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撤退戦準備と開戦

雅彦のランクル73に載せている装備を軽く説明しておこう。


今回からはインパルス消火銃は載せていないので電動のエアコンプレッサは外している。


100リッターの水タンクはそのまま載っているが、中身は例の催涙水(カプサイシンバッサー)改が入っている。


そして電動の高圧洗浄機を載せていて、その催涙水をばら撒くことが出来るようになっている。


荷台に乗るのはヴィルマとイングリットで比呂が作った全長4メートルの金属パイプで作った長槍と和弓をそれぞれ装備していた。


雅彦のメインウェポンはショットガンで、弾は350発を用意していた。


雅彦のランクル73は事前に屋根が取り外され、後部に重さ300キロにもなる頑丈な鉄の柵が取り付けられていて、ヴィルマやイングリットはその鉄の柵に隠れながら弓矢や長槍で敵を攻撃することが可能だ。



それと今回、雅彦はヴィルマとイングリットの二人にランクル73の運転を軽く教えていた。


教えていたといっても公道を走るような操作ではなく、ローレンジに入れた状態で極低速で動かす程度の操作のみ教えた感じだ。


普通、マニュアル車は適当なクラッチ合わせをするとエンストしてしまう。


だが、雅彦の車はただでさえエンストし難い大排気量ノンターボディーゼルに加えて、ローレンジの減速比をノーマルの倍くらいに落としていた。


つまり、適当なクラッチ操作でクラッチ合わせをしてもエンストしない。


エンストしないばかりか、そのままでブレーキを踏んでもグイグイとクルマを前進させようとする。


ある意味、マニュアル車に不慣れな人でも扱い易いので素人向けと言えるのかもしれない。


このような感じだったので、二人とも一日ほどの軽い練習であっという間にランクル73を動かす程度は出来るようになった。


最初はおっかなびっくりで雅彦に言われるままに操作をしていたのだが、慣れてきたらそこら辺を亀が這うくらいの速度でクルクルと動き回って遊ぶのであった。


なぜ彼女達に運転を教えたのかというと、雅彦がユンボなどで敵を食い止めている間にランクルを後退させたりする必要があったからだ。


またランクル73には火炎瓶を6本だけ載せていた。


本来ならもっと火炎瓶を多く使いたい処なのだが、林道の横には森が迫ってきているのであまり火炎瓶は使いたくないのだ。


また、このランクル73には「ある秘密兵器」も載せていた。


敵を行動不能な状態に追い込む原理は同じなのだが、一つはランクル73そのものに装着された物で電気を使って動く物と、火を着けて投げれば炸裂して効果を発揮する物の二つが用意されたのだった。



次にユンボ(パワーショベル)だが、これはキャビンの周辺に鉄板を張り巡らせて矢や槍などからオペレーターを守る様に以前から行っていた。


だがバリスタから発射される木の杭や、投石器などから発射される巨大な岩などを防ぐほどの装甲厚はない。


そこでバケットに付いているフックで丸太を組んだ柵を持ち上げ、その柵でバリスタなどからの強力な攻撃を防ぐのと同時に、ブームとアームを上下左右に振り回すことで接近しようとする敵兵を払い除けるようにしてみた。


丸太で組んだ柵は元々は後方の弓隊の前に置いていた柵だったのだが、後方に持って行くつもりでユンボに引っ掛けてみたら「これ、振り回せば武器になるんじゃね?」ということに気が付き、回収してきた有刺鉄線の一部を切り取り、丸太に巻き付けて武器として強化してやったのだ。


更に、この三菱製のユンボにはアームに黒いボロ布を取り付け、遠目に見たらオバケか幽霊みたいに見える工夫がされていた。


現代の日本人が見ても作り物にしか見えないので効果は無いだろうが、ユンボなど見たこともない中世の人が見たら恐ろしい物に思うかもしれないということで小細工をしていたのだ。



これらの作業をしていて主に感動していたのはやはり傭兵隊の面々であった。


まず、巨大な鉄の塊が轟音を上げながらガタガタ動くことに驚いた。


ユンボが作業する周囲に集まってワイワイ騒いでいるのでコイツや何言ってるんだ?と気になった。


一応、林道全ては比呂のお陰でネットが繋がるようにはなっていたのだが、全ての人間の会話が同時通訳出来るわけではないので、近くにいるヴィルマとかに「あいつら何言ってるの?」と聞いてみたら「スゲェ!」とか「パネェ!」とか言ってるよ、との事だった。


まぁ、何というか、こういう反応は日本人と違っていちいち派手なんだよなぁ。


傭兵隊たちには、長槍による槍襖(やりぶすま)の戦法を教え込んでいた。


長さ4メートルにもなる楕円形に押し潰して簡単には曲がらないよう加工した鉄パイプの先端にナタなどを取り付けた長槍だ。


これは重さが10キロ程にもなる激重仕様(げきおもしよう)だったが、身長190センチ前後の腕の太さが雅彦の太ももくらいの太さがあるゴツい傭兵たちの手にかかれば、まるで小枝を振り回すようなスピードでギャンギャン振り回す事が出来た。


長槍を持った傭兵を横一列にビッチリと配置して、掛け声と共に振り上げていた槍を一斉に振り下ろす。


敵に当たるか地面に当たった槍は反動で跳ね上がるので、また振りかぶり長槍の重さを利用して振り下ろすのだ。


何というか、女の子たちが槍を振っている時と風の唸る音が全く違う。



最前列でそれら槍隊を直接率いるのは副長のヴォルフラムであった。


彼はゴツい傭兵たちの中でも更に頭ひとつデカいので、正に「重戦車」と表現するのに相応しいと思った。


彼らが横一列で長槍を一斉に振り回す様子は正に壮観だった。


これをたまたま来ていた比呂が見て「ヴァイキングが槍衾(やりぶすま)を作って日本の戦国期みたいに槍を縦に振り回すとかマジでロマンやな!」と感動していた。


近くで見ていると、まさに「槍による暴風」であった。


ドラゴニア軍の前衛隊は全身が隠れる程の巨大な盾を構えて槍などで攻撃してくるのだが、槍は2〜3メートル前後とかなり短く、投げ槍をしない限りこちら側の槍の方が圧倒的に攻撃範囲が長かった。


以前の敵の攻撃で戦場に残されていた盾があったのでいくつかを取り込んで実際に彼らに長槍で叩いて貰ったが、真正面からまともに受けたら いとも容易く盾は木っ端微塵に砕けた。


槍の素材に木が使われていた中世ヨーロッパでは敵の長槍に対抗する為に両手剣で槍の柄を切り落として対抗する戦術がとられたことがあるそうだが、こちらの槍の柄は鉄製なのでおそらく切り落とすことは困難だろう。


以前、秀明が対峙した敵が持っていた剣は、ツヴァイハンダーという両手剣に酷似した剣であったが、それなどは槍の柄を切り落とすのに最適な剣だと比呂は言っていた。


だが、巨漢で怪力のヴァイキングたちが払う長槍は、ツヴァイハンダーと言えども受けたが最後、叩き折られるであろうことは容易に想像できた。


長槍の攻撃を防ぐには受け流す必要があるのだが、これだけの重さと速度で振り下ろされる槍を受け流すのは容易なことではないと思われるのだった。


傭兵隊は元々、隊列を組んで戦うことを得意としていた。


基本的には彼らの戦法は尊重しつつ、敵の侵攻を一時的に抑える方法の一つとして、密集長槍戦術を教えたというわけだ。



今回の闘いは基本的に「撤退戦」を計画している。


敵の攻撃方法に応じて、柔軟に戦術や武器を変え、場合によってはランクル73の鉄柵や一輪車(ねこぐるま)に取り付けた大型のシールドなどの陰に隠れながら敵の攻撃を凌がねばならない。


味方が崩れそうになったら、火炎瓶や化学兵器(といっても催涙水だが)などを使って敵を一時的に混乱させ、後退して戦列を組み直す。


場合によっては敵にランクル73で直接突っ込んで隊列を崩した処に傭兵隊が突っ込んで敵を崩す。


敵を食い止めている間に射程と威力と命中制度に優れた弓隊による攻撃を加える。


また、ランクル73には未だ実戦投入していない秘密兵器がある。


また、ポータブル発電機に鉄製のワイヤーロープを敵の足元に通して、感電させる戦法も引き続き使えるだろう。


また、林道の各所に罠も仕掛けているので、敵がそこに差し掛かったらその罠を発動させる準備も整えた。


敵の侵攻は目前なので完璧な準備とは言えないが、概ね順調に準備は整えれた筈だ。



…………………………


一方、その頃、ドラゴニア軍では盾を揃えた前衛隊を先頭に、その背後を弓隊、大型クロスボウであるバリスタ10機、投石器5機、最終ラインに騎馬兵が続く隊列で進軍が開始された。


バリスタ付近には丸太を抱えた工兵と思われる奴隷かの姿もあり、正に総力戦の様相を呈していた。


平原に響き渡る角笛の音。


盾に槍を打ちつけながら、ジワジワと前進する前衛部隊。


その音は崖の裏で待機している雅彦率いる傭兵たちにも当然聞こえた。


雅彦は崖の上でそれらの動きを見ていたが、崖の上からロープを伝って降りてきて、ランクル73のボンネットの上に立ち、ヴィルマ越しに全軍に向けて演説を始めた。


雅彦「よし、作戦開始だ。


この戦いで敵を完膚なきまで叩き潰すぞ!


前にも言ったが、敵を必ずしも殺す必要はない!


特に奴隷たちは極力、殺すな!


敵兵どもは今回の戦いで、嫌というほど我々に恐怖を抱き、我々の事を恐れ、おののくようになるだろう!


それは諸君らも経験したことだろう!


今回はそれを敵の全ての兵士たちや敵の将校達に経験させる!


彼らは本国に逃げ帰り、こう言うだろう!


『敵には恐ろしい悪魔が居ます!我々が行ったあらゆる攻撃は全て防がれ、魔術のような攻撃を受けて味方は倒されました!彼らの村を襲うのは二度とごめんです!』と。


我々はこの戦いで初めて共に戦う!


私も最前線で諸君らと共に血を流す!


だが、忘れるな!


我々は誰一人として死なないし死ぬことは決して許さない!


一人として欠けることなく、今日の夜は宴をするぞ!」


それを聞いた傭兵たちは武器を振り上げ、咆哮を上げるのであった。

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