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雅彦の戦い方

ドラゴニアの威力偵察を撃退して5日が経った。


雅彦は異世界側の丘の上に持ってきていたトレーラーハウスの中で目が覚めた。


となりに美女は…寝ていない。


雅彦はトレーラーハウスに持ち込んでいたコーヒーメーカーをセットして、まだ暗い外に出た。


気温はおそらく5度付近で薄着だと冷えるので親父から貰ったイージスを着込んで再び外に出た。


日本側と5度は気温差があるので、こちらの世界はもうすこしすれば冬が来るのではないか?と思った。


(ちなみに日本では10月)


仮に日本とこちらの一年が同じように進んでいるとするなら、同じ冬でもこちらの方が寒いことになる。


実際、今は現地時間でおよそ7時ごろのはずなのだが、このようにまだ暗い。


方位磁石を試したところ、北と思われる方向と日が出る方向は日本とあまり差がなさそうなので、丘から見て東と思われる方向は少し明るくなってきていた。


村での飲料水などは井戸で賄っているが、付近を流れる小川の水量は少なく、またこちらの世界に来てかれこれ1ヶ月ほど経つというのに雨が降ったことはまだ1日もない。


日本と比べると明らかに湿度も低く常に乾燥したイメージがあるのでおそらくだが、こちらの世界では多くの水を必要とする米の栽培は難しいだろうな、と思った。


雅彦のトレーラーハウスの少し北には昔、城の天守閣か本丸があったと思われる基礎の部分の残骸が残されているのだが、その中に秀明が住んでいる小型のトレーラーハウスが隠れるように設置され、比呂が日本から持ち込んだネット用のアンテナがそびえ立っていた。


比呂は暇があればコソコソとアンテナや出力の強化に勤しんでいるみたいで、先日から村の中の建物内部や関所跡へ続く林道の真ん中付近まではなんとか電波が届くようになっていた。


本格的なエリアの拡大はまだまだ先のことになるとは言っていたのだが、おそらく次回も敵が真っ先に侵入してくるであろう関所跡は一刻も早く監視カメラなどを設置してやりたい。


現状ではネットも繋がらない場所はあまりにも危険であるため、触れると大音響の警告音を発するトラップをあちこちに仕掛けて敵の接近を感知しているだけだからだ。


二年前の最初の襲撃でも関所にいた守衛(ヴィルマの元フィアンセであることは雅彦も知らない)がいの一番に犠牲となっているし。


眼下にあるスピスカ=ノヴァという2メートル程度の岩と土で作られた壁で囲まれた小さな村では壁そのものが低いため、先日の襲撃でも馬の背から飛び乗ったであろう敵の騎士が軽々と壁を乗り越えてきたことでも分かる通り、防御力はあまり高くない。


親父は先日から、狩人(イェーガー)の8人に対して戦闘訓練を始めているようで、村の北に広がる森が林道以外には唯一の迂回路になりそうなのだが、彼女たちがそちらを防衛する予定になっている。


ちなみに村の南側は岩場と森が混在している地形な上に、斜面が急な崖が広がり、馬はおろか人ですら侵攻してくることはほぼ不可能な地形であった。


村の西側に広がる現地でテトラ山と呼ばれる山は、見た感じ、標高は2000メートル程度のそれほど高くない山なのだが、南北に伸びているので、そちら側から攻めてくるのは南から攻めてくる以上に困難が予想される。


だが、基本的に攻める側に主導権があるので、敵が攻めにくい山越えとか村の南の崖越えなども一応は考えられる。


現在は、先日逃した敵の本体がわずか数十キロ先に有り、なおかつ規模が1万人もの大軍であることを考えると敵がわざわざ大きく迂回して南側の崖から侵攻してきたり、最低でも数百キロ迂回して西の山越えをしてくることはまず考えられなかった。


村の北の森を越えて来るにしても、まずは関所跡の付近までは登ってくることが予想される。


なぜかというと彼らは関所跡からぐるっと大きく迂回する森の中を通るルートはまだ知らないからだ。


「ルートがある」というのはあくまでも狩人(イェーガー)たちが言ってることなので、大軍が移動するには道が困難過ぎるし、そもそもフルアーマーの騎士などは歩くことすら困難だろうと思われる。


それくらい森の中は鬱蒼と木が生い茂っているし、凸凹や起伏も激しく、方向感覚も狂いがちな場所だからだ。


ここを侵攻してくるのであれば、狩人、もしくは軽装備の歩兵で山岳地帯や森の中での行動に慣れた連中が選抜されるだろう。


だが、地の利は明らかにこちら側にある。


この森を狩場にしている我々の狩人部隊なら、例え少数でも大軍を足止めしてくれることだろう。


また、親父(秀明)はサバゲーなどもやっていたので、ある程度は近代戦の知識もあるし、彼はベトナム戦などでベトコンがやっていたゲリラ戦も詳しく、普段のゲーム中から嫌らしい待ち伏せやトラップなど平気で仕掛けてくる人だから、


もし彼が本気で日本から持ち込んだアレやコレらを駆使して、彼女たち狩人部隊を鍛え上げたら凄いことになるんだろーなーと妄想するのであった。


ま、触らないでおこう。


オレの担当は敵の主攻である兵力約1万が攻めてくる関所跡をなんとしても塞ぐことなのだが、日本から大量の銃や兵器を持ち込むことは出来ないので、「兵器ではない物」でなんとか敵の侵攻を防がねばならない。


ユンボで塹壕を掘りまくったり、有刺鉄線で鉄条網を張り巡らしたりしたのはその一環なのだが、自分のランクル73をアルミの波板で完全防護したり、車の後ろ側に頑丈な鉄の柵を取り付けたのも対策の一部だ。


今日以降もアレコレする予定にはしているのだが、もう5日経っているので、最悪そろそろ敵の前衛部隊が姿を表す可能性がある。


敵がナメプしてくれて、また数十人程度で攻めてくれたら良い訓練や時間稼ぎになるのだが、まあオレなら未知の兵器などを持つ敵がいると分かっている城砦跡地の村を攻めるのであれば全軍を投入するだろう。


敵将が有能か無能か分からないが、普通に考えると1万もの軍勢を率いるヤツが都合の良い主人公の敵側補正がかかって無能になっているのは考えられない。


比呂あたりは「昔の戦史を引っ張り出してみればある程度、敵の有能さや行動は想像出来る」とか言いそうだが、最大限有能設定しておく位が丁度いいであろう。


油断して足元すくわれたらこちらの世界で待っているのは「死」だからだ。


だから最大限、出来る対策を施しておく。


今でも先日、自分がひき殺した男たちの顔が脳裏に浮かぶ。


自分も死ねばああなるわけで、死んだら死後の世界だとか異世界に行けるわけではないと自分は思っている。


あ、ここはそもそも異世界か?死んだらまた別の異世界とかに転生とかあるんかな?


などとバカなことを考えていたが意味がないので気を取り直して、これからする事の優先順位を今一度よく考えておこう。


関所跡の前のゲレンデで大軍を一旦足止めするが、まずここを抜かれないようにするのが最優先だ。


今は三重の空掘(塹壕)を掘り、堀の中は定期的に水で濡らしておいた上に三重に鉄条網を張り巡らしている。


また関所跡のすぐ横にある崖の上には水のタンクと高圧洗浄機、下の小川から水を汲み上げる工業用排水ポンプのホースの先端、火炎瓶12本などを持ち上げている。


水タンクには「ある物」を混ぜているので高圧洗浄機を使って散布してやれば、風下になるゲレンデ側に広範囲に散布されるので、これはなかなか面白いことになるだろう。


ちなみに「ある物」の効果は先日の捕虜たちへの尋問の時に少量使ってみて効果は確認している。


これだけでかなりの防御力は期待出来るが、この崖の上にはスナイパーライフルを持ち上げたり、他にも「ある音響兵器」を設置する予定なので、今から楽しみにしている。


その「音響兵器」はそろそろ届くだろうから、今日はその設置辺りから始めるかもしれない。


次に関所跡から村へと続く一キロほどの林道だが、これも各所に罠を設置しておく。


この林道は基本的に道は掘ったりせず、木の柵に有刺鉄線を巻いた物を多数用意しておいて、敵の接近をそんな柵で防ぎながら後退していく戦術を採る。


(まあそれだけではないのだが)


引きながら敵を罠に嵌めて数を減らしつつ、最終的には橋まで後退してここを最終防衛ラインとする。


この岩を組み合わせた橋はかなり頑丈なので8トンのユンボも余裕で通過出来るのだが、最終的にはユンボを橋の手前側に陣取らせて、敵の接近をそれで防ぎながら、味方は小川のこちら側から川をなんとか渡ろうとする的を長槍や弓矢、火炎瓶、催涙水(カプサイシンバッサー)などで攻撃して、徹底的に防ぐ。


ここを抜かれてしまうと、村の正面にある畑や草原に敵が侵入してしまい、村はほぼ無防備の状態に置かれてしまう。


だから橋よりこちらには絶対敵は入れない。


もし、敵を橋で防ぎきれないと判断した場合は、村人たちを全て日本側の鉱山に逃すことを考えねばならない。


今のところ、日本人の三人は普通に日本と異世界の間を行ったり来たり出来ているのだが、先日、エマさんがちょっと不吉なことを言っていたのが気になっている。


何かと言うと、エマさんは日本人たちがいる丘の上には極力、行かないようにと村人に指示をしているのだが、僕らがこちらの世界に来て間もない頃、子供たちが僕らを追って日本側に来ようと僕らが消えた付近に来たことがあるのだが、どうやっても入ることができなかったと言っていたらしいのだ。


だから、今日にでも村の人を日本に来れるのか試してみないといけない。


前にも一度、親父の鉱山がここの異世界と繋がってることを自分たち身内以外にも教えた方がいいんじゃないかと思ったことはあった。


だがその時は結局「誰かとんでもないヤツがこちらの世界に紛れ込んで現地の人や資源を搾取したりしかねないからな」という理由でこのことは我々家族だけの秘密にしておこうという結論に至ったことがある。


オレの元々の本業はトラックのドライバーだったが、この仕事をしていてよく思ったのは「日本人とは言え狂ったヤツは一定数必ずいる」ということだった。


そもそもトラックのドライバーという職業は他人とのコミュニケーションに難があって流れ着いた人が多い(と先輩が言ってた)ので仕事をしているとかなりの頻度で「こいつアタマがオカシイんじゃねえの?」という行動をする人に出くわすことがある。


また街中を運転していると、これまたかなりの頻度で割り込みや暴走運転をしている人に出くわすことがある。


これは日本に限らず「どこの世界にもこういう狂った人」は必ず一定数いるものだ。


もし、この世界のことが公になり、テレビのワイドショーとかで世間にバラされたりしたらどんなことになるか想像するのも怖くなる。


まず考えられるのが「国が主導権を握ってしまい自分たちはこちらに足を踏み入れることすら困難になる」という場合。


前にも言ったがオレは日本や日本人は好きだし信用してない訳ではないが、さっきも言ったように全ての人を信用している訳ではない。


一定数は狂った人が必ず紛れ込んでくるのだ。


自分が見つけた場所である限り、ここをどうするか決める決定権は自分にある。


ただ、それには条件があって、あくまでも「他人に迷惑をかけることがない範囲内で」の話だ。


ならば、持てる力の全てを使って、これから起こるであろう敵の侵攻を阻止してみせる。


それさえキッチリ出来れば誰に後ろ指を刺される心配もない。


(そもそも世間にはこちらの世界の事は公開するつもりはない)


ひとまず自分に出来ることは、ランクルを扱う腕を最大限活用して敵の侵攻を最前線で食い止めることだ。


親父は先日の戦闘で剣の腕を発揮していたり、比呂もライフルの使い方をマスターし始めてはいるが、親父ももう歳だし、比呂はどちらかというと頭脳戦の方が得意なので、体を張って戦うのは自分の役目だと思うのだ。


そのためには防衛陣地を築くのも大事だが、自分自身の戦闘能力も上げねばならない。


まあ、幸いなことにオレにはヴィルマやイングリットの様な優秀な相棒たちもいるので、彼女たちも含めて強くなりたいと思うし、何より「こちらの被害者はゼロに抑え込みたい」と思うのだった。

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[気になる点] 主人公の周りに狂った人が沢山いるようですが一番狂っているのは主人公でしょう。 いざという時は日本に逃げて追ってきた一万の敵兵は自衛隊に丸投げ。 戦闘が終わった後、この一家が金を売りさば…
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