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追撃

調子良くユンボのアームを左右に振りまくりながら敵兵を薙ぎ払っていた雅彦はインパネで警告ランプが点灯していることに気が付いた。


「オーバーヒート」の表示と共にユンボの後部から湯気が立ち上っていたのを確認した雅彦はユンボのスイッチを切って動きを止めた。


雅彦「こりゃダメだわ、なんかあったんか?」


ドアを開けた雅彦はエンジンを収めている処のボディがめくれていて、木の杭が突き刺さっていた。


雅彦「げっ!!なんだこりゃ?!」


やはり想定外な出来事は想定外な時に起こるものだ。


ユンボのボディの正面に当たった多数の岩や木の杭による被害ならまだしも、ボディの後方に空いた空気取り入れ口に刺さってるとはどういう事なんだ?と文句の一つも言いたくなるが、これが戦闘っていうものなんだろう。


雅彦はショットガンを片手に飛び降り、ヴィルマが運転するランクル73の助手席のドアに取りついた。


雅彦はヴィルマと運転を代わってもらい、クルマの向きを変えて、クルマの正面を敵の方に向けて前進を開始したのだった。


雅彦「ヴィルマ、イングリット、閃光弾(フラッシュボム)を使え!」


秀明たちが日本から持ち込んだ連射可能な高性能クロスボウを撃っていたイングリットとヴィルマはパーツボックスの中に残っているアルミ製の空き缶で作られた閃光弾の導火線に火を着けて、敵の中央付近に投げ入れた。


二人とも「フラーッシュ!!」と大声を挙げて味方に目を伏せるように指示をした。


数秒後、敵の中程で複数の強烈な閃光と爆風が起こり、この攻撃を受けた付近の兵士の多くは目を押さえてうずくまったり、悲鳴か怒号か分からないような叫び声を上げたままで卒倒していた。



雅彦「ヴィルマ、皆に曲がり角まで敵を押し込めと指示を飛ばしてくれ」という指示をもとにヴィルマは大声で雅彦の指示をドイツ語で叫んだ。


その言葉を聞いた傭兵たちは「オウッ!!」と一斉に返事をして、目の前のドラゴニア兵に対して、猛烈な攻撃を仕掛けるのであった。


それに対してドラゴニア兵士も猛烈な抵抗を始める。


元々の体格や攻撃スキルなどは北方諸国連合出身者の子孫が多い傭兵部隊の面々には及ばないものの、平均身長は180センチ程度でガッチリした体型の多いドラゴニア軍の正規兵も弱い相手ではなかったのだ。


しかも変な薬でドーピングされており、まるでゾンビの様な形相で向かってくる兵士に傭兵部隊も苦戦を強いられていた。


しかも後から後から次々に襲いかかってくる。


ただ、その攻撃は組織的に行われているのではなく、個人個人が勝手に襲いかかってくるような感じであったので、傭兵たちは自然と二人一組で狂乱して襲いかかってくる狂戦士(バーサーカー)たちを一人、一人と個別に仕留めていくのであった。


結果的に傭兵たちが一歩進むごとに死体の山が一列生み出されていくのであった。


もう数十メートル敵を押し除け、林道の曲がり角までくればまたランクル73を盾にして傭兵部隊は一息をつけるので、そこまでは雅彦も大声を挙げて彼らを鼓舞し続け、また後方の弓隊も傭兵部隊を狙おうとしている弓兵を効率よく思う狩り続けていた。


雅彦も27人の傭兵部隊の真後ろまで詰めて、怪しい動きをする敵兵は、運転席のドアを開けて突き出していたショットガンから放たれた散弾で次々と仕留めていった。


二発撃っては敵の頭をそれぞれ吹っ飛ばし、瞬間でショットガンを裏返しながら腰から二発同時にショットシェルを抜き出し、パシパシとロードしていく。


ロード完了したらまたショットガンを構えて、矢を放とうとしている兵の頭を次々と射抜いていった。


最前列で戦斧を振りまくっているヴォルフラムやビーキングソードを振り続けているゲルハルトは全身を朱に染め、また多数の矢を盾に受けた壮絶な姿で戦い続けていた。


彼らが武器や盾を振るたびに敵兵はグシャ!!という音と共に吹っ飛ばされ、その場で崩れ落ち、後ろから進んでくる敵兵に衝突する形で押し返されて倒されていく敵兵が続出した。


こうして後ろから見ていると彼ら傭兵隊の戦闘スタイルは確立されているのがよく分かる。


一人が敵の攻撃を食い止めたと思ったら、隣の兵士がその兵士にトドメを刺していく。


トドメを刺していた兵士が敵から襲われたら盾で食い止め、先程は盾で食い止めていた兵士がトドメを刺していく。


これは何十年にもわたり、戦場を渡り歩いてきた歴戦の兵士ならではの息のあった連携プレイだと言えた。


今回の戦闘が始まった当初は、長さ4メートルの長槍を横一列に並び縦に振り続ける戦法をとっていたが、それも短期間の訓練であっという間にマスターし、元々の戦法をさせてもこれまた鬼の様な強さを発揮している。


攻撃力単体でいうと長槍を振りまくる戦法の方が高そうだが、敵の矢による攻撃などもある場所ではこの戦法の方が防御もしっかりするので適しているように感じた。


雅彦率いる傭兵隊全員、持てるチカラをフルに振り絞り、敵を林道の曲がり角まで押し出すことに成功するのであった。



一方、その頃 ドラゴニア軍の本陣のあるゲレンデ周辺では、閃光弾やインパルス消火銃の残弾を全て消費し尽くした秀明と影山の乗るランクル70が敵の軽装騎馬弓兵相手に善戦していた。


当初は敵の矢を掻い潜るのに苦労していたのだが、コツを掴んでからは効率的に敵を刈り取っていた。


騎馬兵の欠点は、「いきなり後退したり進路変更出来ないこと」である。


秀明はそこを突いて、敵を誘い込んでは急ブレーキなどで敵の後方に回り込み、後方から体当たりしたり日本刀による近接攻撃でひとつひとつ仕留めていった。



この戦法は最初の襲撃の時に比呂が使っていた戦法で、比呂もその方法で多数の騎馬兵を落馬に追い込んでいった。


落馬した兵士を刈り取るのは楽勝だった。


突っ込んでいって逃げたら背後から一差しすれば良いだけだからだ。


重装備の兵士なら日本刀でも歯が立たないこともあるかもしれないが、ここで戦っている大半の兵士は軽装備の兵士なので日本刀との相性は最高だった。


秀明も影山も、数えるのが困難になるほど多数の敵兵士を戦闘不能に追い込み、林道から出てくる兵士たちの追撃も、その速い脚で距離をとっては自分たちの方法で刈り取っていくのだった。


いつしかゲレンデは多数の兵士や馬の死体が散乱し、掻い潜って走るのが困難な状態になっていた。


秀明「これはヤバいな、これだけ障害物が多いと普通に走れないぞ」


影山「これだけ斬ったら日本刀と言えども限界じゃねえのか?左手の握力も無くなってきた」


秀明「ちょっと離れた所に移動するか?


…ん?あの集団はなんだ??」


秀明が林道の出口付近、つまり関所跡の辺りから飛び出してくる十騎ほどの集団がいた。


ただの増援かと一瞬思ったが、見るからに身に付けている装備が他の兵士たちとは違うので、「これは敵の司令官か?」と思ったのだ。


秀明「比呂、聞いているか?


今、林道の出口付近に敵の司令官と思しき騎馬兵が出てきたんだけど、そっちで確認出来るか?」


比呂「うん?出口?分かった。追跡してみる」


比呂は比呂で林道の中をずっと検索していたのだが、敵の司令官は見つからずにいた。


また、雅彦が操っていたユンボがオーバーヒートをしたのを受けて、村から大至急、救援隊を組織してハチマルに乗り込ませていたので、手が離せなかったのだ。


比呂はハチマルの運転席に座り、隣に乗るアレクシアにハンドル操作を頼みながら、ドローンも操作しながら画面を追い続けていた。


ハチマルはゆっくり走り、広場を抜けて橋に差し掛かろうとしたタイミングで比呂は広場を疾走する敵軍の指揮官と思われる騎馬兵とその護衛の兵士たちを捉えた。


比呂「親父、それはおそらく敵の大将だ!!


奴らだけ離脱する可能性もあるんだけど追えるか?」


秀明は影山と目を合わせてガッツポーズを取りながら「おう、追いついてみせるさ!」と一声発して、東に抜けようとしている騎馬兵の集団を追った。



影山「追うのはいいけど、こちらもタマ切れだぞ、どうする?」


秀明「武器は何か残ってないか?屋根に付けたサンドラダーとか投げ付けるか?」


影山「ちょっと待てよ。


…こりゃなんだ??」


影山は後部の荷台を振り返り、積んでいる荷物をひっくり返していたが、ある物を見つけた。


それは「チルホールのレバー」であった。 


このレバーは縮めると長さは1メートルほどだか、伸ばすと長さが1.5メートルほどにもなる頑丈な鉄製の筒でゴム製のグリップが付いた代物だった。


影山はこれを取り出してレバーを引き伸ばして固定し、レバーの先端の筒に日本刀の柄を差し込んでガムテープでぐるぐる巻きにして固定した。


つまり何を作ったのかというと、柄がやたらと長い薙刀(なぎなた)みたいなものを作り上げたのだった。


影山「これなら両手が使えてエモノの長さも倍に伸びたぞ!!


それにしても昔、薙刀やっていた女子たちと戦ったの覚えてないか?


あの強力な一撃をカマしてやるから、敵を引きつけてくれ!!」


秀明は影山のその言葉で、小学生の頃の出来事を思い出していた。


彼のいた道場と影山のいた道場は館長同士が大東亜戦争の南方戦線の生き残りで戦友でかつライバル関係であった。


彼らが重んじたのは実戦での強さで、共に勝つためには手段を選ばない風潮があった。


そのため彼らもスポーツ剣道ではあり得ないような実戦的な技を覚えさせられていたし、また普段の稽古も他の道場ではあり得ないような事をよくしていたのだ。


秀明が居合い技が得意なのも幼い頃から館長に仕込まれていたからであり、また他の流派との交流戦もよく行われていた。


ある時、彼らの合同稽古の時、珍しい流派の相手と戦わされることになった。


それが「薙刀(なぎなた)」をつかう女子たちであったのだ。


彼らは当時、県下では敵無しくらいの強さを誇る道場に居たため、同年代の男子相手に対しても遅れをとることはなかったのだが、今回戦った女の子たちを当然格下だと思っていた彼等は度肝を抜かれることになった。


まず薙刀というものは、(すね)に竹製のガードを付けて行うのだが、剣道にはそもそも足元への攻撃法は含まれておらず、薙刀を相手にした時の足元を投げ払う攻撃に大苦戦させられた。


また、遠心力のついた薙刀の一撃は竹刀ではあり得ないほど強力で、下手な受け方をすると竹刀ごと打たれてしまうか、もしくは竹刀をぶっ飛ばされるほどの威力があった。


また、薙刀の攻撃を食らうととてつもなく痛く、彼らは戦国期などに女性が薙刀を持っていた理由が骨身に染みて理解出来ていたのだった。


今回、その「薙刀」を影山が使うという。


これまで左手一本で日本刀を振り続けたことで握力低下のために他の武器を探したことから偶然見つけた攻撃手段であったが、あの時、オレらが女の子相手に苦戦した薙刀を影山が使って敵を倒そうとしている。


ある意味で「胸熱」な展開だなと思うのだった。


秀明「よし!薙刀とはこれまた懐かしい武器じゃないか!


オレらには鬼門の武器だったけどな!


敵を左側に寄せるから、一撃で仕留めてみせろよ!


それで賭けは帳消しにしてやるからな!」


影山「おう、お前もどうせ日本刀はもう片手で振り回せないだろう?


この戦いを起こした責任は奴にキッチリ取らせるぞ!


やってくれ!!」


秀明は日本刀を鞘に収め、アクセルを全開にして敵の司令官と思われる一隊を追い始めるのであった。


(続く)

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