとドヤ顔で答えたい。我慢するけどね。
「母上、僕たちケッコンします!!」
あ、ルドルフ君が言っちゃった。
「え? あら、まぁまぁまぁ!! ソフィア聞きまして!」
「ええ。聞こえておりましたわ」
夫人の驚き上げた声に、母がニコニコと返事をする。そしてその優し気な瞳をこちらへ向けた。
「僕たち、おたがいにひとめぼれしたんだ!! クラウス公爵夫人、おねがいします。ユーリとケッコンさせてください!!」
ふぉ〜!! プロポーズ通り越して親に挨拶しおった!! ルドルフ君男前!!
「きゃ〜!! ルドルフったら将来絶世の美女間違いなしのお嫁さん、見つけちゃったのね〜!!」
公爵夫人、喜びすぎて言葉遣いが崩れてますよ。
「ルドルフ君、ユーリを好きになってくれてありがとう。そうねぇ、あなたが大きくなって、色んな人と出会って、それでもまだユーリの事を好きで居てくれたなら、ユーリも同じようにあなたを好きでいたなら、勿論結婚を認めますよ」
「すぐにケッコンできないのですか? でも、それだとユーリをだれかに取られてしまう!」
瞳に涙を溜めて俯くルドルフ君もしょげたワンコのようで大変可愛らしい。
「それならユーリちゃんと婚約すれば良いのよ」
夫人、最高のご提案ありがとうございます!!
「コンヤク??」
ルドルフ君は婚約が何なのか分かっていないようで首を傾げているが、その時私は心の中で、します!! 婚約します!! と叫んでいた。
それに、忘れかけてたけど、ルドルフ君と婚約すれば王子と婚約する事もなくなる。悪役令嬢フラグを折る事も出来、理想の人と婚約も出来て一石二鳥だ。
「それは良い案ですわ!! ユーリちゃんはどう? ルドルフ君と婚約する気はある?」
母がウキウキした様子で私に問いかけてくる。
「コンヤクとは、ケッコンのやくそくをするということでしょうか?」
ルドルフ君も知らない“婚約”という言葉を私が知ってるのはおかしいだろうと考え、誤魔化しながら母を伺う。
「ええ、そうよ。結婚の約束とは言っても、ルドルフ君やユーリちゃんに他に好きな人が出来たら無くなってしまう約束だけれど……「僕はほかに好きなひとなどつくりません!! ユーリだけをずっと好きです!!」フフッ ユーリちゃんは素敵な人を見つけたわね」
「はい! わたくし、ルドルフさまとコンヤクします!!」
こうして、私は理想のワンコと婚約しました。