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ファースト エンカウント

「ぎゃっはっはっは!」


スーツを着込んだ主人公の雅彦を見て腹を抱えて笑う弟の比呂。


まあそれも無理のないことだ、彼は普段、大型トラックのドライバーをしていて、スーツなどを身に付ける機会が全くない。


たしか成人式のときに着たのを見た覚えもあるが、スーツが浮いてるなと思う秀明であった。


「まあいい、とりあえずコレなら警戒感を持たれることは少ないだろう。何でも出来る雅彦ちゃん、これでバッチリ異世界美女たちを口説き落としてきてくれよ」


とても実の親とは思えないような言葉をかける秀明。


「いや、マジで中世の世界でスーツとかおかしんじゃね?!」


正論を吐く雅彦に対して


「スーツってのはある意味、最も進化した信頼を勝ち取るための戦闘服なんだぜ。あちらの世界に背広があるとは思えないが、スーツの持つ力はある程度は期待出来ると思うぞ、頑張ってこい」


本気なのか他人事なのでからかっているのかわからない秀明であった。


こちらの世界で朝があちらでは昼前なので少し仮眠をとった三人はランクル二台に分乗して異世界に向かった。


次男の比呂はまだランクルを持っていないので彼は今回は兄貴のランクル73の後部座席に乗っていた。


余談なのだが、ランクルの70系(ナナマル系)は車体形状やエンジンなどで形式番号が違う。


親父の秀明がもつナナマルのショートは俗にナナマルと呼ばれることが多く、ミドルホイルベースの雅彦などが持つランクルはナナサンなどと数字で呼ばれることが多い。


ここでは簡易的にランクル70というのはショート、ランクル73というのはミドルだということにする。


雅彦の73は秀明の70とは違い、助手席が取っ払われていてその代わり後部座席は残されているので比呂は助手席のドアから入り、後部座席に座っていたというわけだ。


二台は異世界側にやってきたのだが、やはりこちらの世界では昼前くらいの感じで日が昇っていた。


役割分担はこうだ。


スーツを着込んで現地の人に接触する役目は雅彦と比呂の兄弟コンビ。


親父は丘の上で待機しつつ、危険があればランクルで突入して息子二人を救出する。


彼ら二人には一応護身用にナイフを持たせていたが、秀明が雅彦に持たせたナイフはガーバー社のMKⅡという暗殺者御用達のナイフなので使うときは気をつけろよと念を押しておいた。


秀明は前日と同じく全身迷彩服を着込み、マジもんのボディアーマーを装着、ヘルメットも被っていた。


今回はさらにボルトアクションの倍率8倍のスコープを付けたスナイパーライフルも持ち込んでいる。


雅彦は現地の人との交渉役、比呂は荷物係兼カメラマンであった。


比呂には無線機も持たせているので緊急時には秀明に連絡が入るようにしていた。


さて、作戦開始だ。


丘の上からデイバックを背負い下っていく二人。


その様子を丘の上のランクルの運転席から双眼鏡で観察する秀明。


斜面としてはそんなにきつくないので駆け足で下りていく二人であったが、それを見た守衛の二人は急に警戒モードに入った。


にこやかに守衛の女性二人に近づく雅彦と比呂。


雅彦は身振り手振りで何やら交渉を開始していた。


比呂は一歩下がったところでこっそり撮影していたのだが、雅彦は二人の女性に対して早速プレゼント攻勢をしかけることにした。


まず取り出したのは飴ちゃんであった。


それを見ていた秀明は「大阪のおばちゃんかよ」と呟いていたが、双眼鏡の中に見える女の子たちの様子はまだまだ警戒しているようだった。


それは全く無理のない話だ。


見たこともない奇妙な服を着た、おそらく見たこともない種類のアジア人が急に丘の上から下りてきて飴ちゃんを食えと言ってくるのだから怪しいと思うのは無理もない。


それに雅彦も気がついたようで、自分が先に食べて見せてから彼女たちに飴を渡した。


恐る恐る飴を口に入れる二人。


すると表情がみるみる明るくなり、感動している様子が遠方からもはっきり分かった。


次に雅彦が取り出したのは、薔薇の花束であった。


これは先日、秀明がホームセンターで適当にアレコレ買ってきた中にあった物の一つなのだが、自分が買ってきた物なのだが、初対面の女性に対して薔薇の花を贈ろうとしている様子はなんともシュールで笑える風景だった。


「今、それを贈るか?」と半ば笑いを堪えながら見ていた秀明であったが、女性たち二人は何やら急に様子が変わってキョトンとして立ち尽くしていた。


頬を赤らめ立ちつくしている二人の女性に対し、さらにプレゼント攻勢をかける雅彦。


言葉はまるで通じないので派手な身振り手振りで彼女たちに香水や化粧品などを勧めている風景はこれまたなんともシュールで笑えるものだった。


撮影している比呂も笑いを堪えるのに必死で、彼を放って盛り上がっている三人を見ながら、


「兄貴すげえよな」


と無線で秀明に送ってくる比呂であった。


比呂は二人の女性の守衛を見ながら「これはまたすごい美人だな」と思った。


遠目に見ても金髪が映える美人に見えたが、近づいてみると更にそう思う。


片方の女性は身長160センチほどで長めのストレートヘアでスラッとした体型をしている。


顔付きは目がキリッとしてクールな印象のある人でモデルを小さくしたような感じなのに対して、もう一人の女性はボーイッシュな感じで髪はやや茶が混じった金髪でショートカットにしていてスポーツ系の少女といった雰囲気であった。


彼女の方が少し背も低く、雰囲気としては人懐っこいように感じた。


なにはともあれ、村人第一号と第二号に対する懐柔作戦は無事、成功したのだった。

言葉も全く通じない異世界の美女二人へのプレゼント攻勢は成功しましたが、実はこれが後々 とんでもない展開を迎えるキッカケになります。


そちらについては乞うご期待なのですが、物語はいよいよ、運命の村との関係強化に移っていきます。


次回も楽しみにした下さい!


※ブックマークへの追加や評価をした上で読み進めていただけましたら幸いです。


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