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異世界 開発計画

比呂「ちょっと問題が起きていた。

ちょっとコレを見てくれる?」


比呂は雅彦に彼が持っているドローンから映し出されている映像を見せた。


彼のトレーラーハウスにモニターとアンテナを付けていたのでその中で見せていたのだが、その狭い室内にヴィルマやイングリット、また傭兵隊長のゲルハルトまで入ってきていた。


ヴィルマやイングリットはもう何度か見ていたので驚かなかったが、ここで驚いたのはやはりゲルハルトであった。


まず、ハチマルが動いていることに驚き、綺麗な造りのトレーラーハウスに驚き、薄い板に映し出されている上空から見た視線に更に驚いた様子であった。


ゲルハルトがあまりにも騒ぐのでトレーラーハウスの入り口や窓には中に入れない隊員が密集して様子を伺っていた。


雅彦「で、何がヤバいんだ?」


比呂「これ見て分かる通り、ここ数日でかなりの面積の森を切り拓いてるんだよ。


離れて見てるんで奴らが何を作っているかまでは分かりにくいんだけど、この調子で森を切り拓かれたら、マルレーネさんの部隊が守れなくなるんじゃないかな?」


雅彦「ゲルハルト、奴らが何を作っているか分かるか?って言いたいとこだけど、ここはネットが繋がらないのか。

静止画をキャプチャーしといて」


比呂「分かった。

また後で何作ってるのかは教えて。

で、ここからが本題だけど、奴らの目をこちら側に向ける必要があるわけさ。

おそらく奴らが作っているのは遠隔攻撃用の武器、つまり投石器かバリスタだと思う。

このまま、ここで粘り続けるとおそらく彼らはしゃかりきになってバリスタとかを量産させるために木を切り倒すと思う。

そうならないようにするには我々の前方の堀を敢えて埋めて、敵を林道の奥にまで引き込んで殲滅させようと思うんだ」


雅彦「なるほど、いきなり接近戦になるかもしれないけど、どうしよ?ってことよな。

傭兵隊50人が味方に付いたので、こちらの戦闘力は格段に上がったことは間違いないんだけど、まだ意思疎通が出来ないんで、そこさえ改善出来れば、傭兵隊とランクルやユンボで敵の侵攻を防ぎながら後退させる事は出来ると思うよ。

えっと、ここまでWi-Fiの電波を届かせようとするなら、最短で何日で出来る?」


比呂「2日くれればなんとかなると思う。

障害になっているのは純粋に距離だけなんで、ケーブルの長さが半端ないので運搬などに人手が掛かる事なんだけど、今なら5人くらいは出してもらえるだろ?」


雅彦「おう、それならエマさんに相談して、後退した村の女の子たちから数名出してくれと言ってみてくれ。

おそらくすぐ動いてくれるで」


比呂「分かった、すぐ戻って動き始めるわ。

…それから兄貴、このトレーラーハウスと丘の上に置いてる兄貴のトレーラーハウス、交換しようや。

このトレーラーハウスはあげるから丘の上のは俺にちょうだい」


雅彦「あぁ、ええで。

こっちのハウスにヴィルマやイングリットもしばらく泊めないといけないから、その方が助かるわ」


比呂「一緒の部屋に二人も若い子泊めて、変なことするなよな(笑)」


雅彦「するわけないわ!今はまだ戦争中やで!」


ヤバい処を突かれてアタフタする雅彦であった。


比呂はドローンなどをハチマルに積み、村へと戻って行った。


………………………………


その頃、村では建築関係の打ち合わせで、村のあちこちを案内して回っている秀明と弟の秀二の姿があった。


彼らがまず優先して行おうとしている工事は、丘の上からぐるりと周り、麓の広場まで繋がる道の整備であった。


秀二の会社では残念なことに舗装までは出来ないので、簡単にユンボ等で整地して、コンクリートで固める方式を採ることにした。


四駆なら苦もなく登り下り出来る丘なのだが、二駆のトラックでは何かと厳しいので、10トントラックでも通れる道を繋げてもらいたいと考えていた。


あと、冬も近付いてきているので傭兵達の住処が必要となってくる。


村の中に空き家となっている家が数棟あることはあるのだが、それらをリフォームしようとすると人手が足りなくなるので別の手を打つことにした。


「家を日本の業者に作らせて、ブロックとしてこちらの世界に持ち込み、設置する」方法だ。


秀二が出した案は、廃棄されたコンテナを活用したコンテナハウスをリフォームする業者を動員して同時並行で多数のコンテナハウスを作らせて、秀明の鉱山に納入させる。


そのコンテナハウスを異世界(ミッテレルネ)で設置するのを秀二の会社で行うというものだ。


コンテナハウスと言えども整地と基礎、水道管や電気、浄化槽の設置などしなければならないことが割と多いので、そちらだけでおそらく手一杯になると考えられたのだ。


次に優先されるのが、日本側の秀明の鉱山から異世界側、つまり境界線を越して異世界(ミッテレルネ)側に水道、電気、光ファイバー、ガス、ガソリンや軽油などのパイプラインを引く作業だ。


今でもホームセンターで手に入る物で細々と水や電気や電気や光ファイバーは引いてるが、いかんせん容量が小さ過ぎる。


今後はそれらをスピスカ=ノヴァにも引いて、文化的な生活を送れるようにする必要がある。


秀明にはある野望があった。


このスピスカ=ノヴァを一大商業都市にして、異世界(ミッテレルネ)の商業の中心地にする事だ。


今、我々の村が所属しているビスマルク王国はドラゴニアの侵攻を受けているのだが、それを跳ね除けるには日本からの技術や武器や道具などの輸入も必要だが、何よりも「経済力」が必要となってくる。


今のところは日本に持ち帰り換金すると十億円分くらいになる(ゴールド)を村がたまたま所有していたのでそれらを使わせてもらい軍備などを整えているのだが、

はっきり言ってしまえば、戦争なんかしてたら十数億程度の金は端金(はしたがね)でしかない。


話の通じそうにないドラゴニアの経済規模は、分かる範囲では近隣諸国内ではズバ抜けて大きく、動員可能兵力もバカみたいに多いので、こちらの軍事費もそれに比例して増やす必要がある。


秀明の試算では、十数億円は一年で食い潰す可能性もある。


つまり、このままズルズルと継戦するのは経済的に破綻してしまう可能性があるのだ。


そうならない為にスピスカ=ノヴァの近郊で採取される(ゴールド)の採掘を本格化させるにしても、仮に掘り尽くしてしまうことになればそこでゲームオーバーになってしまう。


幸いな事に秀明の本業は「鉱山の経営」なので、鉱石の採掘技術はあるのだが、金鉱ってのは当然見たことないわけだし、不安定要素がないわけではない。


秀明が掘っているロウ石という物は比較的柔らかい岩盤なら取れるのだが、それらで使用する工具や爆薬などは金塊を掘り起こすのにどれくらい役立つのかハッキリ分からないからだ。


将来的には村人や傭兵などを作業員として雇い、重機などの操作も教え込んで、異世界側の人間だけで採掘出来ればいいのだが、それだけでは不安が残る。


そこで、継続的に「金」を手に入れる手段としてビスマルク王国やその他の小国と交易をしたいと考えているのだ。


この世界はどうやら、日本などと比べて「金」の価値が圧倒的に安い。


通常の取引で金貨や銀貨などを得ることで金などを得る事もできるし、ビスマルク王国の特産品の一つが金なので買い取ってもいいし、金山に投資して掘り起こした金塊を優先的にコチラに回してもらっても良い。



まだビスマルク王国との交流も出来ていない状況で交易の話を出すのは早いと思うかもしれないが、お互いに交易して経済力を高めることが敵の侵攻を防ぐ最大の防御法になるのだ。


ビスマルク王国にもしっかり戦ってもらわねばならないし、経済力がないと軍を維持することは困難だからだ。


我々が持ち込む日本の製品やデジタルコンテンツは異世界側でも当然、高値で取引されるだろうと思う。


我らがビスマルク王国に卸したそれらの商品を他の国や地域に転売すれば、ビスマルク王国にも多くの利益が得られることになる。


なんでもかんでも技術をこの世界に持ち込むのは危険なので制限はする必要があるが、ドラゴニア以外の国に技術支援をすることでドラゴニアにとって敵になる国の国力を増強し、それらの国々との同盟関係をキチンと構築することが出来れば、ドラゴニアという凶暴な国家も封じ込めることが出来るようになるかもしれない。


この世界に平和をもたらす方法は何も我らが世界征服をして、ミッテレルネを一つの共通した政体で治る必要はない。


国がバラバラに分かれているのは、民族が違うとか、言葉が違うとか、宗教が違うなど、分かれて住むそれなりの理由が元々あるはずなのだ。


ならばそれらの国が例え王政を敷いていたとしても、封建制度などを敷いていたとしても、また共産主義などという危険な思想に染まっていたとしても、攻め滅ぼしてまで無理矢理、我らの価値観を押し付けていく必要はない。


そんな事をしなくても、我々は元の世界で人々の考えを変えていく方法を知っている。


それは「教育」であり「報道」であり「エンターテイメント」などを介して、我々の情報や価値観を少しずつミッテレルネの人々に知らせていけばいいだけだ。


我々の国のように民主主義を導入することが良い事かどうか分からないので、色んな情報を与えて、それぞれの国民が自分で自分の国をどうすれば良いか決めればよいと思うのだ。



話は随分脱線してしまったが、秀明にはこのようなビジョンがあったのだ。


これらのことを実現させる為の第一歩として、スピスカ=ノヴァの経済力をアップさせる必要があるので、村の防備を固める一方で、経済発展をする対策をしていかねばならないのだ。


まず、「日本とミッテレルネとの間の道路を整備」し、「傭兵隊の住処を確保」し、「日本からミッテレルネへパイプラインを建設」し、「スピスカ=ノヴァの防御力を上げ」て、「スピスカ=ノヴァ内の宿屋や商店街を近代化」させ、「金の採掘場への道路を開拓」しなければならない。


これらの開拓と開発を行なって「スピスカ=ノヴァをミッテレルネの商業の中心都市として成長」させる。


その上でドラゴニア以外の国や勢力と同盟関係を結び、ドラゴニアの包囲網を完成させる。


これが秀明のビジョンをまとめたものだ。



おそらくだが、秀明の祖父にあたる男は、ミッテレルネで豊富に取れる金を利用して、日本の発展に寄与したのではないか?


あの爺さんが自分の息子たちにはそれぞれ、日本を代表する会社を残していたのに、最も可愛がっていた末っ子にしょぼいロウ石の鉱山を残したのは、もしかするとココが最も重要な場所であると彼が思っていた可能性が高い。


それに爺さんはある日突然、脳卒中を起こして秀明の鉱山で亡くなったと言われているが、最期まで爺さんがロウ石の鉱山に関わっていた事は間違いのない事だ。


昔から残っていた事務所の裏側に隠れるようにあった廃道が異世界(ミッテレルネ)に繋がっていたのは偶然ではないだろう。


なぜならば、廃道でも「道」があったということは、以前は誰かがそこを通っていたと考えるのが自然な事だからだ。


だが、秀明の親父、つまり爺さんの末っ子はその道の存在を知らなかった。


ということは、鉱山の最初の所有者の爺さんが関与しているのは間違いのない事なのだ。



爺さんが異世界で得た財力で日本を豊かにしたというのであれば、今度は私や私の次の世代が日本とミッテレルネを同時に豊かにさせていく。


すでに日本側では川北グループの中で利益が循環する仕組みが整いつつあるし、得られる支援体制でミッテレルネを発展させていく準備が整いつつある。


不景気に喘ぐ現代の日本にとって異世界から持ち込まれる大量の金などは大きな助けとなるだろう。


現在はスピスカ=ノヴァとその周辺の開拓と開発しか計画をしていないが、もし、ミッテレルネの何処かで石油などの埋蔵が確認されたとしたら、日本はたちまち「石油の産出国」になるわけだ。


現在の金の産出国は中国やオーストラリア、ロシア、アメリカなどがランキング上位を占めているが、一位でも400トン程度なので、もしかするとそこが日本となるかもしれないのだ。 


異世界(ミッテレルネ)の存在は、もしかすると日本が資源輸出国にもなる可能性がある話なのだ。



秀明は村を案内しながら、そのような話を秀二に聞かせたのだった。


※ブックマークへの追加や評価をした上で読み進めていただけましたら幸いです。


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[一言] 変なことはせんわ!エエことをすんねや(笑)
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