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アイアンバール作戦第三段階

林道の一番手前側の橋の付近まで戦術的後退をしていた雅彦率いる傭兵隊は、はるか東で黒煙が数本立ち上がっていることを確認した。


雅彦「よし!親父の襲撃が成功したぞ!」


ちょうどその時、無線から比呂の声が聞こえてきた。


比呂「兄貴!親父の襲撃が成功したみたいだぞ!


そっちでもアイアンバール作戦の第三段階を始めてやって!」


雅彦はこの言葉を受けて、傭兵隊全員に対して反撃開始の号令をかけた。


雅彦「行くぞ!まず俺が進むので、皆は後をついて来い!」


雅彦はユンボに飛び乗り、鉄板で覆われたキャビンに乗り込むとエンジンを始動させ、閉じていた前方と左右の窓を開けて前進を開始した。



これまでひたすら何をするでもなく、大きな丸太の柵を吊りながら後退していたその巨大な構造物ユンボのことは、ドラゴニア軍からはタダの「矢や投石などから歩兵を防御するための物」だと思われていた。


実際、これは日本の戦国期などにも似たような物が存在していた。


木慢(もくまん)と呼ばれるその攻城兵器は、車輪付きの台の上に立てられた柱から吊るされた大楯によって、大量の矢を防ぎつつ進軍を可能にした攻城兵器の一種である。


ドラゴニア軍も過去の戦訓から、その木慢に似た攻城兵器を持っていたので、大きな盾となる丸太で作られた柵を吊り下げながら大量の矢や投石、高速で飛ばされてくる木の杭などを防いでいたその兵器が木慢みたいな物だと勘違いしていたのも無理はないことだった。


その「守るためだけの兵器」だと思われていた兵器が突如、前進を開始したので、ドラゴニア軍の前衛部隊は緊張が走ったのであった。


ドラゴニア軍は、大楯をズラリと揃えていた前列を左右に避けさせて後方から三角屋根の破城槌を奴隷たちに押させることで最前列に持って来させ、それをその兵器へとぶつけさせようと突入させた。


ドラゴニア側からも大きな歓声が起こり、ここで初めて現代日本製の土木工事用の重機であるユンボと、ドラゴニア軍の攻城兵器である破城槌が激突するのであった。


破城槌は巨大な丸太を吊ったコマ付きの台車に、矢や火による攻撃から兵士を守るために巨大な三角形の屋根を付けた構造物で、重さは何と10トン近くにもなる。


それを30人近くの奴隷が屋根の下や後方から押して突進して来るので、大抵の物はこの破城槌の一撃で破壊されてきた。


今回の物は即席で作られた物ではあったが、ドラゴニア軍の侵攻軍の本隊なども多数の破城槌を持ち込んで来ていたので、ここの兵士たちもその威力をよく知っていたのだ。


「グシャ!!バキバキバキ!!」


二つの重量物の衝突は大きな破壊音と衝撃音が辺り一帯に響きわたり、それらは敵と味方の中間地点で止まるのだった。


そこから破城槌は、内部に吊っていた丸太を除夜の鐘を突く要領で丸太を次々に打ち付けていく。


だが、その攻撃は正面の丸太の柵を揺らす程度で破壊することには至らなかった。



ところがここで思わぬことが起こる。


敵の丸太の柵の向こうから投げ入れられた火の着いた複数の容器が破城槌の三角屋根の上で破壊したと思ったら、それは爆発し周囲に多くの火を撒き散らかした。


当初は大した事がないと思っていたドラゴニア軍であったが、その炎は瞬く間に破城槌の三角屋根全体に広がり、破城槌自体を燃え上がらせることになったのだった。


慌てて逃げ出す奴隷たちと、混乱するドラゴニア側の前衛隊。


この様に火で攻撃される攻撃はドラゴニア側も想定していたのだが、その燃焼速度と勢いはこれまで経験したことがないほど強烈なものだったからだ。


三角屋根の上には(あぶら)などで燃やされることを予め想定し、水を大量に含む幌布で覆われていたのだが、今回の攻撃ではそれらによる防火の効果は全くなかった。


それもそのハズで、こちら側の世界で用意される油は精製されたようなものではないので、火を着ければ燃え上がるが、ガソリンなどに比べると燃焼速度は大したことがない。


ドラゴニア側はここに来て改めてガソリンという「兵器」の怖さを思い知らされることになったのだ。



ここで雅彦は、丸太の柵を吊っていたアームを大きく旋回させ、勢いをつけてその燃え上がっている破城槌に真横から一撃を加えた。


破城槌の三角屋根はこの攻撃で一気に崩壊し、小川へのその巨大の一部を落としていった。



雅彦の後方で控えていた傭兵隊やヴィルマたちもその様子を見て大歓声を挙げた。


雅彦は何度も破城槌に一撃を加え続け、遂にその巨体全てを小川に転倒させた。


雅彦は更に前進を開始させた。



ドラゴニア軍も負けじと、この奇妙動きをする構造物に対してバリスタによる攻撃を集中させた。


だが、その攻撃の大半はユンボが振り回している丸太の柵やクローラー(キャタピラのことね)、ユンボの本体に当たったのだが、その動きを止めることは出来なかった。


雅彦はエンジンを全開にして、敵軍前衛に向けてユンボを突進させた。


前衛部隊に衝突する前に左に大きく振っていたアームを一気に右に振り抜くと、ドラゴニア軍の前衛隊はゴミのように散らされ、多くの兵士は横の小川へと落ちていった。


ここでドラゴニア軍は大混乱に陥った。


その全身真っ黒に塗装された不気味な兵器は、馬や人力で動いている訳でもないのに、ガラガラガラという爆音と真っ黒な煙を吹き上げながら怪力を振るいまくるのだから人力でどうこう出来るようなものではなかった。


雅彦は左右に丸太の柵を振り回してながら前進させ、前衛部隊をことごとく左右に跳ね飛ばし、更に前進した。


ここで、後方から詰めてきていたゲルハルト率いる傭兵部隊も満を辞して敵に襲い掛かったのだった。


ゲルハルトたちの突撃は、これまた凄まじい勢いで敵軍を切り裂いていった。


これまで後退させられてきた鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように猛威を奮う傭兵たち。


ある者はヴォルフラムの強烈な斧による一撃をくらい胴体を真っ二つにされ、 


ある者は他の傭兵たちから丸盾で殴られ蹴り飛ばされて小川に転落し、


またある者はゲルハルトの猛烈な連続攻撃で次々とその剣の餌食となっていった。


雅彦はキャビンから乗り出して、反撃しようとしている敵の弓兵に向けて、ショットガンを連射していった。


二発撃つと腰に指していたショットガンの弾を同時に抜き取り、リロードして、更に二発撃ってはリロードを繰り返す、ダブルロードという連射を繰り返していく。


また、後方から詰めてきていたランクル73の陰に隠れていた弓隊も、敵の弓隊に向けて一斉に攻撃を開始した。


ドラゴニア軍前衛隊は阿鼻叫喚の地獄と化したのだった。



雅彦たちが林道内部で激闘を繰り広げていた頃、ドラゴニア軍の本陣付近にいた秀明と影山が乗るランクル70は軽装騎馬弓兵に追いかけ回されていた。


秀明の70は雅彦の73とは違い、特に防弾装備が施されているわけではなかった。


防弾どころか左右のドアは外され、屋根もないので矢などを受けるとかなりマズいのだ。


敵が槍や剣を持っていた時はまだ対応出来ていたし、二人で50騎近くの騎馬兵を無力化していたのだが、ドラゴニア軍が誇る軽装騎馬弓兵が大量に出てきた時から、彼らは逃げに徹するようになっていた。


影山「どーすんだ、これ?」


秀明「知るか!俺とは違って頭いいんだから策でも考えてくれ!」


影山「ここに来て冗談はヨシコさんにしてくれよ!」


秀明「ひとまず距離をとって逃げ回るから、敵を閃光弾で混乱させて、迂闊(うかつ)に寄って来た兵士を仕留めていこうぜ。


秀明は狙われないようランダムに向きを変えながらグルグルと走り回り、影山は残った閃光弾を敵兵の前方辺りを狙ってポイポイと放り投げていった。


この閃光弾は比呂がランクル73の鉄柵を溶接する際に思いつきで作ったもので、マグネシウムと○○などを加える事で起こるテルミット反応を使い、強烈な爆音と閃光を発生させる非殺傷兵器であった。


これを使うにあたり、秀明と影山は自分たちが眩惑されないようにサングラスを付けていたのだが、その様子は不良中年の厳つい親父二人がヤバい車を乗り回し暴走しているようにしか見えなかった。


閃光弾の爆発に驚いた馬は暴れて兵士を落馬させたり、まともに閃光を目にした兵士の多くは戦闘の継続が困難になった。


このチャンスを不良中年二人は逃さなかった。


影山はインパルス消火銃の残った残弾全てを全て使い、敵兵を次々と落馬させていき、秀明も日本刀ですれ違いざまに敵兵の首を刎ねていった。



その様子は比呂が操作する軍用ドローンの「ゲルラッハ」から送られてくる画像を写したモニターで村にいるエマやアレクシアたち村の女の子や子供達も見ていた。


アレクシア「ヒロサンのお父さん達、本当に凄いですね!」


比呂「あの二人、ある意味バケモノだからな。


四駆乗り回して接近戦まで出来る日本人なんて滅多にいないと思うよ」


アレクシア「マサヒコサンやヒロサンは剣は使えないのですか?」


比呂「うん、僕らは剣は握ったことがない。


使えるのはあの二人と先日こちらの世界にやってきた親父の弟の秀二さんだけだよ。


特に秀二さんは若い頃、めちゃくちゃ強かったらしいよ」


アレクシア「そうなんだー」(←日本語)


この「そうなんだー」という言葉は最近比呂から教えてもらったもので、アレクシアも面白がって好んで使っていた。


比呂が上空から観る処では、敵はまだ組織的な行動をとっていた。


ということは、敵の司令官などを捕らえるか仕留めない限り、この戦闘は終わらないことになる。


比呂「敵の司令官を探さないとなぁ」


比呂はドローンを敵軍の上空に飛ばすが、あまり高度を下げると敵の矢による攻撃を受けてしまうので100メートル以下には下げれなかった。


真上から敵の司令官を見分けるのはなかなか困難で、あちこち飛び回り、モニターに映し出される映像を全員で観察していくが、見つけられないでいた。


そこに雅彦から無線で連絡が飛んできたのだった。


「ユンボがオーバーヒートした」と。


(続く)


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