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親父はスーパーマン

雅彦は現在25歳で以前も書いたが高校卒業後にまずトラックの整備士を経て大型トラックのドライバーとなっていた。


少し時を遡り、子供の頃の話をしてみよう。


彼が赤ん坊の頃、両親の仲は非常に良かった。


秀明は彼が赤ん坊の頃にランクル70を手に入れていてその頃から出かけるときは必ずと言っていいほど雅彦を連れ出していたのだった。


当然そうなると山で出会う秀明の友人達は皆、子供の雅彦を可愛がるようになり、そのうち弟が出来て弟の比呂が一緒についてくるようになっても親父の車の助手席は誰にも譲らないのであった。


幼い頃、彼の記憶にある父親の姿は正に「スーパーマン」であった。


山でランクルを走らせる技術も他の人よりは明らかに頭一つ抜き出ていたし、鉱山ではユンボやブルドーザー、大型ダンプなども使いこなし、更には実弾を発射出来るマジもんの猟銃を持っていたりと、ある意味で自慢の父親であった。


そんなある日とつぜん生活は一変する。


いままで住んでいた家から三人で出て、秀明の友人でもあった男の家に移るのだという。


引っ越しは夜逃げのように迅速に行われ、秀明が帰らない間に彼らは隣の市に移り住むことになった。


彼ら三人は顔は知ってはいたが暮らしたことがない男の家に住むようになり、学校も転校させられた。


母親からは「お父さんは仕事でまだ海外から帰って来られないのよ」と説明を受けていたが、数年が経ったある日、高校生になった雅彦は電車に乗って元住んでいた家に戻ってみた。


そこはまだ家はあったのだが、見知らぬ表札がかけられており、親父はそこに住んでいないことを初めて知った。


それまではなんとなく「まあいいか」くらいにしか思っていなかった雅彦だが、何か変だということに初めて気が付き、近所の親戚の家を訪問してみた。


するとそこには昔よく遊んでいた叔母さんの家がまだ残っており、秀明の姉にあたる人が雅彦を見つけて血相を変えて声をかけてきた。


「あなた、どこに住んでるの?!音信不通になったから心配してたのよ?」


久しぶりにその家に上がらせてもらい、叔母さんから事の顛末を聞くことになった。


あの家は数年前に売られて今は別の人が住んでいること。


弟の秀明とも現在は疎遠になっていて、ほとんど連絡はないけど、どうやら彼の持つ鉱山に引きこもっているのではないか?とのことだった。


そして少ないけど持って行きなさいと、一万円札を彼に渡して見送ってくれた。


帰りがけに以前に住んでいた家に寄った雅彦は初めて悔し涙を流した。


そして、自宅に戻ると母親が帰ってくるのを待って、徹底的に真実を問いただしたのだった。


当然、大喧嘩になり家を飛び出した雅彦はその足で秀明の鉱山に向かった。


初めて乗る電車とバスに苦戦しながらも、なんとか鉱山までたどり着き、事務所にたどり着いたらそこには昔と比べてややくたびれた感じの親父が居たのだった。


驚きながらも彼を出迎えてくれた秀明は、しばらく見ない間に身長がほとんど同じになっていた。


数日、その鉱山の事務所に泊まって久々に秀明と色々な話をしたが、


結局、元住んでいた街にアパートを借りてそこから高校へ通学することになった。


母親とまた揉めることになったが、母親が親父の実印を勝手に持ち出して色んな違法行為をしていたことをネタに逆に問い詰めたことで母親は一切何も言ってこなくなったのだった。


秀明はそんな雅彦に高校生にも関わらず自分が持っていたランクル73を彼に与えて、暇な時を見つけては鉱山内の四駆のコースで四駆の運転テクニックを全て叩き込んだ。


彼にとって秀明は今も昔も変わりなくスーパーマンであり、認めて欲しい存在であった。


だから、彼から教えてもらえる事はなんでも嬉しかったし、上達して何としてでも認めて欲しかったのだ。


高校を卒業する頃には並居る大人の四駆乗りたちでは歯が立たないほどクロカンテクニックは上達しており、卒業した後も「四駆」に関わる仕事を選んだのだった。


そんなわけで割とハンサムな風貌の割には学生の頃を最後に彼女はいなく、また「当分の間は女より車よ!」というのが彼の口癖であった。


そんな息子に「はよ、孫を作ってくれよ。ただアイツみたいな変な女は止めてくれよ!」と冗談交じりに声をかける秀明であった。


………………………


「孫の顔が見たいと言ってたけど、異世界の女はダメなんだろうか?」


そんなことをボンヤリ考えながら食材の買い出しも済んだので鉱山に戻るため山道を走る雅彦なのであった。


能天気でイケメンだけど三枚目的なキャラである雅彦の意外な過去を説明した回でした。


彼がなぜ四駆に乗っているのか、なぜ同世代でほとんどやっていない趣味に固執していたのか今回の話で分かったと思います。


ただ、彼も母親に対しては未だに意外と気を遣っている面もあって、自分があちらにいたら経済的に厳しいのがさらに厳しくなるので出てきたという事情もあったのだと思います。


たぶん、作者の私ですら理解出来ないほど優しい男なんですよ、彼は。


個人的には彼こそこの物語の主人公に相応しい人物だと思います。


次回は雅彦の弟の比呂の話になるのかな?


お楽しみに!


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