ラボチャ前哨戦
ランクルベースの消防車を担当するラグナル、オットー、ラルフの三名はもちろんヴァイキングの傭兵部隊の一員であった。
彼らは今回、ゲルハルトたちの危機を救うために急造された第三遊撃隊のメンバーとなっていたが、つい最近までは「始まりの地」と最近は言われ始めているスピスカ=ノヴァの守備兵として活動していた兵士たちで、ゲルハルト率いる「茶色の戦斧」に属していた生粋の戦士たちである。
これは第三遊撃隊全員に共通して言える事なんだが、ヴァイキングのなかでは比較的若くて性格的に大人しいタイプが多い。
正反対なのはゲルハルト率いる第二遊撃隊の連中で、彼らは三十代のメンバーが多く、また茶色の戦斧傭兵隊の幹部であったり戦闘力が高いトップクラスのメンバーが集められていた。
だが反面、素行が特に悪かったり、好戦的だったり女癖や男癖な悪かったりする。
雅彦はそんな彼らを面白がって使っている面もあるのだが、元々、独立部隊として動くことが多かったので彼らは好き勝手に動くことを許していた。
だが、第三遊撃隊として編成された彼らはある意味、ヴァイキング特有のワイルドさにかけていた。
ヴァイキングの中でも若い彼らに対して、雅彦はクルマの運転や射撃術、それと日本の文化や知識を可能な限り叩き込んだのだ。
ラグナルたちは「消防車」が与えられ、他のクルマにはない独特な役割と戦術を学ばされた。
第二遊撃隊の面々が立て篭もる丘に唯一残された消防車は、その持てる能力をいかんなく使おうとしていた。
まず彼らが丘にたどり着いて行ったことは、牽引するトレーラーに載せた水タンクを満たすことであった。
丘の上には元々、集落があったので井戸が残っており、そこから水を汲み出すことも出来るのだが、消防車を操る彼らにとって「水」は命綱なので予め麓の小川で、水タンクを満たしていたのだ。
ラボチャという丘を囲むのは比呂たちの陽動に乗らなかった約三千のドラゴニア軍歩兵隊であった。
ラボチャを半包囲した彼らは比呂たちと他のドラゴニア軍歩兵がいなくなった頃に一斉に攻撃を仕掛けたのであった。
まず彼らが行ったのは弓兵による遠距離射撃であった。
だが、これはラグナルたちには全く効果が無かった。
距離が離れている上に高低差があったことと、ラグナルたちがより射程の長い高速徹甲矢砲でピンポイントに弓兵を狙い撃ちしたからだ。
高速徹甲矢砲で放つA弾の威力は凄まじく、頭上で爆破による強烈な爆風と破片を浴びたドラゴニア軍歩兵たちは次々に沈黙していくのであった。




