6振目 ~装甲竜アンキロプス~
更新遅くなりました!
どうぞ、ご覧下さい!
ヨシオこと田尻吉雄 24歳
元賭博癖のニート
現勇者
彼は今まさに、突如として転移したこの世界で初めての(?)仕事に取り掛かろうとしていた...
この世界の馬に当たる動物、バロの引くバロ車に村人を全員乗せ、荒野と化した村から遠ざける。
次第にバロの蹄の音は小さくなっていき、聞こえるのは吹き抜ける乾き切った風の音と、砂が舞う音だけ。
その殺伐のした風景の中で、ヨシオを初めとした一味はただ、横に並んで前を向いているだけだった。
「全く、ヨシはお人好しアル。 村の人たち逃がすのに、我達のバロ車まで使っちゃうなんてナ? お前、もし、万が一、我達が死にかけたらどうするアルか?」
ユイエンはいつもの調子で面倒臭そうに地面に転がる小石をつま先で蹴り飛ばして言う。
「...まあ、ユイエン氏。ここに村人の皆さんがいたところで、我々の闘いに支障を来すのは確かです。今回ばかりは、ヨシオ氏の判断に賛成ですよ。」
「そうねぇ? まあウチらならちょちょいのチョイで片付けられるでしょ? 星三モンスターくらいさ?」
「それはそうと、そのアンキロプスとやらはどこから湧いて出てくるんだ? 討伐に来たとはいえ、姿を見せないことには倒し用がないだろ?」
他の3人もいつもの調子で淡々と自己主張をかまして行く。
退路がない状態での彼らのこの無神経な態度...余程腕に自信があるのだろうか?
「ま、まあ、バロ車の件は俺が提案した訳だが...お前らと一緒だから安心したのかな~なんてな!はははは!」
転生しても、魂胆まで変わるってのは虫のいい話らしい...
この状況で、当の本人が生きて帰るか否か賭けている...とは、彼らの前では口が裂けても言えないのであった...
「...はぁ。仕方ないアル。誰かさんのお遊びに付き合ってやるがヨロシ。その代わり、買ったら財布の中絞り切ってやるネ。そこんとこ、肝に銘じるアル。」
ぎくっ......!
ヨシオは以外にも以外過ぎるユイエンの反応に思わず硬直してしまった。
(何だ?その言い方は!? まるで、まるで...
俺の考えが、全部お見通しみたいじゃないか...)
「まあ、そうだな。こいつが突飛なことを言い出すのは日常茶飯事な訳で、大概こういう時1番楽しそうにしているのはヨッシーだしな。こいつのわがままを聞いてやるのが、許嫁...ゴホン! パーティの戦士として私が成すべきこと!」
「全く...この間のマッスリラ討伐だって、僕らと行けばあんな目には合わなかったでしょうよ、はぁ...。何故に死に急いでいるのか知りませんが、僕らまで巻き添いにされると困るんですよね。命は大事なんですから...」
「ヨシオ、何何? これ終わったら奢ってくれんの!? だったらミコりん、超頑張っちゃおうかな~? 」
(うっわ、自分から危ない目に会いに行って興奮してんでしょ?ホント無理!コイツだけはホントに無理~!! )
ヨシオは、目が点になっていた。
ヨシオは信じられなかったのだ。自分が考えていることが、パーティの面々にモロバレしていること...にではなく
「お前ら...そう分かってるくせに、よく俺みたいなやつと一緒に戦ってくれるな?」
不意に、そのフレーズが口から漏れてしまう。
それを聞いた4人は顔を見合わせ、眉を八の字にした。
「「「「そう思うなら今すぐやめろ!」」」」
◇◆◇◆◇
......ゴゴゴゴ......
荒れ果てた農村に響き渡ったのは4人の盛大なツッコミだけではなかった...
まるでそれに呼応するかのように、地面から何かが這い蹲るような音が辺り一面を覆い尽くした。
「...! な、何だ!? 地震か!? 」
と、ユイエンは何やら地面に耳をあて、右手の拳を強くにぎりしめた。
「...これ、地震違うアル...。アレが来るネ。皆、準備するがヨロシ。」
アレ...。今回の件で、ユイエンがアレと言うのは1つしかない...
「...! ヨッシー! 私のそばから離れるな...
来るぞ、アンキロプスが...!」
捕獲難易度★★★
装甲竜アンキロプス
突然、村の生命線であっただろう、広大な畑に、現実世界では見たこともないような巨大な亀裂が入る...
地割れだ...!
「皆、伏せていてください!」
ヘンリーの呼びかけとともに、ゴツゴツとした鎧のようなものが亀裂の中から現れる。
その巨大な体に不釣り合いな小さい頭の両側には、見ているだけでも体を引き裂かれそうな鋭い目が付いている。
丸っこい体は背中が亀のように硬そうな鎧で覆われていて、そこから生える長い尻尾の先には小さなハンマーのようなものが付いている...
おまけに、どっしりとした足が付いており、四足歩行でゆっくりと亀裂の中から這い上がってくる...
ヨシオはこのモンスターのビジュアルに、微かな記憶があった...
何だろう、小さい頃にどこかであんなの見た気がするんだけどな...
そう考えてる間にも、アンキロプスは亀裂から這い上がったかと思うと、畑に残っていた野菜を端から貪り始めた。
「何ぼーっと突っ立ってんのよ!アレが今回のターゲットでしょ!? リーダーのあんたが指示を出すの! さぁ、何すればいい!? 」
ミコの言葉に我に返るヨシオ。
そうだ、そんなことは後で考えればいい...
今はあの害獣を倒すことだけ考えるんだ...!
...とは、言ったものの...
正直、ヨシオには8m弱の鎧で覆われた化け物をどうにかする策を思いつくことが出来ない。それはそうだ。つい最近までただのギャンブラーだったのだ。ヨシオはいきなり戦地に駆り出されて銃を抱えて走る兵隊の気持ちが初めてわかった気がした...
考えても無駄だ...!化け物であれ、何であれ、殴る蹴るでいつかは静まる...!そうでなくては困る...!
「...全員、俺にお前らのありったけを見せてくれ!」
これが、ヨシオの指示だ...
「「「「あい、リーダー!」」」」
と、その支持の瞬間、4人はあっという間に姿を消した!
「は!? お前ら、どこいった!?」
「やい、化け物!私の美貌を前にしても、畑の作物が気になるかしら?」
と、いつの間に移動したのか、何の装備も施していないミコが、アンキロプスと対峙しているのだった。
その距離、わずか1mほど...!
この距離で突進でもされようものなら一溜りもない...!
と、その心配には至らないようだ。アンキロプスはと言うと、ミコには見向きもせず、ただひたすらに作物を喰らい続けている。
「何無視してんのよ! もういいわ! 戦うアイドルの力!見せてやろうじゃない!」
と、ミコはポケットから何やら杖のようなものを取り出した...
よく見れば、それはよくおもちゃ屋に売っている女の子用のプラスチック製の杖だった。
あいつ、ふざけてんのか?
「さぁ、変身よ!私の美貌で、恋焦がれるがいいわ!」
「ラブリ~ファイア~!チェーンジ・オン!」
どこかで聞いたことのあるような掛け声のあと、ミコの体がピンク色の炎に包まれる。
アンキロプスは、その現象に戸惑っているようで、ミコの方を凝視していた。
「(くそ)ヨシオと旅して1年!私は戦場で燃える桃色の炎!私は戦うアイドルミコリン!
又の名を...ピンキーフラム!」
訳の分からない掛け声のあと、ピンク色の炎の中から再びミコが現れた...
女児アニメのヒロインみたいな、フリフリの格好で...
「...あんなもん、需要もクソもねぇだろ。アンキロプスだって、別に気に止めや...」
しねぇ...と言いかけたところでヨシオは口を噤んだ。
動かない...いや、動けないのか?
アンキロプスは作物を食べるのを止めるどころか、ミコの方を凝視したまま、体を全く動かそうとしない...
どうなってんだ?
「時間稼ぎ、ありがとうございます、ミコ氏。お陰様で、アンキロプスに術式を刻むことが出来ました。まあ、基本的な停滞魔法ですが...」
と、丁度アンキロプスの腹部の下、地割れがある場所からヘンリーのものと思われる声がした。
「...ふん!私の華麗な変身を、単なる引き立て役に使うなんて、ミコ、超機嫌損ねた~!」
「今回は、それが一番手っ取り早かったんですよ。現にほら、お二人の仕上げの準備が整ったようですよ? 」
と、何かが空を切る音がする
3人は上空に目をやった
「この高さからの私の斧、そんな甲羅じゃ防げないだろ!」
「卵潰しより楽な作業アル。」
アンキロプスの直上では、ヨシオのパーティのパワーアタッカー2人がロックオンを決めていた!
ヨシオは今まで半信半疑だった。自己主張が強くて、個性豊かで悪くいえばまとまりのないこの面子。本当に勇者のパーティとしてやっていけていたのかどうか...
そのような心配は不要だった。むしろ、ヨシオの予想とは真逆のものだったのだから...!
「お前ら...やるじゃねぇかよ!」
「天空を裂く戦斧〈エアドーレ 〉!」
「十二龍拳奥義 裂空」
ルージュの戦斧と、ユイエンの掌底が空を引き裂き、アンキロプスの装甲にめり込む
ドゴオオオオン!
派手な音ともに、2人は再び空に飛び上がり、ヨシオの両脇に華麗に着地した。
「...今夜、空いてるか? ヨッシー♡」
「...肉まん奢るアル。ヨシオ」
作者の好み全開でごめんなさいww