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5振り目 ~HEROS:Bet5lives~

「…ん?」


 ヨシオは夢を見ていた


 そこは生前、彼が過ごしていたアパートの一室でソファにどっかりと座り込み、彼はいつも通り上下ジャージ姿でビール1L缶を手に、テレビを眺めている…

 時間は夜の0時頃だろうか…

 部屋の明かりはついておらず、テレビの明かりだけが彼の顔を照らしている


「…俺…悪い夢でも見ていたのかな…」


 その夢があまりに現実味があったせいか、ヨシオは現実と夢が反転してしまっていたのだ。



 と、ヨシオは腹に違和感を覚えたので、恐る恐る下を向く…



 するとどうしたことか、彼の腹には深々と出刃包丁か突きささっているではないか。

 しかし不思議なことに、腹から血は一滴すら流れていない。


 この状況に困惑するヨシオに、さらに追い打ちをかけるような出来事が起こる…



「先輩…ご無沙汰っす。どうすか、元気にやってますか?」



 彼の隣には、彼が一番かわいがっていた、そして、彼を刺殺したあの後輩の姿がそこにあった…



「お前…何でここに…?」


「よかったじゃないっすか、先輩。転生した先で楽しい仲間たちとスリル満点の日々を送ってんでしょ? 俺もあんたの600万のおかげで、だいぶ生活が楽になったんすよ? ギブアンドテイクって奴っすよ! お互い、よかったじゃないっすか…」



 ヨシオは今起きていることに理解が追い付かず、頭が混乱していた…


「あ、そうだ先輩… 一つだけ、言わしてもらっていいっすか?」


 すると、後輩はヨシオのもとへと詰め寄り、彼の顔に両手を添えてこう言い放った…




「…そっちの世界でも…死に方が選べると思うなよ?」




 ◇◆◇◆◇



「うわああああああああああああ!」



「よ、ヨッシー⁉ 大丈夫か⁉」



「…あ…あれ?」



 目を覚ました彼の目の前にいたのは後輩ではなく、心配そうにこちらを見つめる仲間たちと、見覚えのない木製のベッドと見覚えのないたくさんの張り紙が目立つ紙臭い部屋… 



「…夢だったか…」



 と、ヨシオのベッドの横で何やら訳の分からない本を読んでいたヘンリーは、眼鏡を右手でずらしながら説明を始めた。


「君はルージュ氏のビンタの衝撃と旅の疲れからか、気を失っていたのです。どうやら、悪夢にうなされいたようですね。お休みの間、相当苦しそうな顔をしていましたよ? ルージュ氏の話によれば、マッスリラとの戦闘は、かなりギリギリだったようですね? その夢でも見ていたのですか?」



 その質問を遮るかのように、ユイエンがベッドに横たわるヨシオの上に飛び乗り、顔をすれすれまで近づけてあきれた様子で呟いた。


「ヨシ、マッスリラは星2の雑魚モンスターネ。いくらヨシでも、マッスリラごときで騒いでたら、我の主人として恥ずかしいアルよ。」



 向かいのテーブルでケーキらしきものを食べていたミコは、ケーキをほおばりながら心配そうに(内心あざ笑って)尋ねた。


「随分怖い夢だったっぽいね? 大丈夫?

 (てか、寝起きで叫ぶとか、チョ~受けるんですけど? 相変わらずきもいなこいつ)」



「一体何を見たんだ? 死ぬ夢か? …まさか!私に貴様の浮気がばれる夢か⁉ それは無理もない… 貴様が浮気をしようものなら、私は相手もろとも貴様を…」


 ルージュはまたしても自分の世界に浸っている様子だ…



「…ルージュチャン…ヨシに余計なトラウマを植え付けるのはやめるアル…。」



「…というか、現時点でルージュ氏とヨシオ氏はそのような関係ではないのだから、浮気というのは違う気もしますがね…」



「そこまで言うなら、告っちゃえばいいのに♡(この男のどこが良いのやら…)」 



「き、貴様らア!言いたいこと言ってくれよってからにぃ!」



 ヨシオは、今の状況こそつかめず、自由に騒ぎ出す仲間たちに向けて純粋な疑問を投げかける。



「…お、お前ら、勝手に盛り上がってるところ悪いんだが… 俺の見た夢は大したことじゃねえから気にしないでくれ。そんなことより、ここはどこなんだ?」



 すると、ヘンリーは頭のてっぺんを掻きながら申し訳なさそうに説明する。


「あ、ああ、すいませんね。説明がまだでした…


 ここはギルド内の地下二階、所謂、クエストの発注所と言われる場所です。」



 ◇◆◇◆◇


「…なるほど、リーダーの俺が寝ている間に、お前らで勝手に次に討伐するモンスターを決めちまったってわけか…。お前ら、少し自由過ぎやしないか⁉ 」


「ミコもそれ思った~w(お前の意見なんて誰も聞かねえよバーカ)」


「ヨシはモンスターの知識が皆無アル。我たちで決めたほうが、金銭的にも人命的にも的確な判断が出せるネ。ヨシはそのクエストを受けるかどうか決定すればヨロシ。」


「そういう訳です。まあ、『クロノス討伐』みたいな、無茶なクエストは選びませんので。生活費を稼ぐのに頃合いなものを選んだつもりですよ、ほら。」



 そういうと、ヘンリーは腰ポケットから手配書のような古びた紙を取り出してヨシオの顔の前でそれを広げた。



 相変わらず見たことのない言語だが、何故やら何と書いているかは分かった…



 ______________________________


 討伐クエスト   難易度★★★


 古代竜科 ブルタンク目 亜種


 “装甲竜アンキロプス”


 出現場所:ハクア村


 報酬 10,000,000ジュエル “アンキロプスの鎧”


 ~依頼者メモ~


 うちの村に突如姿を現して、村の作物や家畜を食い荒らしています。背中は頑丈な甲羅で覆われ、尻尾には硬いハンマーのようなものが付いており、我々の力ではどうすることもできません。どうか、我々の村をお救いください


 _____________________________



 依頼書の中央には、四足歩行の、いかにも強そうな化け物が描かれていた。



「どうです? 星3ですし、マッスリラよりは手強いですが、今度は僕たちも一緒ですし、一千万ジュエルあれば、一年は持ちますよ? ヨシオ氏の勇者の格付けもワンランク上がりますしね? 」


 ヨシオは、依頼者メモにもう一度目を向ける


「我々の村をお救いください…か…」


 ――――――――――――――――


 現実世界では、自分の事で精一杯で、他者から金を巻き上げていた俺が今度は人助けで金を稼ぐ仕事をするとはな…


 ――――――――――――――――――


「まあ、体の調子がよくなったらな。やろうぜ、このクエスト。わかんねえけど、お前らがいれば心強いぜ!」



「当たり前だろ? 貴様の不運さをカバーするための私たちだ。貴様を一人にするなど、考えただけでもゾッとするわ!」


「甘いマフシェルのためなら、私、なんでもする~♡」


「我の最強の型、試す絶好の機会アル。」


「みんな、異論はないみたいですね。それでは、早速支度をしましょう。来るアンキロプス戦に向けて!」



 ヨシオ達は依頼書を中央に円陣を組んだ



「よおし、お前ら! この怪獣ぶっ倒して、このギルドで大宴会開こうぜ!」


「「「「おう!」」」」


「そして私は、ついにヨッシーと一夜を共に…♡」


「ちょっと待て! ルージュ! 一人でそこまで進んでんじゃねえ!」



 ここはアンティカ最大のギルド「タワーズ」の地下二階、クエスト発注所

 この夜、五人のはつらつとした笑い声がタワーズ中に響き渡ったとかいないとか…


 ◇◆◇◆◇



 明後日、ここはアンティカの中心から少し離れたところにある “豊穣の地” 「ハクア村」


 そこに、普段は訪れるはずのない、王都の馬車が一台、蹄の音とともにやってきた。


 アンキロプスの襲撃でボロボロになった家屋から、もしやと村の住民たちが一人、また一人と外へと顔を出す。


 馬車から出てきたのは5人の若者たち。

 そのうちの一人は、透き通る白髪にオレンジ色のマント…


「勇者様だ…勇者様が来てくださったんだ!」


 村人の一人がそう呟くと、村人全員から歓喜の声が上がる。


 その声を聴いたオレンジマントの少年は、空に自らの右拳を掲げ、彼らにこう言うのだった。



「やあやあみなさん! 俺たちが来たからにはもう安心。 皆さんはとりあえず、この馬車で王都に避難していてください。 あのにっくき怪獣は、俺たちが仕留めますから!」



 ◇◆◇◆◇



「…下らねえ…」


3か月ぶりの更新です!

遅くなってすみません!次回はまた近日中に!

お楽しみに!

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